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第9夜 先生について、そしてポスト・シンギュラリティの教育論? の解説

今回は、第9夜の解説をしていきます。

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【要約】

前半は、先生はなぜ専門職なのかという問いと、先生はなぜ「でもしか先生(先生にでもなるか、先生にしかなれない、というような、あまり肯定的でない職業としての先生)」と言われるのかという問いの二つが中心になる。

「なぜ専門職なのか」という問いについては、教師はいろいろな子供がいる中で、社会に適応できるように教育しなければならないが、そういった教育能力は生きているだけでは身につかない。そこで、大学で教育を専門的に学んでいないといけない、という考え方になる。

「なぜでもしか先生なのか」という問いについては、学校教育の目的が、「社会でやっていける人間を作る(変わった人物を作るのではなく、均質的な人間を作る)」というところにある。人間は企業にとっての商品であり、就職できる=企業に買ってもらえる人間を作らなければならない。そうなると、極めて優秀な人が先生になる必要はない。
また、全国で同じ教育をしなければならないので、たくさんの人手がいる。そのため、優秀な人だけ、となってしまうと人手不足になってしまうので、「先生にしかなれない」人も取り入れなければならない。

しかし、そういう「平均的な国民・労働者を作る」という時代=近代は終わり、今や学校で教えられる学力だけでなく、能力も必要な社会になっている(ハイパー・メリトクラシー社会)。そんな中で教育にどういう意味があるだろうか、というのが後半のテーマになる。

将来的にも残る教育の意味は、「学ぶ楽しみ」である。別の考え方を学ぶことで、ものの見方が変わる、わからなかったことがわかる、長い人生を飽きずに楽しむことができる。こういった教育の機能は社会がどう変わっても残るのではないか、という話がなされている。

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【用語の解説】

タイトル「シンギュラリティ」

「技術的特異点」と訳される言葉。人工知能の研究が進み、人間の知能の水準を超える地点を指す。本当にそうなるのか疑っている人も少なくないが、どうやら2045年にやってくるらしい。


7分ごろ「人間力(批判)」
「学力だけを測る偏差値では測れないものがある」という考えから生まれた言葉。人間力があるほど「人間としてできている」ということになる。

音声では、「お前は人間力がない!」というように人を批判する言葉として用いられてしまうと、言われた側は直しようがない(学力なら勉強、体力なら運動、人間力は……⁇)ので、教育から「人間力」という言葉は追放されるべき、という話がなされている。


10分「ハイパーメリトクラシー論」
音声中で言及されていた教育学者、本田由紀の造語。分割するとHyper(かなりの[程度進んだ])Merito(能力[基準の])cracy(支配)。学力も必要だがそれだけでは足りず、学校の勉強では身につけられない何かしらの能力も必要になっている、ということ。


20分ごろ「アクティブ・ラーニング」

「能動的な学習」。大教室で授業を聞くといった受け身の学習ではなく、生徒が意見を述べたり、応用させたりする学習のこと。討論したり、人に教えたり、などなど。より広い意味では知識が身についているか先生が質問し、生徒に答えさせる、というのもアクティブ・ラーニングに入る。


34分「上級国民」
社会的地位が高いとされた人に有利な処置が行われた時に、そういう人を中傷する時に使われる言葉。最近、池袋で交通事故を起こしたけれども逮捕されなかった老人に対して一部の人々が「あいつは上級国民だから逮捕されないんだ!」と騒ぎ出したことで有名になった。
基本的に非難したい人なら誰にでも用いられうる言葉の上、用例を見ても、事件の詳細を調べたりデータを分析したり法律の運用を学んだり等々の手間をかけず、誰かを非難して鬱憤を晴らしたい連中が、人々の劣等感を煽る目的で使う言葉に過ぎず、無内容かつ有害な流行語である。こういう言葉が批判されずに横行しているのを見ると、勉強することの大切さがよくわかる。



56分「人は学ぶことを楽しむ」
念頭に置かれているのは、ギリシアの哲学者アリストテレスの著作『形而上学』の冒頭、「すべての人は、生まれつき、知ることを欲する」か。ただこの文についてアリストテレス自身は、学問のすゝめのつもりはなく、人間の動物としての特性を述べただけという説もある(こちらを参照)。


69分ごろ「野生の勉強/家畜の勉強」
陳腐な表現で言い換えると、「野生の勉強」は「答えのない勉強」、「家畜の勉強」は「答えのある勉強」といったところか。




以上で今回はおしまいです。ありがとうございました。

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