111本目「ザ・ブレイキン」【ネタバレなし】
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公開日:2024/9/13
監督:ダニア・パスクィーニ、マックス・ギワ(イギリス)
まえがき
パリオリンピックで種目に選ばれ、その後「次はナシかな」と言われている競技、ブレイキン。そのブレイキンをテーマにした映画も今年三作目(日本公開)である。
正直、タイトルとかビジュアルに惹かれるものがない今作だったのだが、「ストリートダンサー」「熱烈」とブレイキン映画が面白かったので、三匹目のドジョウ狙いでチケットを買ったのだ。
なんだかんだ言ってダンスは映画と相性がいい。インド映画の例を挙げるまでもなく、感情を肉体で表現する手段として優れてるし、キレのある動きはそれだけで華があり、退屈しない。ドラマ映画でありながら、アクション映画の様なエキサイトを加えることができるのだ。
さて、ブレイキン映画を観るのも今作で三本目というわけだが、私は未だにブレイキンのルールを知らない。これまでの二作はなんというか、オーディエンスの盛り上がりで勝敗が決まってる感じがあった。その分かりやすさが逆にいいのだが、本作はどうであろうか。ブレイキン映画は今後の定番になりうるのか?
感想など
地味。一言でいうと地味。
今年観たブレイキン映画の中で最も地味で、そしてストーリー的にも釈然としなかった。
「兄弟の確執と和解」「それぞれの成長」がテーマに設定されていると思うのだが、トラウマと成長ポイントが一致してない。
例えば兄の弱点(成長ポイント)は「独創性を発揮できない、フリースタイルが下手」なこと。しかし、弟との確執を産んでいたトラウマは「一人だけ大会に出て弟ともめ、その結果母が死んだこと」。
二つの要素に関連がなく、ドラマが滑らかに進行しない。「トラウマを乗り越えた先に成長がある」という王道展開が成立しないのだ。引っ掛かりを強く感じる。
その意味では「優れた兄への嫉妬から母を死なせてしまった」トラウマから、「周囲(特に兄)に対して過剰な競争意識を持ってしまう」弱点が発生した弟の方を主役に持ってきたら、滑らかにできたかもしれない。
しかし、この映画では弟は脇役である。最も成長した描写があるのに、兄との確執や高すぎるプライドを克服したのに、弟は全然報われてない。
キャラクターの成長と報酬が連動していないのは、ドラマとして非常に違和感がある。
ブレイキン映画ということで、ダンスシーンもあるのだが、これも地味。
圧倒的なパフォーマンスとジャンル、エフェクトでも魅せた「ストリートダンサー」や、繰り出す技がキャラクター性と連動しており、技の難度が分かる実況がついて盛り上げた「熱烈」と違い、この映画のブレイキンシーンは「なんかダンス上手い」くらいの感想しか抱けないのだ。
もちろん、出演者や競技者のレベルは相応に高いのだと思う。
でも、何をしてるのか、何がすごいのかを全く見せられてない。
「ストーリー上重要な意味を持つ技」が見えてこないし、そもそも「どう凄いのか」という解説がない。私のようなブレイキン素人から見れば、全員凄い動きなのだ。ストーリー上の勝敗や成長を理解する補助線が欲しかったし、それがないゆえにこの映画には地味な印象を持ってしまう。
ペーパーお勧め度
★2。
旬なテーマで、動ける人材をもってきてるのに地味に終わってしまった一作。脚本の練り込みもそうだし、演出面でも課題は多い。
主人公は兄より弟にするべきだったよ、絶対。
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