1ヶ月健診後もビタミンKの投与を
小児科学会の「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の改訂ガイドライン」では以下のとおり推奨されています。
参照:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_110131.pdf
通常合併症をもたない正期産新生児へのビタミンKシロップ投与は、生後すぐと、退院時と1ヶ月健診時の3回です。
この投与でほぼビタミンK欠乏症は防げるのですが、その3回の内服のチャンスに嘔吐したりしてきちんと飲めなかった場合もありますし、
何らかの疾患で吸収不良になっている場合などもあり、まれに3回投与している子でもビタミンK欠乏を起こす場合もあります。
(※6年間で10例:ただし胆道閉鎖症や肝炎などの疾患を持つケースが多い)
まれなケースもカバーできるように、ガイドラインでは生後3ヶ月までビタミンKシロップを週1回投与する方法が紹介されています。
人工栄養にはあらかじめビタミンKが添加されていますので、人工栄養が主体(おおむね半分以上)の場合は1ヶ月健診後に投与を続けなくても大丈夫と思います。
そもそもどうして新生児にビタミンK投与が必要か?ということについてですが、
ビタミンKは体の中の凝固因子の一部であるビタミンK依存性凝固因子とよばれるものの生成に必要です。
ビタミンKが欠乏すると、凝固因子の欠乏により出血しやすくなる(止血しにくくなる)ことにより、脳出血や消化管出血をきたします。
母乳中のビタミンK含有量は少なく、個人差もありますし、ビタミンKは胎盤からの移行が少ないので出生時の備蓄も少ないのです。
よって新生児、とくに母乳栄養の赤ちゃんには出血性疾患を防ぐために補充が必要になります。
新生児の出血性疾患の予防、これがビタミンKを投与する目的です。
新生児期を安全に乗り切ることが目的ですので、もうすでに大きくなっていて投与時期を過ぎていたとしても、改めて飲む必要はありません。
1ヶ月健診以降に飲んでなくても、必要な時期を乗り切っているので問題ありません。
過去に、偏った考え方により医療機関でビタミンK投与が行われず、乳児が死亡するという事件がありました。
山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故です。
生後、退院時、1ヶ月健診時の計3回ビタミンKシロップを内服していれば、このような不幸な結果になることはほぼありません。
それを意図的に飲ませないという不自然な指導は言語道断です。
赤ちゃんのために必要なことを一つずつしていく、それこそが「自然な育児」なのだと私は思います。
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