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わたしは今、自分の読むべき本を待っている。

ひどく腹が立っている。

理由はなんとなく分かっていて、けれどはっきりとした言葉にもできないでいる。こういう猛烈な怒りがときどきふらっと現れて、わたしはその怒りを抑えるのにかなり苦労する。

わたしのテリトリーに土足で踏み込み、ひどく荒らして、知らん顔で去ってゆく。わたしの居場所がなくなってゆく、そんな感覚とどこか似ている。

わたしが感じている怒りは、わたしの居場所を取らないでくれという心の叫びなのかもしれない。

もちろん相手にそんなつもりは全くなくて、わたしが勝手にそう感じているだけの話だ。悪意のあるボールを故意に投げられたわけではない。

そう分かってはいても、どうにも怒りが収まらないこともある。そういう時は、わたしの中の小さいわたし、リトルさきの言い分をひとまず全て聞いてあげるという技をある人から教えてもらった。ドラえもんのミニドラみたいなものだ。

だからバイト中にも関わらず、手帳を開いてリトルさきの気持を書き出してみる。それでも何かがブレーキをかけるから、エンジン全開でリトルさきを暴れさせることができない。

いつもそうだ。いつもいつも、その時だけなのに、誰かが見るものではないと分かっているのに、いつか誰かに見られることを心のどこかで恐れている。

音楽を聴くとか映画を観るとか誰かとお喋りするとか一人になるとか、怒りを鎮める方法はいくつもあるけれど、わたしは無性に小説が読みたい。架空の世界の誰かの言葉に救われたい。架空の世界の言葉だから、すっとわたしの心に届いてくれることがある。

そう思って本屋に行ったは良いものの、文庫本コーナーを何周しても、何を読めばいいのかさっぱり分からない。だから何も買わずに帰ることにした。

自分の読むべき本が、向こうから寄ってくることがある。わたしはそう思っている。

それは、自分がそういう本を無意識に探しているからなのだとも思うのだけれど、わたしは今、自分の読むべき本を待っている。





最後までお読みいただき、ありがとうございます! 泣いたり笑ったりしながらゆっくりと進んでいたら、またどこかで会えるかも...。そのときを楽しみにしています。