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憧れのお子様ランチ#motohiroとカフェ

今回は、motohiroさんの素敵な企画に参加してみました!

イラストに合わせて短いお話も考えてみました(緊張😅)よろしければご覧ください🌼

憧れのお子様ランチ

〜ひだまりカフェのみなさまランチ〜


 「お子様ランチ…食べたいなぁ…」ガランとしたスタッフルームに一人いる僕は、ため息まじりにそう呟いた。

スマホの画面に写るキラキラとしたお子様ランチ。画像を眺めながら、コンビニの菓子パンをモサモサとかじる。

 社会人一年目の僕は、最近まともなランチすら食べられていなかった。

仕事に慣れるどころか、ミスばかりで、毎日が忙しなく、楽しいことなどひとつも浮かばない。

 そんな僕の癒やしの時間が、お子様ランチを眺めることだった。

だが、僕はその魅惑の食べ物を、生まれてこの方一回しか食べたことがなかった。

テレビで紹介されていた、お洒落なカフェのお子様ランチ。子役の子が、美味しそうに頬張る姿に、小さい僕はとても強い憧れを持った。

 しかし、僕は4人兄弟の末っ子。家庭では、金銭上の都合で、外食をほとんどしたことがなかった。

大人しく気が弱い僕が、やんちゃな兄弟たちの中で自己主張をできるはずもなく、「お子様ランチが食べたい」という思いは、ずっと秘められたままだった。

 だが、たった一度だけ、元気だった頃の祖父が小学生の僕を連れて、ファミレスのお子様ランチを食べさせてくれたことがあった。

「みんなには内緒な」大好きな祖父と二人だけの秘密。初めてのことばかりで、わくわくして堪らなかった。

ハンバーグ、エビフライ、チキンライス…大好きなものがプレート一面に詰め込まれ、キラキラとカラフルに輝いている。

ライスの上でピシッと立っている旗。そして、僕が選んだ、僕だけのおもちゃ。

無題388

これ以上、嬉しいことってあるだろうか。その時の記憶は、今でも色鮮やかに輝き、僕の胸をわくわくさせるのだ。

 その時もらった車のおもちゃは、家で遊ぶと兄たちと喧嘩になるため、外に持っていっていつも遊んでいた。

しかし、橋の欄干で遊んでいたところ、誤って落としてしまい、大泣きしたのは、ほろ苦い記憶である。それ以来、そのおもちゃは見ていない。


 社会人になり、自由になるお金が入ってはくるが、僕はお子様ランチを食べられずにいた。

まず、年齢制限。小学生までのお子様までというお店が案外多い。

そして、もう一つ大きな理由は「お子様ランチ一つ!」と頼む勇気がなかったのだ。

こんなに恋い焦がれているのに、僕は大好きなものすら頼むことができない弱虫だった。

 やっと訪れた休日。

ベッドの上に転がる僕は、なんのやる気も起きなかった。

だが、冷蔵庫は空っぽ、家には何もないのに、お腹は減る一方。仕方なく、なんか食いに行くか…と、のそのそと出かける準備をした。

 ぼーっと歩いていると、いつの間にか見覚えのない森の前に来ていた。

あれっと我にかえると、少し歩いたところに、なんともお洒落なカフェが見える。こんな店、あったかな?と考えていると、ふわっと美味しそうな匂いが、鼻をくすぐった。

お腹がグゥっと正直に鳴る。僕は、誘われるようにそのお店に入っていた。

 カランコロン
『いらっしゃいませ』
店主の優しい声が響いた。
お店の名前は【ひだまり】。なんともあたたかさがあって、落ち着く雰囲気だ。

メニューを開くと、まずパッと目に飛び込んできたのは、僕が恋い焦がれたお子様ランチだった。

思わず、店主に「あ、あのっ!」と声をかけてしまった。「お決まりですか?」店主はにこっと優しく微笑んだ。

考えなしに呼び止めてしまったことに慌てふためき、顔が赤くなるのを感じた。

どうしようか、頼んでしまおうか。

悩んでいると、店主が「こちら、おすすめですよ。【みなさまランチ】」と僕が見ていたランチを指差した。

 「えっ?【みなさまランチ?】お子様じゃなくて?」
「ええ。お子様はもちろん、みなさまに食べていただきたいランチです。新メニューなんですよ」


 僕は固く結ばれた紐が、するっと解かれたような気分だった。

「あの、【みなさまランチ】一つ、お願いします!」店主の目を見て、注文すると、「はい。かしこまりました。」とまた優しく微笑んだ。

出てきた【みなさまランチ】は僕の胸を高鳴らせた。

無題383

夢にまで見た憧れのお子様ランチ。ハンバーグにはデミグラスソース。サクサクのエビフライ。昔懐かしいチキンライス。

旗には可愛いロゴマークが飾られている。

僕は夢中でランチを食べた。この店では初めて食べるのに、なんだかとても懐かしくて、美味しくて、じんわりお腹と心が温まっていくのを感じた。

あっという間に食べ終わり、ふうっと幸せな息を吐くと、店主がかごを持ってやってきた。


「こちら【みなさまランチ】についているセットのおもちゃです。どれかおひとつ、お選びください。」

「えっ!おもちゃまで…!」

僕は子供のように、わくわくしながら、数ある袋の中から一つを選んだ。中に入っていたのは、車のおもちゃ。あのとき無くしてしまったおもちゃに、どこか似ていた。

胸が熱くなるのを感じる。祖父との記憶も思い出されて、僕は思わず、泣いてしまいそうになった。


 グッとこらえて、「美味しかったです。また食べきます!」と噛みしめるように店主に伝えた。
「はい。またお待ちしておりますね。」と笑顔で答える店主。

僕の彩りのない毎日に、一つ楽しみができた。

あたたまるには、ちょうどいいくらいの、ちいさいカフェ【ひだまり】

ホッとするどこか懐かしい【みなさまランチ】。

またきっと、食べに来よう。

車のおもちゃをぎゅっと握りしめ、僕は一歩を踏み出した。

おわり


みなさまランチの旗に、motohiroさんのアカウントのデザインをお借りしました。🙏

とても楽しい企画でした。最後までお読みいただき、ありがとうございます🌼

パピコクレ

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