111本目「ザ・ブレイキン」【ネタバレなし】

※本文は全て無料です。

新宿ピカデリーにて

公開日:2024/9/13
監督:ダニア・パスクィーニ、マックス・ギワ(イギリス)

幼い頃にブレイキンのパートナーだった兄弟トレイとベンジーは、ある事故をきっかけに不仲になってしまう。優等生のトレイは大学進学を目指して勉学に励み、ブレイキンに夢中なベンジーは父に反抗して家に寄りつかない。ある日、父の誕生日を巡って対立した兄弟はブレイキンで決着をつけることになるが、その様子がSNSで拡散され、世界選手権イギリス代表の選考会に招待される。厳しいトレーニングに耐えて最終選考に残り、兄弟の関係も徐々に改善し始めていた矢先、ある出来事がベンジーを襲う……。

https://eiga.com/movie/102005/

まえがき

パリオリンピックで種目に選ばれ、その後「次はナシかな」と言われている競技、ブレイキン。そのブレイキンをテーマにした映画も今年三作目(日本公開)である。

正直、タイトルとかビジュアルに惹かれるものがない今作だったのだが、「ストリートダンサー」「熱烈」とブレイキン映画が面白かったので、三匹目のドジョウ狙いでチケットを買ったのだ。

なんだかんだ言ってダンスは映画と相性がいい。インド映画の例を挙げるまでもなく、感情を肉体で表現する手段として優れてるし、キレのある動きはそれだけで華があり、退屈しない。ドラマ映画でありながら、アクション映画の様なエキサイトを加えることができるのだ。

さて、ブレイキン映画を観るのも今作で三本目というわけだが、私は未だにブレイキンのルールを知らない。これまでの二作はなんというか、オーディエンスの盛り上がりで勝敗が決まってる感じがあった。その分かりやすさが逆にいいのだが、本作はどうであろうか。ブレイキン映画は今後の定番になりうるのか?

感想など

地味。一言でいうと地味。

今年観たブレイキン映画の中で最も地味で、そしてストーリー的にも釈然としなかった。

「兄弟の確執と和解」「それぞれの成長」がテーマに設定されていると思うのだが、トラウマと成長ポイントが一致してない。
例えば兄の弱点(成長ポイント)は「独創性を発揮できない、フリースタイルが下手」なこと。しかし、弟との確執を産んでいたトラウマは「一人だけ大会に出て弟ともめ、その結果母が死んだこと」。
二つの要素に関連がなく、ドラマが滑らかに進行しない。「トラウマを乗り越えた先に成長がある」という王道展開が成立しないのだ。引っ掛かりを強く感じる。

その意味では「優れた兄への嫉妬から母を死なせてしまった」トラウマから、「周囲(特に兄)に対して過剰な競争意識を持ってしまう」弱点が発生した弟の方を主役に持ってきたら、滑らかにできたかもしれない。
しかし、この映画では弟は脇役である。最も成長した描写があるのに、兄との確執や高すぎるプライドを克服したのに、弟は全然報われてない。
キャラクターの成長と報酬が連動していないのは、ドラマとして非常に違和感がある。

ブレイキン映画ということで、ダンスシーンもあるのだが、これも地味。
圧倒的なパフォーマンスとジャンル、エフェクトでも魅せた「ストリートダンサー」や、繰り出す技がキャラクター性と連動しており、技の難度が分かる実況がついて盛り上げた「熱烈」と違い、この映画のブレイキンシーンは「なんかダンス上手い」くらいの感想しか抱けないのだ。

もちろん、出演者や競技者のレベルは相応に高いのだと思う。
でも、何をしてるのか、何がすごいのかを全く見せられてない。
「ストーリー上重要な意味を持つ技」が見えてこないし、そもそも「どう凄いのか」という解説がない。私のようなブレイキン素人から見れば、全員凄い動きなのだ。ストーリー上の勝敗や成長を理解する補助線が欲しかったし、それがないゆえにこの映画には地味な印象を持ってしまう。


ペーパーお勧め度

★2。
旬なテーマで、動ける人材をもってきてるのに地味に終わってしまった一作。脚本の練り込みもそうだし、演出面でも課題は多い。
主人公は兄より弟にするべきだったよ、絶対。

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