桜川緑道 メモ

「桜川緑道」は、板橋区にある暗渠(あんきょ)の上につくられた遊歩道ですが、実は同じ川に対して「田柄川緑道」と「桜川緑道」という2つの名前が付いています。
なぜでしょうか。ちょっと調査・考察してみました。

はじめに

ランニング中にパルクールっぽいことをしている関係で、車止めなどが多いコースを探すのですが、いわゆる暗渠を遊歩道にした道が条件に合致していることに気付きました。

それで、近所の「田柄川緑道」というランニングコースが暗渠オタクにとっても取材ネタとしてよいらしく、インターネット上にいろいろ記事がありました。

例えばコレです。

一見、ロマンしかないような道ですが、パルクール目線でみると、ちょっとワクワクしませんか。

桜川とは

先の記事において気になるのはこの部分です。

田柄川は公園の北の縁をまわり、南側を流れる石神井川との間を桜川と呼んでいた。

なぜに?

地理的な説明をすると、この「桜川緑道」は、板橋区と練馬区の境界に面した「桜川」という町にあり、近くには桜川小学校とか桜川中学校といった公共施設があります。
で、すでに川はないのですが、かつて流れていた田柄川の板橋区側を「桜川緑道」、練馬区側を「田柄川緑道」と呼ぶそうです。


あの区とあの区の確執説

先の疑問にヒントを与えてくれる記事としては、コレです。

光が丘を源流とする田柄川、3~4kmほどですが、その最下流の500mほどが桜川となります。
区の境界ですから、多少は対抗意識があるのかも知れません。それゆえ川の名前を変えるということもあるのかも知れません。

板橋区と練馬区の関係を確認すると、今となってはその意識はどの程度か分かりませんが、練馬区側では、1947年の区の成立を「独立」と呼んでいるようで、これはこれで熱いドラマがあったようです。

あまり「独立独立」と主張するため、GHQに日本からの独立と間違えられたそうな。
ちなみに練馬区は、いまでも10年ごとに独立記念事業をやっているようです。

バチバチしてるんかなという目線で両市の観光案内などをみると、境界までの推し具合に対して、その先の扱いが心なしか素っ気ないような気もしてきます。

桜並木説

で、この「桜川」、地名の由来は区のホームページや地名辞典では、"石神井川と田柄川に設けられた桜並木にちなむ"とありました。

地名、暗渠、区の境界を踏まえると、わたくしはなんだかモヤモヤするものを感じますけどね。

事実確認

もう少し事実確認をすると、まずこの「桜川」の成立は1965年のようです。
かつての上板橋村を分割したそうです。

で、田柄川の暗渠化・緑道化は、1971年~1981年に行われたようです。
ソースはWikipediaです。

あと、桜川小学校の開校は1955年、桜川中学校は1956年です。
ソースは各校の沿革のページです。

独立調査

わたくしの独自調査(付近のタバコ屋のおばちゃんへの聞き込み)では、

当時、生徒数の多くなった上板橋小学校を分けるため、桜川とその他の地区に小学校をつくった。
桜川といった川は知らないが、石神井川に桜並木があるからそれで桜川という地名となっている。
石神井川には、(1930年頃に)平成天皇の誕生記念として桜を植樹した。

とのことでした。

もっといろんな人や文献を当たればいいんでしょうけど、まずはここまで。

時系列まとめ

時系列でまとめると、以下です。

1930年頃 石神井川に桜並木が誕生
1950年頃 練馬区が板橋区から独立
1955年頃 桜川小学校の開校
1965年頃 地名としての「桜川」の成立
1970年~1980年頃 田柄川の暗渠化


考察

以下と推察しました。

・1950年頃、板橋区では、練馬区の独立に伴い、もとの上板橋村を分ける必要があり、名称の検討を始める

・近隣を流れる石神井の桜並木にちなみ「桜川」との案が挙がる
→すでに「石神井」も「田柄」もあるので、やや安直だけど「桜川」でGO!みたいな。
→個人的には、さらに"田柄川(たがらがわ)と掛けた"と考えると、さらにオヤジくさくてたのしい

・1955年、新設する小学校の名称は桜川に決定。1965年、地名も桜川に決定。

・1970年頃、田柄川の暗渠化に伴い、板橋区側でも計画を開始。練馬区の「田柄川緑道」と区別し、板橋区側は「桜川緑道」と命名。
→ややバチバチがあったと推察。

おわりに

いろいろ想像がふくらみましたが、結局、桜川の由来は"その土地の桜並木にちなむ"なんだなと認識しました。
まあ、区の境界で川の名前を変えることはないけど、"新しくつくる道にはその土地の新しい名前を"といった意識はあったのかなと思いました。

わたくしの近所の小さな話ではありますが、紹介しました。

水のない川ではありますが、その後名前が2つ付けられるって、なんか人間味があっておもしろいと思いませんか?

おわりに、ひとつの曲に2つの名前が付く発車メロディー界の名曲、かつて東武東上線池袋駅で流れていた「city(メモリア)」を貼っておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?