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デジタル業界でのキャリア形成~マッスルマーケター藤原さんとじっくり雑談!(前編)

パルコデジタルマーケティング(PDM)唐笠がゲストをお迎えして、ゆるーく”じっくり雑談”してみようというこの企画。

第1回はマッスルマーケター藤原尚也さんをお迎えして、デジタル業界でのキャリア形成(など)について”じっくり雑談”していきます(前編)。

藤原尚也
1996年カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に入社、TSUTAYAオンライン事業やDBマーケティング事業を立ち上げる。ニキビケア「プロアクティブ」のデジタルマーケティング責任者を経て独立し、アクティブ合同会社CEOに就任。化粧品会社やアパレルブランド「DoCLASSE」などでCMOを兼任し、マーケティングを支援。現在は青山商事「洋服の青山」のデジタル戦略を推進。

①マッスルマーケター藤原さんに聞いてみたいこと

唐笠:藤原さん、今日はよろしくお願いしまっする。
「マッスルマーケター藤原さんとお話するのだけれど、藤原さんに聞いてみたいことある?」って社内に聞いたら、「これからの社会や企業のニーズを踏まえ、どういう風に専門性やスキルを発展させるのが大事か、今後どういうキャリア形成の道がおすすめか、藤原先生に聞いてみたいです!」と声が挙がりました。

藤原さんは、皆さんご存じの通り第一線で活躍されているデジタルマーケターであり、またマーケターキャリア協会(MCA)でメンターをされてたりもしてますよね。そうした視点から後進にアドバイスもらえたらと思います。

唐笠:で、ですね。当社「パルコデジタルマーケティング」は、Web・ECやスマホアプリの制作・運用、SNSの運用やデジタルマーケティング全般のお手伝いをはじめ、自社開発の”CMS+グループウェアのデジタルプラットフォーム”でデベロッパーや小売・専門店企業のデジタルシフト・DXを支援している企業です。

当社でデジタル業務に携わっているメンバーたちは、20代半ば~後半から30代にかけてが多く、職種・役割でいえば、(1)コンサルティング/営業(2)ディレクター/Webデザイナー/フロントエンド・システム・インフラのエンジニア、(1)(2)半々といった感じです。

社名(デジタルマーケティング)もそうだし、ものすごく広義にいえばデジタルマーケターともいえるのだろうけれど、マーケター界隈でいうところのいわゆる「マーケター」と名乗るべき業務をしているかというと、そうでもなかったりするメンバーも多く、

そうした「非・マーケター」としてデジタル業務に携わっているメンバーたち含め、これからの社会や企業のニーズの中で「どういう風に専門性やスキルを発展させていくのがいいのだろうか、大事なのだろうか」というお話を聞けたらと、そんな感じです。

②藤原さんのキャリア
~店舗勤務からデジタル×コンテンツ×マーティングへ

藤原:はい、よろしくお願いします!
私はもともとマーケターでもなければ、デジタルでもないところからスタートしています。新卒でカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に入社し、最初はTSUTAYA店舗の運営スタッフとして各種レンタルやCD・ゲーム・書籍・チケットの販売などに従事しました。やがて本社勤務となり、番組やコンテンツの制作に携わるようになります。テレビ(ディレクTV)のJリーグと格闘技を担当していましたね。

その後、1999年ころですかね、NTT docomoの「iモード」が始まるタイミングで、iモードを軸にしたオンラインサービスの開拓に関わることになります。TSUTAYAオンライン(EC事業)を立ち上げ、着メロ・着うたや占いなど様々なコンテンツを仕掛けました。Tカード/Tポイントのデータベースを使ったマーケティング事業も立ち上げ、デジタル×コンテンツ×マーティングの業務に完全にシフトしていったわけです。

数年後、ニキビケア「プロアクティブ」を提供する外資系化粧品企業に転職します。当時、本国アメリカに比べて日本はまだまだECが強化しきれていない状態で、デジタルマーケティング部のマネージャーとしてECを推進するのがミッションでした。当時最先端のアメリカ式のダイレクトマーケティングを経験しましたね。

その後、独立してアクティブ合同会社を立ち上げ、以降アパレルブランド「DoCLASSE」や化粧品・健康食品など様々な企業のマーケティングを支援してきました。現在は青山商事「洋服の青山」のEC・デジタル戦略を推進しています。

③PDM唐笠のキャリア
~リアルから、やがてデジタルへ

唐笠:藤原さんや僕のような世代(40代)には、キャリアの最初はリアルの仕事から始まって、その後徐々にデジタルに移行してきたっていう方が多いですかね。

僕も、これまでのキャリアのうち、前半約10年はリアルが中心でした。新卒で入ったのが某アパレルブランドで、店舗での接客・販売から始まって、その後本社で生産管理をやり、転職してマーチャンダイザーをやって、さらに外資系を含む複数の雑貨メーカー・アパレルブランドで経験を積みました。

30代になる手前のころからですかね、事業責任者として事業全体を見るようになり、ちょうどリアル店舗事業が苦戦を強いられた時期で、ECやデジタルマーケティングに活路を見い出し、触手を伸ばしていきました。

結果、ECやデジタルに傾倒しすぎて、いまのパルコデジタルマーケティングにいる、という感じです。

唐笠亮
アパレル・雑貨ブランドでマーチャンダイザー・事業責任者を務めた後、ECやデジタルマーケティングの経験を活かし、ショッピングセンターPARCOをはじめとする商業施設や小売・専門店企業のDX・デジタルシフトを推進・支援している。ジャパンEコマースコンサルタント協会 特別講師。

藤原:業界は違えど、徐々にデジタル業務にシフトしていく流れは私とそっくりですね。1999~2000年以降、デジタルシフトはすごい勢いで進んでいたけれど、さらにギアチェンジしたと感じたのはスマホが登場した2008~2010年ころ。12~14年前ですね。ということは、社歴が10年ちょっと未満の”いま20代~30代前半の方たち”は、キャリアの最初っからデジタル業務という方も多いでしょうね。

唐笠:12~14年前といえば、藤原さんがCCCさんでECバリバリやってるころ、ですね!そのころ社会に出た世代ってことですね。

藤原:そうですね。Web・ECやネット広告に取り組み始めた2000年代前半のころは、デジタル業務の職種はいまほど細分化されていなかったですよね。ECやネット広告の規模もいまとは比べ物にならないくらい小さかったし、技術もインフラも未発達で、ノウハウもなかった。ほとんどの場合、チラシ作って~DM作って~といったリアル・アナログの業務と兼務する形でしたね。

④昔といまを比べるのはナンセンスでしょ
~いまおすすめするキャリア形成

唐笠:さて、2000年代前半当時といまは全然違う、のは当然として、いまデジタル業務に関わってる人たち、特に”キャリアの最初っからデジタル業務”の人たちは、どんな風にして今後のキャリア形成を考えるのがよいでしょう?デジタル業務の範囲を超えた”ビジネス理解”がより必要になってきたりするのでしょうか?

藤原:そもそも、当時といまを比べるのがナンセンスだと思っています。さっき言った通り、職種や役割分けが違いすぎるし、ビジネスを取り囲む環境も違いすぎる。私や唐笠さんの世代のキャリア形成の考え方はあまり意味をなさないんじゃないかなと思います。シンプルにこの先どうなっていくべきかを考えるほうが建設的な気がしますね。

既存ビジネスに一層の好影響をもたらすデジタル活用ができるようになるためにも、リアル事業だったりアナログ業務の範囲も含めて”ビジネスの全容の理解”を深めるべき、とする考えもあると思いますが……私はあまりそう思わないですね(笑)

もちろん、自社や業界について、デジタル業務の範囲を超えて”ビジネス理解が深い”のに越したことはないと思いますが、どちらかといえば、アメリカなりヨーロッパなりアジアなり、海外を見た方がいいと思うんです。

唐笠:ええっ……!店頭・リアルの現場からスタートして、EC・デジタルへ、そしてマーケティングへっていう”キャリアの掛け合わせ”の話の流れから、僕はてっきり「自社や業界について、デジタル業務の範囲を超えてビジネス理解を深めるのがいいと思うよ」って言われると思ってました……!

藤原:私はそっちじゃないんですよ(笑)海外に出て、海外でのデジタル技術やデジタル活用、それをベースにしたビジネスモデルや考え方などを、実際に体感し身に着けることが重要だと思いますね。会社にその環境を用意してもらうとかでもいいですけれど、できれば自分で取りに行くっていうほうが望ましい気がします。

だって、日本にいると、”日本的”な考え方から脱するのが難しくないですか?多くの場合「いま存在しているアセットやリソースを最大化して、ビジネスを伸長させる。そのためのデジタル活用、という考え方」が”正”だったりしますよね。その考え方ベースでの「職種」「役割分け」「キャリア」でしかないって感じがするんですよね。

唐笠:……なるほど!「既存のアセットやリソースを最大化するための、デジタル活用」「その考え方ベースでの職種・役割分け、そしてキャリア」自分は完全にその考えで固まってました……!

藤原:仮にいま私が20代で、デザイナーやコーダー、エンジニアやディレクターで、別にマーケターでもいいんですけれど、そして今後のキャリアを見据えるとしたら……

海外行くか、それが無理ならなんとか外資系企業のその部門に入るとかしますね。英語(語学)ができないなら勉強するしかない。

唐笠:おお……。実際にそれは藤原さんが、CCCさんからプロアクティブさんに転職されたとき、そのとき藤原さんは30代だったと思いますが、まさにそうされたわけですね!

感染防止に細心の注意を払って実施しました
撮影時のみマスクを外しています

⑤トランスフォーメーションの短期化
~この1年1年、どこで何を経験して過ごすか

藤原:世の中やビジネスを取り巻く環境は、ますますデジタル偏重になっていきます。これは確定じゃないですか。

CCCのころの話になりますが、携帯電話(元祖ガラケー)が出てきて、ネットができるようになって、当時はディスプレイもモノクロで小さかったし、当時はだれもそれ(ガラケー)でCDを買う、なんて思わなかったですよね。「こんなのでCD買う?ww」って。

でも、その後ほんの数年のうちに、写メールができるようになって、ディスプレイもカラーになって……急激に進化しましたよね。着メロ・着うたが登場・普及して、音楽が”ダウンロード”されるようになります。iTunesは、2005年くらいからですかね、配信が始まります。想像もしていなかった、”CDの盤が要らない時代”に入っていくわけです。

わずか6~7年という数年間で、びっくりするトランスフォーメーションが起きた。そしてそのトランスフォーメーションを、自分も含めてほとんどの人は想像できていなかったわけです。

これはCCCにいたとき研修で教わって面白いなと思ったことなのですが、人間の歴史って繰り返すじゃないですか。日本の歴史を振り返ると、戦争の”期間”というのは短くなっているらしいんです。

唐笠:それはあれですか、体制を大きく変えるような戦争、例えば室町時代に起こった「応仁の乱」は、たしか10数年……一方で、より近代に起こった「戊辰戦争」だと数か月……でしたっけ。そういうことですか?

藤原:それです。情報収集も戦術も武器の性能も格段に向上し、”歴史や体制が大きく変わるのにかかる期間”もどんどん短くなってきている、といえそうです。

収穫加速の法則”というのがありますが、かつては5~10年かかっていた”トランスフォーメーション”が、これからはたぶん、1~2年で済んでしまう。さらには、さらにコロナ禍が起こって、実際には1~2年どころじゃない短さで変わっていっている。

……と、いうことはですよ?いまデジタルに携わっている人たちが、「この1年1年を、どこで何を経験して過ごすか」で、自分のキャリアはまったく違ったものになるんじゃないだろうか、と思うわけです。少なくとも、それくらい以前とはスピード感が違う、ということに気づく必要があると思います。

⑥本場のピザの話
~1年1年の持つ意味が、ほんとうに大きい

唐笠:藤原さんのお話を聞いていて思い出したのですが、

川島優志氏という高校の同級生がいまして、Googleで「ホリデーロゴ」を描いた初の日本人で、その後ナイアンティック社で「Ingress」「ポケモン GO」の開発に携わり、現在米ナイアンティックの副社長の方です。

早稲田大学に入学するも中退、英語全然できないのに渡米して無理くり起業し、いろいろあって米Googleのデザイナーになって……という、結構破天荒な方なのですけれど(以前、当社内向けに講演してもらったこともあります)、

ご本人に渡米の理由を聞いたら、

「macを初めて触ったとき、衝撃すぎた。人生が変わった。アップルコンピュータもマイクロソフトもIBMも、全部アメリカ。もうこれはアメリカに行かないと!最高のピザ職人を目指すなら、本場イタリアのピザ作りを経験しないと!みたいに思って(唐笠意訳)」

……これって、藤原さんのお話にも通ずるところがあると思いました。

藤原:まったくその通りですね。私や唐笠さんは、社会人になって20数年のキャリアの中で、たまたまですかね、それなりに劇的ながらも、これから起こるのに比べれば緩やかなデジタルシフトを経験でき、自分のキャリアをアジャストさせてきたわけですが、

ただ、この1~2年は昔でいうところの10年くらいの変化の度合いといってもいいかもしれないですよね。それができる技術力、情報量があり、デジタルによって世界との距離はますます縮まったし、コロナ禍もあってデジタル偏重はより加速しているわけです。

……つまり、1年1年の持つ意味が、ほんとうに大きい。

特に20~30代のデジタル業務に携わる皆さんには、いわば”日本的”ともいえる「既存の考え方ベースでの職種・役割分けの型」「それベースでのキャリアの道」に拘りすぎることなく、
・いまどこに身を置くべきか
・どこで何をインプットすべきか

について考え、そして実際に行動に移すことで、キャリアがいい方向に広がっていくんじゃないかと思います。

……答えはたぶん日本じゃないんじゃないかなあ、なんて(笑)

第2回(後編)に続く(予定)

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