55_熱傷・化学損傷【救急救命士国家試験対策】
国家試験定期試験出題内容のまとめ
【熱傷】
熱傷の病期
熱傷の経過はショック期 → 利尿期 → 感染期 → 回復期の順。
低温熱傷
44℃で6〜7時間の暴露により低温熱傷を生じる。
Ⅲ度熱傷の特徴
Ⅲ度熱傷では、瘢痕化した皮膚で伸展、収縮、発汗などの機能を失う。
一酸化炭素中毒
閉所火災では不完全燃焼により一酸化炭素中毒のリスクが高い。
熱傷の分類
Ⅰ度熱傷:紅斑、表皮のみの損傷、発赤。
Ⅱ度熱傷:水疱形成、表皮剥離、感覚鈍麻。
浅達性Ⅱ度熱傷:薄赤、強い自発痛、圧痛。
深達性Ⅱ度熱傷:やや白色、痛み軽度、知覚鈍麻
Ⅲ度熱傷:蠟色、黄色~赤茶色、黒色瘢痕化、機能喪失。
重症度の分類
軽症熱傷:Ⅱ度熱傷15%未満、Ⅲ度熱傷2%未満。
中等症熱傷:Ⅱ度熱傷15%以上30%未満、Ⅲ度熱傷10%未満(顔面・手・足を除く)。
重症熱傷:Ⅱ度熱傷30%以上、Ⅲ度熱傷10%以上、または気道、顔、手、足、陰部、関節に熱傷がある場合。
面積評価
9の法則:成人に適した熱傷面積計算法。
入院基準:Ⅱ度熱傷15%以上、Ⅲ度熱傷2%以上。
10%以上の熱傷では、冷却によって低体温症のリスクがあるため、注意が必要。
【化学損傷】
化学損傷の一般的な原因
日本では酸とアルカリによる化学損傷が多い。これらは皮膚や粘膜を強く刺激し、重度の腐食を引き起こす。
特定化学物質によるリスク
フッ化水素酸:低カルシウム血症を引き起こす。フッ素イオンが骨や血中のカルシウムと結合する。
アルカリ:経口摂取により食道穿孔の危険があり、吸入や誤嚥によって致死的な化学性肺炎を引き起こす。
黄リン:中枢神経障害や循環虚脱、ショックなどの急性中毒症状を引き起こす。
カプサイシンやクロロベンザルマロノニトリル:眼に入ると充血や角膜損傷を引き起こす。
化学損傷の救急対応
除染:化学物質が衣類に付着している場合は脱衣などの乾式除染を行う。
洗浄:損傷面積が10%を超えると洗浄による体温低下が起こるため、迅速な洗浄が必要。
体位:化学損傷傷病者の意識障害が強い場合には回復体位をとる。
搬送時の注意点
搬送中は傷病者の意識、気道・呼吸、循環評価を行い、二次汚染に注意する。
酸・アルカリに対する中和剤の使用は避ける。中和熱による追加的な熱傷や時間的余裕がない場合には特に注意が必要。
医療機関での対応
到着後は迅速に専門の医療スタッフによる評価と治療が行われる。必要に応じて特定の薬剤治療が行われることがある。
問題
熱傷の病期には________、利尿期、感染期、回復期の順で経過する。
________℃程で6〜7時間暴露されると低温熱傷になる。
Ⅲ度熱傷で瘢痕化した皮膚機能で機能を失うものとして、________、収縮、発汗がある。
ビル火災や地下鉄などの閉所火災における不完全燃焼で中毒の危険性があるのは、________中毒である。
眼瞼の浮腫によって開眼が困難な熱傷は、________度熱傷である。
日本熱傷学会における熱傷深度分類では発赤があり、表皮のみの損傷を________度損傷とする。
気道熱傷を疑う初見として見られるものは________である。
水疱形成、表皮剥離、感覚鈍麻が所見で見られる熱傷は________度熱傷に分類される。
浅達性Ⅱ度熱傷で見られる症状としては、________、強い自発痛、圧痛である。
________の法則は計算法が年齢によって異なる。
熱傷での________の法則は成人に適している。
軽症熱傷は2度熱傷________%未満、3度熱傷________%未満である。
中等症熱傷では2度熱傷________%以上________%未満、3度熱傷で顔面、手、足を除く部位で________%未満である。
重症熱傷では、2度熱傷________%以上、3度熱傷________%以上である。
熱傷の重症度・緊急度判断基準によると、________、顔、手、足、陰部、関節に熱傷があると、重傷と判断される。
熱傷面積が________%を超える場合は、低体温による循環不全によって病態を悪化させる可能性がある。
医療機関では2度熱傷________%以上、3度熱傷________%以上では、入院治療となることが多い。
熱傷面積が________%以上の場合は、冷却によって低体温症の危険がある。
わが国における化学損傷の症例報告では原因物質として、________と________によるものが多い。
化学物質が皮膚・粘膜を強く刺激したり、重度の損傷を起こしたりすることを________という。
フッ化水素酸で生じる化学損傷では________血症が生じる。
フッ素イオンは骨や血中の________と結合するため、低カルシウム血症を生じる。
________の経口摂取では食道穿孔の危険がある。
________の吸入・誤嚥による化学性肺炎は致死的となる。
________損傷を生じた損傷部位は、融解して湿潤が強い。
黄リンが生体内へ吸収されると、________障害、全身脱力、循環虚脱、ショックなどの急性中毒症候を生じる。
脂肪族化合物には________作用と蛋白質変性作用がある。
________やクロロベンザルマロノニトリルは眼に入った場合は充血、角膜損傷を生じる。
酸・アルカリなどを吸入・誤嚥した場合は________や肺水腫など重篤な呼吸器症状を生じることがある。
ルイサイト(有機ヒ素化合物)では著しい________を生じる。
化学物質が衣類を汚染している場合は、脱衣などの________除染を行う。
化学損傷の面積が________%を超えると洗浄による除染効果を得る前に体温低下が起こる。
化学損傷傷病者の意識障害が強い場合の体位は、原則として________体位をとる。
化学損傷を認める傷病者の搬送中は、傷病者の________、気道・呼吸、循環評価を行う。
搬送時には救助者及び同乗者の________には十分注意する。
中和熱による熱傷や時間的余裕が無いことから、________に対する中和剤の投与は行わない。
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解答
熱傷の病期にはショック期、利尿期、感染期、回復期の順で経過する。
44℃程で6〜7時間暴露されると低温熱傷になる。
Ⅲ度熱傷で瘢痕化した皮膚機能で機能を失うものとして、伸展、収縮、発汗がある。
ビル火災や地下鉄などの閉所火災における不完全燃焼で中毒の危険性があるのは、一酸化炭素中毒である。
眼瞼の浮腫によって開眼が困難な熱傷は、Ⅱ度熱傷である。
日本熱傷学会における熱傷深度分類では発赤があり、表皮のみの損傷をⅠ度損傷とする。
気道熱傷を疑う初見として見られるものは口腔内ススである。
水疱形成、表皮剥離、感覚鈍麻が所見で見られる熱傷はⅡ度熱傷に分類される。
浅達性Ⅱ度熱傷で見られる症状としては、水疱形成、強い自発痛、圧痛である。
5の法則は計算法が年齢によって異なる。
熱傷での9の法則は成人に適している。
軽症熱傷は2度熱傷15%未満、3度熱傷2%未満である。
中等症熱傷では2度熱傷15%以上30%未満、3度熱傷で顔面、手、足を除く部位で10%未満である。
重症熱傷では、2度熱傷30%以上、3度熱傷10%以上である。
熱傷の重症度・緊急度判断基準によると、気道、顔、手、足、陰部、関節に熱傷があると、重傷と判断される。
熱傷面積が10%を超える場合は、低体温による循環不全によって病態を悪化させる可能性がある。
医療機関では2度熱傷15%以上、3度熱傷2%以上では、入院治療となることが多い。
熱傷面積が10%以上の場合は、冷却によって低体温症の危険がある。
わが国における化学損傷の症例報告では原因物質として、酸とアルカリによるものが多い。
化学物質が皮膚・粘膜を強く刺激したり、重度の損傷を起こしたりすることを腐食という。
フッ化水素酸で生じる化学損傷では低カルシウム血症が生じる。
フッ素イオンは骨や血中のカルシウムと結合するため、低カルシウム血症を生じる。
アルカリの経口摂取では食道穿孔の危険がある。
アルカリの吸入・誤嚥による化学性肺炎は致死的となる。
アルカリ損傷を生じた損傷部位は、融解して湿潤が強い。
黄リンが生体内へ吸収されると、中枢神経障害、全身脱力、循環虚脱、ショックなどの急性中毒症候を生じる。
脂肪族化合物には脱脂作用と蛋白質変性作用がある。
カプサイシンやクロロベンザルマロノニトリルは眼に入った場合は充血、角膜損傷を生じる。
酸・アルカリなどを吸入・誤嚥した場合は喉頭浮腫や肺水腫など重篤な呼吸器症状を生じることがある。
ルイサイト(有機ヒ素化合物)では著しい呼吸困難を生じる。
化学物質が衣類を汚染している場合は、脱衣などの乾式除染を行う。
化学損傷の面積が10%を超えると洗浄による除染効果を得る前に体温低下が起こる。
化学損傷傷病者の意識障害が強い場合の体位は、原則として回復体位をとる。
化学損傷を認める傷病者の搬送中は、傷病者の意識、気道・呼吸、循環評価を行う。
搬送時には救助者及び同乗者の二次汚染には十分注意する。
中和熱による熱傷や時間的余裕が無いことから、酸・アルカリに対する中和剤の投与は行わない。
練習問題
問題1
熱傷の病期で最初に訪れるものはどれか?
A. 回復期
B. 感染期
C. 利尿期
D. ショック期
E. 炎症期
答え: D
熱傷の病期はショック期、利尿期、感染期、回復期の順で経過する。
問題2
44℃の温度で長時間暴露された場合に生じる熱傷はどれか?
A. 高温熱傷
B. 低温熱傷
C. 火傷
D. 電気熱傷
E. 化学熱傷
答え: B
44℃程で6〜7時間暴露されると低温熱傷になる。
問題3
Ⅲ度熱傷で機能を失う皮膚の機能として正しいものはどれか?
A. 感覚
B. 伸展、収縮、発汗
C. 色素沈着
D. 毛髪再生
E. 皮膚の再生能力
答え: B
Ⅲ度熱傷では皮膚の伸展、収縮、発汗が機能を失う。
問題4
ビル火災や地下鉄などの閉所火災で発生しやすい中毒はどれか?
A. 窒素中毒
B. フッ素中毒
C. 一酸化炭素中毒
D. 二酸化炭素中毒
E. 塩素ガス中毒
答え: C
閉所火災では不完全燃焼による一酸化炭素中毒が発生することがある。
問題5
眼瞼の浮腫によって開眼が困難な熱傷の深度はどれか?
A. Ⅰ度
B. 浅達性Ⅱ度
C. 深達性Ⅱ度
D. Ⅲ度
E. Ⅳ度
答え: C
眼瞼の浮腫によって開眼が困難な熱傷はⅡ度熱傷である。
問題6
気道熱傷を疑う初見として最も見られるものはどれか?
A. 口腔内スス
B. 頭痛
C. 皮膚乾燥
D. 発熱
E. 呼吸音減弱
答え: A
気道熱傷を疑う初見として口腔内ススが見られることが多い。
問題7
水疱形成、表皮剥離、感覚鈍麻が見られる熱傷の深度はどれか?
A. Ⅰ度
B. 浅達性Ⅱ度
C. 深達性Ⅱ度
D. Ⅲ度
E. Ⅳ度
答え: C
水疱形成、表皮剥離、感覚鈍麻が見られる熱傷はⅡ度熱傷である。
問題8
成人の熱傷面積を計算する方法で適しているものはどれか?
A. 5の法則
B. 9の法則
C. 体表面積法
D. 重症度法
E. 全身評価法
答え: B
成人の熱傷面積を計算する際には9の法則が適している。
問題9
軽症熱傷の基準として正しいのはどれか?
A. Ⅱ度熱傷が15%以上
B. Ⅲ度熱傷が10%以上
C. Ⅱ度熱傷が15%未満、Ⅲ度熱傷が2%未満
D. Ⅰ度熱傷が10%以上
E. Ⅱ度熱傷が30%以上
答え: C
軽症熱傷はⅡ度熱傷が15%未満、Ⅲ度熱傷が2%未満である。
問題10
重症熱傷の基準として正しいのはどれか?
A. Ⅱ度熱傷が15%未満
B. Ⅲ度熱傷が2%以上
C. Ⅱ度熱傷が30%以上、Ⅲ度熱傷が10%以上
D. Ⅰ度熱傷が10%以上
E. Ⅱ度熱傷が10%以上
答え: C
重症熱傷ではⅡ度熱傷が30%以上、Ⅲ度熱傷が10%以上である。
問題11
化学物質が皮膚・粘膜に強い損傷を起こすことを何というか?
A. 燃焼
B. 酸化
C. 腐食
D. 硫化
E. 硬化
答え: C
化学物質が皮膚・粘膜に強い損傷を起こすことを腐食という。
問題12
フッ化水素酸による化学損傷で生じる電解質異常はどれか?
A. 低カリウム血症
B. 高カルシウム血症
C. 低カルシウム血症
D. 高ナトリウム血症
E. 低ナトリウム血症
答え: C
フッ化水素酸による化学損傷では低カルシウム血症が生じる。
問題13
黄リン中毒で最も見られる症状はどれか?
A. 肝臓障害
B. 中枢神経障害
C. 肺水腫
D. 腎不全
E. 消化管出血
答え: B
黄リンが生体内へ吸収されると、中枢神経障害を生じる。
問題14
酸・アルカリ吸入によって引き起こされる重篤な症状はどれか?
A. 食道潰瘍
B. 喉頭浮腫
C. 腸穿孔
D. 肺出血
E. 腎不全
答え: B
酸・アルカリ吸入では喉頭浮腫や肺水腫などの重篤な呼吸器症状を引き起こす。
問題15
化学損傷傷病者に対して行うべき適切な体位はどれか?
A. 背臥位
B. 仰臥位
C. 側臥位
D. 回復体位
E. 座位
答え: D
化学損傷傷病者の意識障害が強い場合の体位は回復体位である。
問題16
搬送時、化学損傷傷病者の評価として最も重要な項目はどれか?
A. 血圧
B. 呼吸音
C. 体温
D. 意識、気道・呼吸、循環評価
E. 皮膚の色
答え: D
搬送中は意識、気道・呼吸、循環の評価を行う。
問題17
酸・アルカリに対して使用を避けるべき対応はどれか?
A. 冷却
B. 中和剤の投与
C. 生理食塩水の洗浄
D. 乾式除染
E. 回復体位
答え: B
中和熱による損傷や時間的余裕が無いことから、中和剤の投与は避ける。
問題18
三辺テーピングが必要となる熱傷の症例はどれか?
A. フレイルチェスト
B. 吸い込み創
C. 腹部損傷
D. 開放性骨折
E. 表皮剥離
答え: B
吸い込み創のある気胸には三辺テーピングが必要である。
問題19
急性阻血の5Pに含まれないものはどれか?
A. 異常感覚
B. 疼痛
C. 浮腫
D. 蒼白
E. 脈拍消失
答え: C
急性阻血の5Pは異常感覚、疼痛、麻痺、蒼白、脈拍消失である。
問題20
外傷による循環血液量減少性ショックを引き起こす臓器損傷として最も多いものはどれか?
A. 肝臓
B. 脾臓
C. 腎臓
D. 小腸
E. 肺
答え: A
肝臓などの実質臓器を損傷すると循環血液量減少性ショックを引き起こす。
参考文献:救急救命士標準テキスト
救急救命士試験対策に最適!『救急救命士 基礎から応用まで 試験対策問題集』のおすすめポイント
救急救命士を目指している学生の皆さんに、講義での学習に加えてしっかりとした試験対策ができる問題集をご紹介します!その名も『救急救命士 基礎から応用まで 試験対策問題集』です。
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主な対象者
専門学校・大学の学内試験を控えている学生
国家試験対策の基礎固めをしたい学生
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効率的な学習の3ステップ
講義の復習
授業で強調された内容をメモし、理解できなかった部分は講師に質問!参考書や資料を活用して理解を深めましょう。問題を解く
問題を解くことで理論を実践に結びつけ、時間制限を設けることで試験本番への準備が整います。特に間違えた問題を重点的に復習することが重要です。解答と選択肢を見直す
間違えた問題を振り返り、なぜ間違えたのかを理解して次に活かしましょう。微妙な選択肢の違いにも注目し、落とし穴に気づく力をつけていきます。
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「聴いて学ぶ」救急救命士標準テキスト
55_熱傷・化学損傷
①音声解説
②聞き流し1問1答
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