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24_緊急度重症度判断・資機材による観察【救急救命士国家試験対策】


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国家試験定期試験出題内容のまとめ
【緊急度重症度判断・資機材による観察】

1. 重症度分類

重症度の分類は、患者の生命予後を予測するための重要な判断基準です。以下の5段階に分類されます。

  • 軽症: 症状が軽く、生命に危険がない状態。外来治療や応急処置で対応可能。

  • 中等症: 症状が中程度で、医療介入が必要。入院治療が望ましいが、生命の危機は迫っていない。

  • 重症: 生命に危険がある可能性がある状態。入院治療が必須であり、速やかな治療が求められる。

  • 重篤: 生命に重大な危険がある状態。集中治療や専門的な処置が必要。

  • 死亡: 生命維持が不可能な状態。

重症の判断基準には、以下の項目が用いられます。

  • 意識レベル: JCS(Japan Coma Scale)で100以上(意識が非常に低下している状態)は重症以上の可能性。

  • 呼吸数: 呼吸が異常に速い(30回/分以上)または遅い(10回/分未満)場合は重篤を示唆。

  • 脈拍: 脈拍が異常に速い(120回/分以上)または遅い(50回/分未満)場合は重症。

  • 血圧: 収縮期血圧が90mmHg未満(低血圧)または200mmHg以上(高血圧)は重症の指標。

  • SpO2(血中酸素飽和度)やショック症状も重要な指標となります。


2. 緊急度の類型

緊急度を識別するためには、色別の分類が用いられます。

  • : 最高緊急度(緊急処置が必要)

  • : 中等度の緊急度(ある程度の処置が必要)

  • : 軽症(生命に危険はなく、自力での歩行が可能な状態)

  • : 無処置可能(すでに死亡している、もしくは処置不要)

これは、トリアージと呼ばれる緊急現場での対応法で、限られた医療資源を最も効果的に活用するための方法です。


3. カプノメータの使用

カプノメータは、呼気中の二酸化炭素分圧(ETCO2)を測定する装置で、患者の換気状態や心肺蘇生の質を評価します。

  • 評価できる項目:

    • 気管内チューブの位置確認: 気管内挿管の正確な位置を確認するために使用されます。

    • 胸骨圧迫の質の評価: 心肺蘇生時、胸骨圧迫の効果を評価します。

    • 心拍再開の検知: 心停止後の自己心拍再開(ROSC)を示す指標として用いられます。

    • 換気量の評価: 正常な換気量が保たれているかを確認します。

    • 過換気の波形: 過換気があると、CO2分圧が徐々に低下する波形が見られます。


4. 聴診器と血圧計の使用

  • 聴診器のダブルヘッド型チェストピース:

    • ベル面: 低調音(低周波数の音)を聴くのに適しています。心臓の音や血管の雑音を確認する際に使用します。

    • ダイヤフラム面: 高調音(高周波数の音)を聴くのに適しています。肺音や心音などを確認する際に使用します。

  • 自動血圧計の測定法:

    • オシロメトリック法: 機械が振動を感知し、血圧を測定します。

    • コロトコフ法: 聴診器を使用し、コロトコフ音(血液が動脈を通る際の音)で血圧を測定します。収縮期血圧はコロトコフ音が最初に聞こえる時点、拡張期血圧は音が消失する時点で測定されます。

    • シャント部のリスク: 血圧測定時には、血管シャントのある側の腕で測定すると血栓のリスクが高まるため、シャントのない側で測定します。


5. 心電図

  • 急性冠症候群(ACS): 心筋梗塞や不安定狭心症などの急性心疾患を示します。ST変化(ST上昇や下降)が見られる場合は、十二誘導心電図が推奨されます。

  • 熱傷傷病者: 胸部に火傷があり電極が貼れない場合、標準肢誘導(手足に電極を装着する方法)を使用して心電図を取ります。


6. 体温測定

  • 測定方法: 腋窩(わき)や鼓膜(耳)を使った測定が推奨されます。特に、体温測定は外傷患者や救急患者の病状把握に不可欠です。

  • 麻痺がある場合: 麻痺がある側の体温は正確でない可能性があるため、健側で測定することが望ましいです。


7. 血糖測定

  • 低ヘマトクリットの影響: ヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が低い場合、特に20%未満の低ヘマトクリット値では、血糖値が高めに測定されることがあります。

  • 血糖値の正常範囲: 70~110mg/dlが正常値とされています。50mg/dl未満は低血糖であり、意識障害や痙攣のリスクがあるため、ブドウ糖の投与が適応されます。



問題

  1. 重症度の分類は、一般に生命予後の観点から________、中等症、重症、重篤、死亡の5つに分類される。

  2. 生理学的評価は、意識、呼吸、脈拍、血圧、SpO2値、________症状の有無の6つの中から1つでも該当する場合は、重症以上と判断する。

  3. 本プロトコルにおける緊急度の類型数は________つであり、各類型の名称と識別色は緊急度が高い順に赤、黄、緑、白である。

  4. 生理学的評価の意識レベルは________で判断し、JCS100以上で重症以上に該当する目安である。

  5. 30/分以上の頻脈、または________/分未満の呼吸数減少はさらに重篤な病態を示唆する。

  6. 120/分以上または________/分未満の脈拍は、重症以上と判断する一つの指標のなる。

  7. 収縮期血圧________mmHg未満または収縮期血圧200mmHg以上は重症以上の一つの目安となる。

  8. カプノメータは、呼気中の________分圧を連続的に測定するものである。

  9. 過換気におけるカプノグラムでは________分圧の波形は徐々に低くなる。

  10. カプノメータで評価できるものは気管内チューブの位置確認、胸骨圧迫の質の評価、心拍再開の検知、________の評価である。

  11. ダブルヘッド型のチェストピースには低調音を聴くのに適する________面と高調音を聴くのに適するダイヤフラム面がある。

  12. 自動血圧計には、オシロメトリック法と________法がある。

  13. コロトコフ音発生時は________期血圧、消失時は拡張期血圧である。

  14. シャント側の上腕で血圧を測定をすると、シャント部に________を形成する可能性があるため、反対側の上肢で測定する。

  15. ST変化を伴う急性冠症候群を疑う場合は、________誘導心電図が推奨される。

  16. 熱傷の傷病者で電極を胸部に貼付できない場合は________肢誘導にする。

  17. 救急活動での体温の測定方法は腋窩検温法と________検温法が用いられる。

  18. 麻痺のある傷病者で検温をする際は________側で測定する。

  19. ヘマトクリット値が________%未満の時、血糖測定に影響を与え、血糖値が高めに測定される。

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解答

  1. 重症度の分類は、一般に生命予後の観点から軽症、中等症、重症、重篤、死亡の5つに分類される。

  2. 生理学的評価は、意識、呼吸、脈拍、血圧、SpO2値、ショック症状の有無の6つの中から1つでも該当する場合は、重症以上と判断する。

  3. 本プロトコルにおける緊急度の類型数は4つであり、各類型の名称と識別色は緊急度が高い順に赤、黄、緑、白である。

  4. 生理学的評価の意識レベルはJCSで判断し、JCS100以上で重症以上に該当する目安である。

  5. 30/分以上の頻脈、または10/分未満の呼吸数減少はさらに重篤な病態を示唆する。

  6. 120/分以上または50/分未満の脈拍は、重症以上と判断する一つの指標のなる。

  7. 収縮期血圧90mmHg未満または収縮期血圧200mmHg以上は重症以上の一つの目安となる。

  8. カプノメータは、呼気中の二酸化炭素分圧を連続的に測定するものである。

  9. 過換気におけるカプノグラムではCO2分圧の波形は徐々に低くなる。

  10. カプノメータで評価できるものは気管内チューブの位置確認、胸骨圧迫の質の評価、心拍再開の検知、換気量の評価である。

  11. ダブルヘッド型のチェストピースには低調音を聴くのに適するベル面と高調音を聴くのに適するダイヤフラム面がある。

  12. 自動血圧計には、オシロメトリック法とコロトコフ法がある。

  13. コロトコフ音発生時は収縮期血圧、消失時は拡張期血圧である。

  14. シャント側の上腕で血圧を測定をすると、シャント部に血栓を形成する可能性があるため、反対側の上肢で測定する。

  15. ST変化を伴う急性冠症候群を疑う場合は、十二誘導心電図が推奨される。

  16. 熱傷の傷病者で電極を胸部に貼付できない場合は標準肢誘導にする。

  17. 救急活動での体温の測定方法は腋窩検温法と鼓膜検温法が用いられる。

  18. 麻痺のある傷病者で検温をする際は側で測定する。

  19. ヘマトクリット値が20%未満の時、血糖測定に影響を与え、血糖値が高めに測定される。



練習問題

問題1
生命予後の観点から分類される重症度の中で、最も軽いものはどれか?
A) 重症
B) 中等症
C) 軽症
D) 重篤
E) 死亡

答え: C) 軽症


問題2
生理学的評価に含まれないものはどれか?
A) 意識
B) 呼吸
C) 体温
D) 血圧
E) ショック症状

答え: C) 体温


問題3
本プロトコルにおける緊急度の識別色として最も低い緊急度を示すものはどれか?
A) 赤
B) 黄
C) 緑
D) 白
E) 黒

答え: D) 白


問題4
JCSで重症以上に該当する意識レベルの目安はどれか?
A) JCS20
B) JCS30
C) JCS50
D) JCS100
E) JCS200

答え: D) JCS100


問題5
呼吸数が減少してさらに重篤な病態を示す可能性がある目安は何回以下か?
A) 30回/分
B) 25回/分
C) 15回/分
D) 10回/分
E) 5回/分

答え: D) 10回/分


問題6
脈拍数が重症と判断される一つの指標として正しいものはどれか?
A) 100/分以上または80/分未満
B) 110/分以上または60/分未満
C) 120/分以上または50/分未満
D) 90/分以上または70/分未満
E) 130/分以上または40/分未満

答え: C) 120/分以上または50/分未満


問題7
収縮期血圧が何mmHg未満の場合、重症と判断されるか?
A) 60mmHg
B) 70mmHg
C) 80mmHg
D) 90mmHg
E) 100mmHg

答え: D) 90mmHg


問題8
カプノメータで測定されるものはどれか?
A) 酸素分圧
B) 血糖値
C) 二酸化炭素分圧
D) 心拍数
E) 血中アルコール濃度

答え: C) 二酸化炭素分圧


問題9
過換気時のカプノグラムの変化として適切なものはどれか?
A) CO2分圧の波形が徐々に低くなる
B) CO2分圧の波形が急激に上昇する
C) CO2分圧の波形が安定する
D) CO2分圧の波形が不規則になる
E) CO2分圧の波形が減少後に上昇する

答え: A) CO2分圧の波形が徐々に低くなる


問題10
カプノメータで評価できないものはどれか?
A) 気管内チューブの位置確認
B) 胸骨圧迫の質の評価
C) 心拍再開の検知
D) 血中酸素飽和度の評価
E) 換気量の評価

答え: D) 血中酸素飽和度の評価


問題11
ダブルヘッド型のチェストピースのうち、低調音を聴くのに適している面はどれか?
A) ベル面
B) ダイヤフラム面
C) スピーカー面
D) コロトコフ面
E) スタンド面

答え: A) ベル面


問題12
自動血圧計で用いられる方法に含まれるものはどれか?
A) カプノメトリック法
B) バロメトリック法
C) オシロメトリック法
D) セントリフュージ法
E) マンシェット法

答え: C) オシロメトリック法


問題13
コロトコフ音が発生した際に確認できる血圧はどれか?
A) 拡張期血圧
B) 平均血圧
C) 収縮期血圧
D) 脈圧
E) 最高血圧

答え: C) 収縮期血圧


問題14
シャント側の上腕で血圧を測定すると発生する可能性があるのはどれか?
A) 動脈硬化
B) 血栓形成
C) 骨折
D) 感染
E) 筋痙攣

答え: B) 血栓形成


問題15
急性冠症候群を疑う場合に推奨される心電図はどれか?
A) 三誘導心電図
B) 六誘導心電図
C) 十二誘導心電図
D) 八誘導心電図
E) 四誘導心電図

答え: C) 十二誘導心電図


問題16
熱傷の傷病者で電極を胸部に貼付できない場合に推奨される誘導方法はどれか?
A) 標準肢誘導
B) 胸部肢誘導
C) 三誘導心電図
D) 横隔膜誘導
E) 背部誘導

答え: A) 標準肢誘導


問題17
救急活動で体温を測定する際に一般的に用いられる方法に該当しないものはどれか?
A) 口腔検温法
B) 腋窩検温法
C) 鼓膜検温法
D) 直腸検温法
E) 以上すべて該当

答え: A) 口腔検温法


問題18
麻痺がある傷病者で検温を行う際、どちらで測定するのが適切か?
A) 麻痺側
B) 健側
C) どちらでもよい
D) 両側で測定する
E) 額で測定する

答え: B) 健側


問題19
ヘマトクリット値が何%未満で血糖測定に影響を与える可能性があるか?
A) 10%
B) 20%
C) 30%
D) 40%
E) 50%

答え: B) 20%


問題20
カプノメータの使用目的として正しくないものはどれか?
A) 気管内チューブの位置確認
B) 換気量の評価
C) 心拍再開の検知
D) 血糖値の測定
E) 胸骨圧迫の質の評価

答え: D) 血糖値の測定


参考文献:救急救命士標準テキスト



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「聴いて学ぶ」救急救命士標準テキスト

24_緊急度重症度判断・資機材による観察
 ①音声解説
 ②聞き流し1問1答

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