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モコモコでシュッとしたミュール

たとえ用がなくても、なんなら遠回りになってもつい定期的に立ち寄ってしまう、パリ左岸の某デパート。

横目にディスプレイを眺めるだけで入店したことはない地上階の某高級店に、なんとも色鮮やかなオブジェがある。どうやら2色展開で、それぞれが同じくらいの華やかさでお互いを引き立て合っている。アイドルのデュオ歌手みたいに。

...か、かわいいっ!

不意にしばらく立ち止まってしまった。カッと見開いた目を下方に向け店頭でフリーズするマスク姿の私、あらためて想像すると相当こわいな。

顔(甲)の長さといい、顎(つま先)の上品な尖り具合といい、適度に官能的な曲線を描く腰(ヒール)といい、モロに好みのミュールだ。そしてなんと言っても、モコモコでクルンクルンのフリース素材にこの色彩を合わせたセンスが最高。巷で流行って食傷気味のフェイクファーじゃないところがいい。彩度を振り切ったピンク!そして相棒はオレンジ!

しかしよく考えたらミュールは冬に履くと踵が寒いし、夏にこの素材だと見た目と気分が暑苦しいし、春と秋にしか履けない靴か... でもあまりに素敵で、眺めるうちに頭がボーッと霞んできて、いろんなことがどうでもよくなってくる(ただちに消費行動に影響しそうな危険な状態)。これ履いたらめちゃくちゃ楽しい気分になるだろうな〜、以外のことが考えられない。思考停止。靴でこういう電撃的なひと目惚れをするのは、いったい何年ぶりだろう。

帰宅してすぐにネットで調べたら、デパートのサイトはおろか、なんとブランド本家のサイトにも未掲載。ああああ、せめてもう一度、写真だけでも拝みたいのに、それすら叶わないとは。お店に行けばいいんだけど、行ったら試着してしまいそうで怖くて行けない。その後なんどかしつこく検索して、とうとう見つけた時の喜びと言ったらもう(ただの画像なのに)。そして、肝心のお値段も知る。

自分のものにはならずとも、「実際に作って見せてくれてありがとう!」と心から思うクリエーション。なので記念に絵を描いておく。推し芸能人のファンアートを描く人たちの気持ちが、少しわかった気がする。

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