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持っていてよかったもの

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最初は好きじゃなかったのに意外な良さに気づいたり、特に選んで買ったわけでもないのに活躍しているものについてのイラストと文章。
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シルクのシャツ

シルクのシャツ

まさか自分が、こんなにたくさんシルクのシャツとかブラウスを持つ日が来るとは思わなかった。しかもわりと古いのばっかり。

赤、ピンク、ベージュ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紫。虹色全色をコンプリートしてみてあらためて感心する、ショッキングピンクとグラスグリーンの発色の鮮やかさ。見るたびにため息が洩れる。が、彩度の高さに比例して色落ちも激しいので、洗う時には細心の注意を要する。

そもそもドライクリーニ

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グラス・グリーン色のスカート

グラス・グリーン色のスカート

人工芝のごとき高彩度な緑色の服にハマって探しまくったのは、2年と少し前だ。なぜか突然いいなと思うようになり、そうすると次々とその色の服が眼前に現れる、そして買う。

おそらく火付け役はボッテガ・ヴェネタのダニエル・リーで、どこかでなんとなく見たイメージが無意識に焼きついて膨らんだんだろう、と自分で分析している。人間の購買欲というものは、かくも単純に育つのだ。

フレアスカートとブラウスのセットアッ

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ミニマリストな黒レザージャケット

ミニマリストな黒レザージャケット

アメリカンスタイルのライダースジャケットについて、ここnoteで触れたことがある。今回は、ロンドンスタイルのライダースジャケットに着想を得て作られた1着について。

友人が誘ってくれて、年に数回ほど通っていた中規模ブランドのファミリーセール。

遠目にもなんだかステキなレザージャケットを見かけて、思わず近寄る。上質のレザーだ。

羽織ってみたら私の肩幅にちょうど。革の薄さに対して身幅はゆったりめに

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ブロックモチーフのストール

ブロックモチーフのストール

毎年冬になると、持っていてよかったとしみじみ思うストールがある。しかも色ちがいサイズちがいで2枚。

スカーフで有名なあるブランドのプレスセールに友だちが誘ってくれて、そこで出会ったのだ。青ベースと紫ベース、どちらも好きな色味なので1点には絞り切れず、ならば両方買っちゃえ!ということにしたんだった。悩みすぎて脳みそが煮えそうになるとこういう決断をする。プレスセールでなければ、泣きながら1つに絞った

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コートでドレスでトランスフォーマー

コートでドレスでトランスフォーマー

ひとつで2倍おいしいコンセプトに、とことん弱い幼少期から思春期を過ごした。

レストランのデザートメニューなんかに「ハーフサイズ2種の盛り合わせ」なる文字を見れば迷わず注文したし、宅配ピザのチラシにハーフ&ハーフの写真を見つけては密かにときめいた。

ファッションビルのセールでリバーシブルの上着なんて見つけようものなら、とりあえず試着。似合っているのかどうかよくわからないまま、二面もあるんだしどっ

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ネコファーバッグ

ネコファーバッグ

完全なひと目惚れだった。

3メートルほど先から2秒で見初め、小走りで近づき、それから抱きしめてずっと離さなかった。途中なんどもその姿を確認し、そのたびに心臓が高鳴った。もしやこれは恋か。

ネオンなピンクとパープルが混ざった、素晴らしい毛並み。
メタリックの華奢な背骨。
ほっそりした尾はマゼンタ色のサテン。

なんという愛らしい姿。気づけば無意識に、ふわふわのお腹を撫でて恍惚としてしまう。

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山吹色のニット

山吹色のニット

これ買ったのはずいぶん前のことになる。デパートの大改装工事前の在庫処分セールで、角の折れた値札には何重にも値下げシールが貼られ、びっくりするくらい安くなっていた。

山吹色のウールで、ボートネック。肩から二の腕あたりまではラグラン袖ふうで、その先は細くてまっすぐなリブ編みに切り替わる。身幅はどちらかといえばルーズで、丈はやや短め。

Dries Van Notenがまだ、ベルギー生産だった頃の品物

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サムライベルト

サムライベルト

高校のときの代数・幾何担当の先生には、隠れた愛称があった。確か「サムライ」とか「武士」とか、そんなのだったと思う。

定年退職もそう遠くない年代の男性で、とにかく痩せていた。中学校の社会科の資料集に載っていた即神仏みたいに。

あの世代の人にしては長身で、高さが足りない教壇に何十年も手をついているせいなのか、上半身はみごとな曲線を描いていた。黄金比スパイラルを、身をもって形成されていたのかもしれな

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朱赤色の革の手ぶくろ

朱赤色の革の手ぶくろ

ピンク色の服に合わせるべくオレンジ色のスカートを探しているのだけれど、なかなか見つけられない。欲しいものが具体的すぎるから、時間がかかるのはしかたない。

冬のセール初日。パリ左岸のデパートの服飾小物の売り場で、小さな人だかりを見つけた。

手袋がサイズ別に行儀よく箱に並べられているのを、4-5人が真剣に品定めの最中のようだ。そこに私もなんとなく加わってみた。

朱色に近いオレンジ色のスウェード革

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パレード用ミリタリーコート

パレード用ミリタリーコート

大学卒業後に勤めたデザイン事務所の影響(正確には、その事務所のクライアント企業のコーポレートカラーだったので、職場で目にしない日はなかった)で好きになった、特別な色がある。

パントーン色見本ではWarm Gray(ところで、Grayはアメリカで一般的な綴りで、Greyはイギリスで一般的な綴りだというのを最近になって知ったよ)と呼ばれる、暖色系グレーである。今では絵を描く時もレイアウトデザインをす

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豹の威を借るレインコート

豹の威を借るレインコート

じつは2枚も持っている、でも見かけるとついまた欲しくなる。それはレオパード柄、もといヒョウ柄のレインコート。

ところで、ヒョウ柄。
柄の大きさと配色とコントラストが肝心なのはもちろん、プリントされる生地の質感もかなり重要である。

あまりにマットな生地だと、せっかくの柄に陰影も表情もつかなくて安っぽい。

かといってビニールみたいにツヤツヤすぎると反射が柄に勝ち過ぎるし、品がなくなる。動くと微妙

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ミニマリストなウエスタンブーツ

ミニマリストなウエスタンブーツ

買った当時はもっと明るくて、マットな色合いだった気もする。かれこれ10年以上は持っているだろうか。

今では少しツヤのある飴色に。ヒール高が10センチ以上というのもあって頻繁には履いていないのだけれど、よい感じに年を重ねてくれたのでは、と思う。

長い寸胴シャフト、前後中央が割れた履き口、斜めに削られたスタイルのヒール、鎧に通しやすいように尖らせた爪先。第一印象は明らかにウエスタンブーツだ。ところ

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ボウタイブラウス

ボウタイブラウス

ここ数シーズン、ボウタイブラウスが気になって、何着か買っている。ただ、試着しても買うまでにいたらないものの方がずいぶんと多い。サイズの問題でも色柄の問題でもなく、ボウタイとボタンの関係性の問題で。

基本はブラウスなので、正面中央にボタンがあるのは構造上しかたない。ただし、ボウタイがボタンを自然にきっちり隠してくれるならば。

ボウタイの幅が細すぎたり寸足らずだったりで思うように結べず、ボタンが隠

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スタンドカラーのジャンプスーツ

スタンドカラーのジャンプスーツ

ツナギ、もといジャンプスーツまたはコンビネゾン(私の親しいフランス人たちはこう呼ぶ)が何度目かの流行を迎えて、もう5-6年になるだろうか。

かつて美術大学の彫刻課程にいた私の、人生初のツナギ購入は18歳。ただし、私服の上から着たいと考えて(動きにくいのになんでだろう?若さゆえのこだわりが不思議...)、だいぶ大きめのサイズを選んだ。色は白、なんとも消極的な選択。

サイズが大きいので常に裾は幾重

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