30_ショック【救急救命士国家試験対策】
国家試験定期試験出題内容のまとめ
【ショック】
1. ショックの分類と共通病態
ショックは以下のように分類されますが、共通して組織の酸素欠乏と代謝障害を伴います。
循環血液量減少性ショック: 大量出血や脱水により、循環する血液量が減少して起こるショック。
例: 出血、脱水、火傷
心原性ショック: 心臓が血液を十分に送り出せなくなって起こるショック。
例: 心筋梗塞、大動脈弁閉鎖不全
心外閉塞・拘束性ショック: 心臓周囲の圧力が上昇し、心臓のポンプ機能が妨げられるショック。
例: 緊張性気胸、心タンポナーデ
血液分布異常性ショック: 血管が拡張し、血液が正常に分布できなくなるショック。
例: 敗血症性ショック、アナフィラキシーショック
共通する病態
酸素欠乏と代謝障害: 組織が十分な酸素を受け取れず、エネルギー代謝が損なわれ、臓器障害が進行します。
ショックの5P: 蒼白、冷汗、虚脱、脈拍触知不能、呼吸不全。
意識障害: 平均血圧60mmHg以下になると、脳への血流が不足し、意識障害が出現します。
代償反応
ホルモン分泌: アルドステロンやバソプレシンの分泌が促進され、腎臓での水分とナトリウム再吸収を増加させ、尿量が減少します。
循環管理: 出血量が30~40%を超えると、血圧低下や脈圧の低下が顕著になります。
2. ショック時の循環管理
出血量と影響: 出血量が全血液量の30~40%に達すると、血圧が低下し、体内の臓器への血流が著しく減少します。
体温低下と出血: 体温が低下すると、血小板機能や凝固因子の働きが低下し、出血がさらに悪化することがあります。
輸液療法: 乳酸リンゲル液などを使用し、出血量の3〜4倍を補うことで、重要臓器への最低限の血流を維持します。
3. 心原性ショックと心血管の問題
弁逆流症:
大動脈弁閉鎖不全: 拡張期に血液が大動脈から左心室に逆流します。
僧帽弁閉鎖不全: 収縮期に血液が左心室から左心房へ逆流します。
心筋梗塞: 左室心筋の40%以上が壊死すると、ポンプ機能が著しく低下し、ショックを引き起こします。
右心不全と左心不全: 右心不全では頸静脈怒張、左心不全では肺のラ音が聴取され、いずれも心臓の血液送り出し機能の低下が特徴です。
頻脈の影響: 極端な頻脈では1回拍出量が減少し、心拍出量が低下します。
4. 呼吸器系とショック
緊張性気胸: 胸腔内圧が上昇し、右心房への血液還流が減少します。これにより、心臓のポンプ機能が低下し、ショックを引き起こします。
肺血栓塞栓症: 深部静脈血栓が肺動脈を閉塞し、右心系の負荷が増加してショックを引き起こします。
胸壁開放創: 三辺テーピングによる閉鎖が推奨され、呼吸器系の安定が図られます。
5. 神経原性ショックと特殊なショック
神経原性ショック: 交感神経の遮断により、血管が拡張して低血圧と徐脈が現れます。頸髄損傷などで起こりやすい。
血管迷走神経反射: 痛みや恐怖によって迷走神経が過剰に刺激され、血圧が急激に低下します。
アナフィラキシーショック: アレルゲンが引き金となり、ヒスタミンの作用で血管が拡張、末梢血管抵抗が低下し、急激な血圧低下を引き起こします。
敗血症性ショック: 細菌毒素が全身に回ることで、血管拡張、血圧低下、臓器障害を引き起こします。皮膚の発赤や発熱が伴います。
6. 妊婦と高齢者のショックの注意点
妊婦や高齢者: 出血やショックの初期反応が現れにくいため、注意が必要です。例えば、頻脈や血圧低下が明らかでない場合でも、早期対応が求められます。
問題
ショックの種類は________、心原性ショック、心外閉塞・拘束性ショック、血液分布異常性ショックの4型に分類される。
各種のショックに共通する病態は、組織の________と代謝障害である。
平均血圧が________mmHgを下回ると、意欲の低下、認識力の低下など意識の障害が現れる。
ショックの5Pは________、冷汗、虚脱、脈拍触知不能、呼吸不全である。
ショックが続く間は酸素消費量、二酸化炭素産生量、エネルギー消費量、体温のすべてが________ないし、低下する。
ショック時には、________とバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌が亢進する。
ショック時には、腎臓における________不足の結果、尿量が減少する。
ショック時に尿量が減少するのは、尿中に排出されるはずの水分と________を体内に再吸収して体液量を保とうとする代償反応が起こるためである。
高齢者、________服用者などでは大量に出血しても頻脈を来しにくいことがある。
妊娠中は正常でも________の低下と頻脈がみられるので、出血による症状の判別が難しい。
出血量が循環血液量の________%~________%になると収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧が低下する。
大量輸液、処置時の脱衣、ショックによる代謝の低下で________が低下する結果、血小板機能と血液凝固能力はさらに低下し、出血は止まりにくくなる。
医療機関においては、乳酸リンゲル液の投与量は出血量の________〜________倍必要である。
ショックに対する輸液の目的は重要臓器の最低限の________を保ち、ショックの増悪を防ぐことにある。
大動脈弁の閉鎖不全では、拡張期に血液が________に、僧帽弁の閉鎖不全では収縮期に血液が左心房に逆流する。
左室心筋量の________%以上の梗塞でショックを起こすといわれる。
右心不全があれば________が、左心不全があれば呼吸困難や肺野の断続性ラ音を認める。
極端な頻脈では1回拍出量が減少し、________は低下する。
通常の気胸がバックバルブマスク換気や気管挿管後の________によって緊張性気胸に進展することもあるため注意する。
外傷性心破裂、急性心筋梗塞後の心破裂、急性大動脈解離の合併症としての________では早期にショックをきたしやすい。
緊張性気胸では、胸腔内圧の上昇に伴って________も上昇し、心臓に戻る血液量は減少する。
肺血栓塞栓症は下肢の________に生じた血栓が静脈壁から剥がれて流れ、右心系を経由して肺動脈に詰まったものである。
胸壁の開放創があれば________テーピングを行う。
敗血症性ショックは重症感染症で________が全身に回り、広範な炎症反応を起こした結果生じるショックである。
第________腰髄節よりも上での脊髄損傷は、交感神経系の機能に影響を与える可能性がある。
神経原性ショックは________が広範囲に遮断されて血管の緊張が保たれなくなり、代償的な心拍増加と心収縮力の増強も抑制され、血圧が低下する。
血管迷走神経反射によるショックは________、恐怖、驚愕、長時間の起立などをきっかけに起こる。
アナフィラキシーショックでは全身の皮膚に________と紅潮が出現する。
敗血症性ショックでは全身の皮膚が________して温かく、発熱を伴う。
神経原性ショックでは、________と温かい皮膚、対麻痺または四肢麻痺などの神経所見を呈する。
アナフィラキシーショックは________などにより全末梢血管抵抗が低下するが、それに加えて循環血液量減少と心機能低下も関与する。
敗血症性ショックが進行すると、やがて心拍出量の減少と全末梢血管抵抗の増加に転じる。この時期を________ショックという。
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解答
ショックの種類は循環血液量減少性ショック、心原性ショック、心外閉塞・拘束性ショック、血液分布異常性ショックの4型に分類される。
各種のショックに共通する病態は、組織の酸素欠乏状態と代謝障害である。
平均血圧が60mmHgを下回ると、意欲の低下、認識力の低下など意識の障害が現れる。
ショックの5Pは蒼白、冷汗、虚脱、脈拍触知不能、呼吸不全である。
ショックが続く間は酸素消費量、二酸化炭素産生量、エネルギー消費量、体温のすべてが減少ないし、低下する。
ショック時には、アルドステロンとバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌が亢進する。
ショック時には、腎臓における糸球体濾過圧不足の結果、尿量が減少する。
ショック時に尿量が減少するのは、尿中に排出されるはずの水分とナトリウムを体内に再吸収して体液量を保とうとする代償反応が起こるためである。
高齢者、β遮断薬服用者などでは大量に出血しても頻脈を来しにくいことがある。
妊娠中は正常でも血圧の低下と頻脈がみられるので、出血による症状の判別が難しい。
出血量が循環血液量の30%~40%になると収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧が低下する。
大量輸液、処置時の脱衣、ショックによる代謝の低下で体温が低下する結果、血小板機能と血液凝固能力はさらに低下し、出血は止まりにくくなる。
医療機関においては、乳酸リンゲル液の投与量は出血量の3〜4倍必要である。
ショックに対する輸液の目的は重要臓器の最低限の灌流を保ち、ショックの増悪を防ぐことにある。
大動脈弁の閉鎖不全では、拡張期に血液が心室に、僧帽弁の閉鎖不全では収縮期に血液が左心房に逆流する。
左室心筋量の40%以上の梗塞でショックを起こすといわれる。
右心不全があれば頸静脈怒張が、左心不全があれば呼吸困難や肺野の断続性ラ音を認める。
極端な頻脈では1回拍出量が減少し、心拍出量は低下する。
通常の気胸がバックバルブマスク換気や気管挿管後の陽圧換気によって緊張性気胸に進展することもあるため注意する。
外傷性心破裂、急性心筋梗塞後の心破裂、急性大動脈解離の合併症としての心タンポナーデでは早期にショックをきたしやすい。
緊張性気胸では、胸腔内圧の上昇に伴って右心房圧も上昇し、心臓に戻る血液量は減少する。
肺血栓塞栓症は下肢の深部静脈に生じた血栓が静脈壁から剥がれて流れ、右心系を経由して肺動脈に詰まったものである。
胸壁の開放創があれば三辺テーピングを行う。
敗血症性ショックは重症感染症で毒素が全身に回り、広範な炎症反応を起こした結果生じるショックである。
第3腰髄節よりも上での脊髄損傷は、交感神経系の機能に影響を与える可能性がある。
神経原性ショックは交感神経系が広範囲に遮断されて血管の緊張が保たれなくなり、代償的な心拍増加と心収縮力の増強も抑制され、血圧が低下する。
血管迷走神経反射によるショックは痛み、恐怖、驚愕、長時間の起立などをきっかけに起こる。
アナフィラキシーショックでは全身の皮膚に搔痒と紅潮が出現する。
敗血症性ショックでは全身の皮膚が発赤して温かく、発熱を伴う。
神経原性ショックでは、徐脈と温かい皮膚、対麻痺または四肢麻痺などの神経所見を呈する。
アナフィラキシーショックはヒスタミンなどにより全末梢血管抵抗が低下するが、それに加えて循環血液量減少と心機能低下も関与する。
敗血症性ショックが進行すると、やがて心拍出量の減少と全末梢血管抵抗の増加に転じる。この時期をコールドショックという。
練習問題
問題1
ショックの種類に含まれないものはどれか?
A) 循環血液量減少性ショック
B) 心原性ショック
C) 神経原性ショック
D) 心外閉塞・拘束性ショック
E) 血液分布異常性ショック
答え: C) 神経原性ショック
問題2
ショックに共通する病態は何か?
A) 組織の酸素供給過剰
B) 組織の酸素欠乏状態と代謝障害
C) 組織の栄養不足
D) 血圧の上昇と代謝過剰
E) 心拍数の低下
答え: B) 組織の酸素欠乏状態と代謝障害
問題3
平均血圧が何mmHgを下回ると意識障害が現れるか?
A) 50mmHg
B) 60mmHg
C) 70mmHg
D) 80mmHg
E) 90mmHg
答え: B) 60mmHg
問題4
ショック時に見られる症状「5P」に含まれないものはどれか?
A) 蒼白
B) 呼吸不全
C) 頻脈
D) 冷汗
E) 虚脱
答え: C) 頻脈
問題5
ショックが続く間に減少または低下しないものはどれか?
A) 酸素消費量
B) 二酸化炭素産生量
C) 体温
D) アドレナリン分泌量
E) 尿量
答え: D) アドレナリン分泌量
問題6
ショック時に亢進するホルモンの組み合わせはどれか?
A) アルドステロンとバソプレシン
B) アドレナリンとグルカゴン
C) インスリンとコルチゾール
D) テストステロンとエストロゲン
E) 甲状腺ホルモンとカルシトニン
答え: A) アルドステロンとバソプレシン
問題7
ショック時に尿量が減少するのはなぜか?
A) 腎機能の完全な停止
B) 糸球体の破壊
C) 体液量を保つためのナトリウムと水分の再吸収
D) 尿路の閉塞
E) 過剰な利尿作用
答え: C) 体液量を保つためのナトリウムと水分の再吸収
問題8
大量出血しても頻脈が現れにくいのはどのような患者か?
A) 高齢者やβ遮断薬服用者
B) 若年者
C) 健康な成人
D) 妊婦
E) 高血圧の患者
答え: A) 高齢者やβ遮断薬服用者
問題9
出血量が循環血液量の30〜40%になると何が起こるか?
A) 血圧と脈圧の上昇
B) 血圧と脈圧の低下
C) 血糖値の上昇
D) 血糖値の低下
E) 呼吸数の増加
答え: B) 血圧と脈圧の低下
問題10
ショックに対する輸液の主な目的は何か?
A) 輸液量の増加
B) 重要臓器の最低限の灌流を保つこと
C) 血圧の急激な上昇
D) エネルギーの供給
E) 心拍数の減少
答え: B) 重要臓器の最低限の灌流を保つこと
問題11
左室心筋量の何%以上の梗塞でショックを起こすとされるか?
A) 20%
B) 30%
C) 40%
D) 50%
E) 60%
答え: C) 40%
問題12
右心不全の症状として見られるのはどれか?
A) 呼吸困難
B) 頸静脈怒張
C) 血圧の低下
D) 頻脈
E) 意識喪失
答え: B) 頸静脈怒張
問題13
緊張性気胸では胸腔内圧の上昇に伴い、何が上昇するか?
A) 心拍数
B) 左心房圧
C) 右心房圧
D) 血糖値
E) 血圧
答え: C) 右心房圧
問題14
敗血症性ショックは何によって引き起こされるか?
A) ウイルス感染
B) 細菌感染
C) 重症感染症による毒素の全身拡散
D) アレルギー反応
E) 外傷
答え: C) 重症感染症による毒素の全身拡散
問題15
神経原性ショックでは、血圧の低下に加えてどのような神経所見が見られるか?
A) 頻脈と低体温
B) 徐脈と温かい皮膚、対麻痺または四肢麻痺
C) 頻脈と発熱
D) 徐脈と冷たい皮膚
E) 血圧の急激な上昇
答え: B) 徐脈と温かい皮膚、対麻痺または四肢麻痺
問題16
アナフィラキシーショックで全身の皮膚に見られる症状はどれか?
A) 蒼白と冷感
B) 乾燥と皮膚剥離
C) 搔痒と紅潮
D) 斑状出血
E) チアノーゼ
答え: C) 搔痒と紅潮
問題17
アナフィラキシーショックの原因物質として正しいものはどれか?
A) グルコース
B) カルシウム
C) ヒスタミン
D) ドーパミン
E) コレステロール
答え: C) ヒスタミン
問題18
敗血症性ショックが進行すると、心拍出量が減少し、全末梢血管抵抗が増加する状態を何と呼ぶか?
A) ホットショック
B) コールドショック
C) 神経ショック
D) 循環ショック
E) 低血圧ショック
答え: B) コールドショック
問題19
第3腰髄節よりも上での脊髄損傷が影響を与える可能性のある機能はどれか?
A) 副交感神経系
B) 消化器系
C) 交感神経系
D) 呼吸器系
E) 中枢神経系
答え: C) 交感神経系
問題20
血管迷走神経反射によるショックを引き起こす可能性がある要因はどれか?
A) 高血糖
B) 恐怖や痛み
C) 過剰な水分摂取
D) 激しい運動
E) 酸素欠乏
答え: B) 恐怖や痛み
参考文献:救急救命士標準テキスト
救急救命士試験対策に最適!『救急救命士 基礎から応用まで 試験対策問題集』のおすすめポイント
救急救命士を目指している学生の皆さんに、講義での学習に加えてしっかりとした試験対策ができる問題集をご紹介します!その名も『救急救命士 基礎から応用まで 試験対策問題集』です。
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主な対象者
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国家試験対策の基礎固めをしたい学生
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効率的な学習の3ステップ
講義の復習
授業で強調された内容をメモし、理解できなかった部分は講師に質問!参考書や資料を活用して理解を深めましょう。問題を解く
問題を解くことで理論を実践に結びつけ、時間制限を設けることで試験本番への準備が整います。特に間違えた問題を重点的に復習することが重要です。解答と選択肢を見直す
間違えた問題を振り返り、なぜ間違えたのかを理解して次に活かしましょう。微妙な選択肢の違いにも注目し、落とし穴に気づく力をつけていきます。
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「聴いて学ぶ」救急救命士標準テキスト
30_ショック
①音声解説
②聞き流し1問1答
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