見出し画像

五反田の寄る辺に夢は降るのだ



降る

雨が静かに灰色の雲から

降り続く

流れない涙の代わりに

過ぎる時と共に

戻らない日々のように

振り落ち

やがて消えてゆく





ひとつ音がホールに広がった瞬間

心はあの頃に還る

ステージ上の人達と同じ時を生きる人は

彼等と出逢った若かりし自身に

曲をラジオやテレビで耳にし知ったた人は

レンタルショップに通った少年少女に

昔を懐かしみながら

今奏でられる音を楽しむ


ここで開かれるはフュージョンという

知ってる人は大好きなジャンルの音楽家達が

同窓会のように集った フェスティバル-祭り


会場のホールは長い歴史を刻みながら

多くのミュージシャンを見守ってきた

この日の出演者にも思い出深い場所

若い頃良く使ったと語った後

秋に閉鎖される とも

心地良く音を鳴らす場が

また一つ消える

寄る辺に感謝するように

昔馴染みに別れを告げるように

彼等は今の音を奏でる


次々と無くなる

音楽が集い 遊ぶ場所

淋しくて 悔しくて


開催前に体を崩し出られなくなった方の

たっての願いで急遽出演した人は 祈る

東京から離れた地に居る彼に向け

「届かなくても」

観客と共にエールを送る

ステージに ライブに

「戻ってこいよ」

そして彼が作った曲を高らかに奏でる

 ホールの外を 街をも越え

彼の元へ届けとばかりに


届いている

繋がっているから

心も音も


アコースティックギターひとつで

多彩な音を奏でる青年は

後で登場するバンドの代表曲が好きで

聴き継がれるような作品を

自分も作りたい

そう思い続け出来た曲を披露した

フェス後半共演を果たす

憧れの人-バンドのリーダーと

アコースティックギターとエレキギターは

伸びやかに楽しげに歌う

いつになく軽やかなギターのカッティング

夢が叶った嬉しさに空間は満ち

誰もが顔をほころばせ音に乗る

そしてセッションの熱気を

引き継ぎバンドが更に上げてゆく

ラストはその代表曲が奏でられ

客席の人々が音に合わせ

右腕を振り上げるは気持ち良くて

ステージ袖で青年も上げていた かも


今を思いきり楽しむ

ステージの人達も

客席も ホールも





昔は誰もが音楽を追い掛けていた

あちこちのライブハウスを回って

ミュージシャンの手の動きを観察し

溝がすり減りテープが伸びるまで

レコードやカセットを聴き込んだ




今はスマートフォンに触れれば

手軽に音楽がダウンロードされ

昔のライブや教則向け映像を

動画サイトで見て懐かしみながら

名を隠し鋭利な否定をコメントに残す


俯いた視線で手の中で見る世界は

狭くて近い錯覚を起こしそうでいて遠く

現実の事でも嘘に感じ

嘘を簡単に信じてしまう  




顔を上げステージを見よう

ほら 所狭しと置かれた楽器と共に

演奏者達がらんちき騒ぎ中

広いステージを飛び交う視線

あちらがそう来るなら

こっちはこう返すと

互いににやり笑みを交わし合う

先輩の隣で弾いている後輩氏の表情は

なんだかキラキラしていたような


床とスピーカーから体に伝わる音の振動は

スマホの小さな画面では感じない

ホールに溢れる熱気と喜びは

パソコンのモニターでも収まりきれない

終わった後の帰り道

キラキラした目で

ライブを振り返りながらわき上がる

充実感と今は心地良い疲労は

直に来て観てこそ味わえるもの


動いてこそ感じる全部が

この日 この場にはあった

集った人たちの胸に

あの頃 あの想いが きっと





夢があった

熱く

輝き

強く

真っ直ぐな

気持ちが

奏でられた音ひとつひとつに宿り

寄る辺一帯に何度も放たれ

人々に降り注ぎ

ひとりひとりの中に落ち



広がり

留まる



ここが閉じても

誰もの心に残ってゆくのだ

熱を忘れずまた求めるなら




夢はあり続けるのだ

貴方の中に




今回は2015年7月、東京は五反田に当時あったゆうぽうとホールでの『Legacy-The Best of Fusion-Presents Fusion Festival in Tokyo vol,2』のことを書きました。出演はトップ画像のチケットに表記されたバンドミュージシャンの他に、ギターの押尾コータローさんサックスの小林香織さんキーボードの安部潤さん、それからライブひと月くらい前に急遽松原正樹さんから鈴木茂さんが出演の変更も。この辺りは後程。
フェスは押尾さん小林さんらのセッション→押尾さん→ナニワエキスプレス→小林さん安部さん→鈴木茂さん達→押尾さん野呂さん→カシ3番→らんちきセッション、という進行或いは話の流れもまず書いておきます。
完全に文やないかいなタイトルは、元はどこぞで知った演劇のを色々手加えて。「のだ」という語感が気に入ってずっと覚えていてここに持ってきたのです。
“寄る辺”は詩でも書きましたが、話したのはナニワエキスプレスの清水さんで昔上京した時はここの宿泊施設をよく利用したとか話した後に閉鎖に触れ、ここもこの人たちには“寄る辺”なんだなと思いまして。まあ自分の地元の名古屋は2000年代終盤に厚生年金会館や勤労会館が閉鎖され、特に勤労はCASIOPEAを初めて観た場所だっただけに、悲しかったなぁ。今勤労があった場所はなーんもないっす。
ライブハウスばかりでなく古いホールも又遊び場、集まる場という意味で。コレで火付いてしまい以降書いた詩やレポートは寄る辺に拘ったものばかりに。
鈴木さんのコーナーは知った当初はリズム隊の大御所さんら初めて聴くのが楽しみでしたが、当日は鈴木さんが熱くよもや叫ぶことになろうとは。「たっての願い」はMCで言ったのがすんごく残り詩に組み込みました。松原さんの曲『SNIPER』を鈴木さんが弾いたのは振り返ると貴重で。詩はこの日のことに留めましたが、松原さん、一旦春ライブに戻ったんですが翌年の冬に…。もっと聴きたい観たい方でした。
でカシ3番前のセッションの前に、鈴木さんから同じ高校の後輩という野呂さんの呼び込み-自身が出てから入学なので学校での関わりはなく-があり押尾さんが来てわざわざ「尾てい骨が痛いでしょう」とスタンディングを促した上で持ってきたのが、カシ3番ではこの当時まだ演奏してない個人的に思い入れ強い『HALLE』で、ハイわしぶっつりキレましたと。まあ押尾さん自分のコーナーでCASIOPEAの曲に憧れてたと語ってたんでなんか絡まないかなぁと期待してはいましたが、右斜めどころか垂直上昇しやしたわ。
カシ3番のラストはその憧れた『ASAYAKE』で、ホールでの右腕上げる光景は壮観。尚袖で上げていたかはあくまで想像ですが、可能性は高そう。
アンコールセッションは、カシ3番全員・ナニワはドラムス以外の4人・鈴木さん押尾さん小林さん安部さん、だったかなぁ。人がホント入り乱れてたから把握し切れず。東京ジャズとかクロスオーバーとかでは無かった出演者による音の宴会は待望で嬉しくて浮かれていたのも事実。そうそう、終わった直後の集合写真が拝める野呂さんのブログのページはっておきやす。
ついでに鳴瀬さんのブログの翌日のページも、冒頭が別の話題ですけど。此方はセッションの写真がありますし、前のページに開演前のことも書いてます。どちらも今は更新は停止、読むだけという風で残したかと思いますので。
タイトルでもうひとつ。同じソレを付けたレポートをカシ3番のファンクラブの会報に送ってまして。ライブ後ひと月くらいほぼ同時進行で二つを書いてたなぁ。会報に堂々とレポートバージョンと付けたこの強心臓。詩は書き上げてから、えーと、その後投稿向けにひとつの話しをピックアップして複数送って、毎度の通り。今回のはその時に足した所を追加で元のに組み込み、ライブは良いぞ生音はたまらんぞ気に入った寄る辺-ハコは見つけとこ、後は語りまへんがそういうのをどーんとね。ただ、2020年春にこうして持ってくると、諸々想いますわ。今は、コンサートイベントの開催が再び出来るのを、待ちます。ライブハウスも面子如何で行きたいのぅ。動かないで後悔より動いて後悔、のわしなんで。



この記事が参加している募集

私のイチオシ