1201練習メニュー

コーチも選手と同じ練習してみた

「最近およいでないなぁ」と独り言を呟き、毎日泳ぐ選手の気持ちを考える。

練習で楽しいことなんて、ほとんどない。大半はつらい、しんどい、つまんない。でも、速くなりたい、活躍したい。そんな思いをみんな抱いている。しかし、1パーセントだけの自分への期待とわくわくがあるだけで、やはり練習の99パーセントは、面白くない。なのに選手達は泳ぐ。

「すげーな選手たち」

かつては、私も毎日毎日泳いでいたのだが、最近は選手時代の気持ちを、徐々に忘れつつある。

「よーし、いっちょ泳ぐか」
今日なら選手と同じメニューで泳げそうな気がした。そして、選手と同じメニューをすればちょっと選手の気持ちも思い出すかな、と所属先のプールへと足を運んだ。

1201練習メニュー

こちらが選手たちが行っている練習メニューである。ちょっと楽そうな練習メニューを選ばせてもらった(12/1朝練)。
このメニューの目的は、フォーム改善と疲れをとることである。私は疲れを取る必要がないのだが。私にとってこの練習メニューはリカバリーではなく、十分ハードな内容だ。ちなみにトータル距離は4250mと、みんな結構泳いでいる。

よーし!と、勢いよく飛び込む。「気持ちいい!」
快感のようなその感覚も束の間、水がうまくとらえられない、かいてもかいてもスカスカで進まない感覚にノスタルジーを感じた。選手を引退してもう3年か。

アップは、1200m。Grip Paddleは、パドルの先を握ることで、手のひらと手の付け根あたりにパドルが位置する。腕の付け根から動かそうと意識するので、広背筋に刺激が入りやすい。手だけで泳ごうとするのではなく、腕全体を面でとらえることを頭に置きながらやると、少し大きくズムーズに泳ぐことができた。

Kylieは日本で私はあまりしてこなかった練習だ。クロールでフィニッシュのたびに、臀部を手でタッチしてから腕を前方に戻すことを繰り返す練習である。目的は大きな泳ぎの習得である。ポイントは、最後までかききる意識を持ち、水中での腕の軌道を体のラインに対して平行にかくことだ。ということで、私はプール底の黒いラインに沿うように、腕をストレートにかいてみたが、これがまた難しい。私は幼い頃からS字ストロークを習ってきたものでなかなかその癖が抜け切れていない。まだまだ練習が必要だ。

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次は100m×8の、奇数はキック、偶数はプルでネガティブ(前半より後半を速く泳ぐ練習)で呼吸制限ありの練習である。オーストラリアのコーチはネガティブの練習が大好きである。なぜかというと、長距離界のキングこと、グラント・ハケットがよくこのネガティブを練習に取り入れ、いくつもの金メダルを獲得してきた、というからだ。

さて、やってみよう。日本で、ちょこちょこネガティブの練習していたが、改めてやってみて分かったことが1つある。それは、後半にかなりピッチ、キックを上げないと前半より速く泳げない、ということだ。この練習は100mで50E/50Hではないので、前半もある程度スピードが求められる。その分、後半タイムを上げることは相当きつい、と身をもって実感した。私の考えでは、ストローク数を前半より、2~3くらい上げることができれば、後半1秒くらい速くなりそうである。今度また試してみよう。

ここからは、メインの400×3と100×8である。あくまでもリカバリーが目的のメインなので、私でも泳ぎ切ることができた。400を6分サークルだったので、わりと休憩も取りつつ泳ぐことができ、リカバリーには確かに適している練習であると感じた。今回もそうだが、オーストラリアの練習はサークルがきついというより、休憩はある程度確保されている練習が多い。一方、全力で泳ぐところは、死ぬほど追い込むというスタイルである。しかし、日本はどちらかというと、回れるか回れないかのぎりぎりのサークルの設定をよくコーチは行う。選手のタイプが長距離か短距離かにもよるが、オーストラリアのメリハリのある練習を好む日本選手は多いと思う。

メインを終了し、最後はしめの25×2のダイブである。飛び込みはできないプールなので、下からスタートし腕をぶんぶん回して2本泳ぎ切った。タイムはまったく良くなかったが、練習をやりきったと同時に達成感であふれる。そして、改めて選手に対する敬意がひしひしとわいてくる。

「やっぱり選手たちはすごいな」

パラリンピックに出場するっていう目標が選手を突き動かしている。練習はきついことだらけで、練習の努力にもかかわらず大会でボロボロに負けることの方が水泳人生多いだろう。それでも、選手は毎日練習する。
かつて自分が選手であったことを振り返りつつ、これからも選手に敬意をもってコーチとして成長しかなければ、という思いを強く持った。

最後に、いつもお世話になっているプールに一礼をし、「選手たちをよろしくお願いします」そう心の中でそっとつぶやき、プールを去った。

編集長

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