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COLLECTIVE 2020 全ZINEをレビューしてみた

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47都道府県のさまざまな地域から ZINE を公募、展示・販売をするエキシビジョン COLLECTIVE に関するレビューやリコメンドを紹介していきます。会場での ZINE との… もっと読む
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COLLECTIVE に寄せて 2021 追記 ver.

ZINE の甲子園だ!甲子園や野外フェスみたいに 毎年の夏の恒例行事 をやりたいなと思って、おととしからはじめた ZINE の展示・販売イベント COLLECTIVE 。 このイベントが他の ZINE イベント一線を画すのが 47都道府県さまざまな地域から応募可能 という点。意外と ZINE って、作ったとしても 置いてくれる場所は限られる し、東京の人気の書店に送るにも センスを問われる し、地元の本屋やおしゃれなカフェで扱ってもらうのもすごく緊張するし(持ち込むだけで心

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (65) 駒﨑 崇彰 『I Guess Everything Reminds You of Something』(東京都板橋区)

最後のレビュー。65タイトル目。ここまで書いてきて、ものづくりに対して勇気をもらえた、とか、励まされた、とか、次を踏み出すきっかけになった、とか、自分のやりたいこと、気持ちを整理してもらえた気がした、とか、背中をすっと押せたようなレビューもあれば、あるいは、心の中に秘めていたことを当てられてびっくりしたとか、自分がやりたかったことを言語化してもらえたとか、預言者みたいなところもあったり、読み込んでもらえてうれしかったとか、気持ちをわかってくれるひとがいてうれしかったとか、褒め

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (64) セレーナ美花 『ゆらゆらするすきま』(東京都渋谷区)

COLLECTIVE ついに最終日。天気は快晴。よかった。体育館に並ぶ卒業生を見るような面持ちで、壁にずらっとならんだ、また、吊るされた、ZINE たちを眺めています。それぞれの個性が際立っていて、その表情(表紙)から、強い意思を感じます。COLLECTIVE 3期生のみんな、卒業、おめでとう! みたいな気持ちです。このタイトル1つ1つの、ひとりひとりに暮らしがあって、思考があって、未来があるんだと思うとなんだか不思議な気持ちになりますね。長い ZINE 生の中で、パークとい

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (63) POLARIS 『POLARIS』(東京都千代田区市ヶ谷)

COLLECTIVE ほぼ毎日(2階に住んでいるので)ZINE と向き合い、目を通し、パーソナルな思いを胸に断片的に刻んでみる(レビューを書く時まではしっかり読み込まないようにしてる)。散らばった破片のような言葉や絵や写真、色、形、手触りなど、自然とインプットされてるものもあれば、すっと水に溶けるように消えていってしまうものもある。自然と、てぐせのように触ってしまう ZINE もある。そういう ZINE はわりとみんなが触ってる。あと、会場内で会話に出てくる回数がおおい ZI

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (62) 野口 陽向 『GARAKUTA essential 』(東京都世田谷区)

47都道府県の様々な地域から ZINE を公募し、展示・販売するエキシビジョン COLLECTIVE いよいよ最後の土日です。夏休みの終わりみたいでさみしい。40歳手前になってもこの感覚は残ってるんだな。もっと大人になってるものだと思ってた。砂の城。波がさらってく。最終的に65タイトル。開始早々スカスカだった壁がどんどん埋まっていく様子は痛快だったな。これが一気にみんなの元へ帰っていくと思うと、不思議だな。売れなかった ZINE ももちろんあるのだけれど、たくさんの人が手に取

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (61) かもめと街 チヒロ 『かもめと街歩きZINE vol.1』(東京都)

僕個人として、どこかの街のギャラリーへ足を運ぶときは、そのアート的な感覚とのバランスを保つために(中和するために)、その近所のおいしいもの、を探求します。せっかく行ったのだから「ただでは帰らぬ」というケチな根性もあるのかもしれませんが、その『場』を楽しむだけではなく『地域』ごと楽しんだ方が、きっとその日の1日が充実してくるはず。東京だから、地域から地域へのハシゴみたいな日ももちろんいいけれど、場(点)で見るよりも、地域(線)でみる方が奥深いなと思います。焦んなって。 だから

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (60) 熱海 一樹 『詩誌・十字路 / 25号~20号』(岩手県盛岡市)

今年はとにかくコロナ禍での開催ということもあり、パーソナルな『言葉』を扱った ZINE が多かったように思います。ぼくも、普段は言葉を扱う仕事をしているので(詩がよいラッパーとして CD を出していた時代もありますははは)、必要以上に言葉に対してセンシティブになっているというのもあるかもしれません。もしくは『枯渇』しているから、染み渡ってくるのかもしれないです。じんわりと少しずつ。ジャンルも、日記や、エッセイ、短編小説、コラム、短歌、詩、など、言葉だけでも様々です。読み返して

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (59) 芝山 健太 『trifle magazine』(東京都国分寺市)

COLLECTIVE も残り2日。週末を残すのみ。かなり寂しい。もっと ZINE について語り合いたい。作品についてあーだこーだ言いたかったな。編集者やデザイナーを呼んだイベントも1年目みたいにやる予定だったし、東京勢が多かったので、レセプションパーティもきっと盛り上がっただろう。コロナ野郎のせいでできてない、いっぱい。残りの2日間に集中させようと思う。まだ会えてない人、あいさつをしただけでゆっくり話せてないひと、土日はフルで会場にいるので、ぜひ話しましょう。手作りのパークコ

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (58) Nobu Tanaka 『光彩』(東京都国分寺)

「加藤さんのベストはどれですか?」 去年、おととしもそうだけれど、かならず会期の終了が近づくと、こういった質問がいろいろな知人・友人から飛んでくる(ちょうど今日もさっき答えたところ)。ある程度『数』も揃い、いろいろと時間をかけて目を通しきった、お互いの目で心で、どれを選ぶだろうか、というのを言い合うのがとても楽しいのだ。同じ質問を、会期の中盤に言われても「ZINE に一番なんてないよ」とか「カテゴリー別でならこれかな」なんてはぐらかして終わらせてしまう(それも確かに真実)。

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (57) やまだ なおと 『この部屋で夏を待つ』(北海道札幌市)

COLLECTIVE の会場となっている PARK GALLERY 。ぼくが昔、ライブハウスで働いていたり、ラップユニットや積極的に音楽イベントやフェスをやっていたということもあるけれど、パークスタッフやアルバイトはみんな音楽が好きで詳しい。なので外や会場で流れている音楽に反応して店に寄ってくれたり、中でそのバンドの話が弾んだりする。SNS ではなかなか伝わらない『音』『空気』の部分ですよね、これは。ギャラリーというと小さな音でピロピロとナイスで小粋な音楽がかかってればいい(

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (56) 西原 雨天 『50鬼夜行』(東京都台東区浅草)

コロナ禍中で開催されてきた COLLECTIVE もいよいよ残るは5日。「夏には落ち着いてるっしょ」と思っていたが大間違いだった。ピークを過ぎたというけれど、感染しないというわけではない。0か1しかない。なるときはなる。風邪みたいに、かんたんに復帰できるわけではないから、いま、ぼくやスタッフが感染したら、お店や仕事は立ち行かなくなってしまうし、たくさんの人に迷惑がかかってしまう。こんな小さな店にもたくさんの人が訪れてくれて、毎日のように賑わいを見せていたけれど残り5日間、気を

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (55) けいみず 『ポスカ日和』(東京都中野区東中野)

PARK GALLERY を COLLECTIVE で知ったという人も今回参加してくれた人の中には多いかと思います。実際、SNS や口コミ、友達の紹介で、という方が多く、その新しい出会い1つ1つをうれしく思っております。PARK GALLERY は普段はギャラリーとして個展や、グループ展、企画展などの受け入れを行なっております。基本作家さんから使用料などはいただいていなくて、なので予約してお金を払えば展示利用できるレンタルスペースというものではなく、店主のぼくや、スタッフのい

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (54) せのー 『SHORT SCENE』(東京都)

COLLECTIVE に集まってる ZINE の特徴に、『日常のなにげない瞬間』をすくいあげるように取り上げてる作品に出会います。絵、写真、詩。ZINE という特性が、日常のことを取り上げやすいというのはもちろんだけれど、以前はもっと日常では伝えられないというか、日常の中に潜む非日常、人になかなか言えずにいること、生きづらさみたいなものが多かったように思います。日常なんて作品になるか。小津安二郎じゃあるまいし、という時代だったような。 東日本大震災以降、ある日、突然、地震や

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (53) 若林 『夏のあしあと』(東京都葛飾区)

COLLECTIVE の準備がはじまるくらいに徐々に蝉が鳴き始めて、返品が終わる頃にはすっかり秋の気配になる。ここ3年はこの期間が ZINE と一緒にあっという間に過ぎ去ってしまう。夏らしいことを特にすることもなく、ここ数年は生きている。ひと夏の思い出、なんてものがお金で買えるのであればきっとそこそこ売れるだろうね。何度も何度も思い出しては噛み締めることができるような思い出。ぼくは買わないけど。 ひと夏の思い出といえばだいぶ思い出す景色がある。ある日、「飼っていた猫が死んで