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某都市にある第○小学校の裏には広大な森が広がっていた。○の中には数字が入る。地元の人は、第○小学校を略して○小と呼んでいた。
○小の森にはクワガタやカブトムシが沢山いて虫取りには最高の場所と噂されていた。
しかし、森の中は鬱蒼としていて昼間でも暗く、子供だけで入るのはとても危険なので、けっして○小の森には入ってはいけないと、先生に注意されていた。それに、他にもこんな理由があった。


○小の森を抜けると民家が何件かあるのだが、民家は森より低い所に建っていて、森の中から民家の風呂場を覗く変質者がでるのじゃ。
実はわしも変質者に出くわしたことがある。○小と森の横には道路があるのだか、かなり狭くしかも急な坂道になっている。わしはその坂の一番低くなっている所で、変質者に追いかけられたのじゃ!変質者は頭に変な被り物を着けていて、わしを見るなり「グワッー!」と大きな声を出すと、わしを追いかけて来たのじゃ!わしは坂道を死に物狂いで走りなんとか変質者から逃げたのじゃ。あまりの恐怖でしばらくはその道を通れなかったぞよ。

ある日、仲良しの友達T君がクワガタをとりに○小の森に入ろうと言うのじゃ。しかも昼間は大人に見つかって森の中に入れないので、暗くなってから行こうと言うのじゃ。
わしはすぐさま反対した、変質者が出るからやめた方がいいよ、って。
でも、T君は変質者が出たらバットでぶん殴るから大丈夫だと言うのじゃ(´・ω・`)
わしの忠告は無視され、1週間後に決行することになったのじゃ。

当日になった。
待ち合わせの場所に行ったらT君は既に来ていた。T君はバットを持ってきたが、ビニール製のバットだった。
わしはそんなビニールのバットじゃ変質者には勝てないと言ったのだが、目を攻撃して退治するというのじゃ(´・ω・`)
変質者に出くわさないことを祈って、二人は森の中へ入って行った。

30メートルほど森に入ったところで、T君がそこら辺の木を何度も蹴った。クワガタは木を蹴ると落っこちくることがよくあるのじゃ。
でも、一匹も落っこちてこなかった。
T君はどんどん森の奥へ進んでいった。わしはこれ以上奥に行って変質者に出くわしたらこわいので、T君に、
「ねーねー、クワガタはこの森にはいないみたいだから、もう帰ろうよ」
と言ったのじゃ。
しかし、T君は何かに取り憑かれたかのように、木を蹴りながら、さらに森の奥へ入っていったのじゃ。しかも歩くスピードがわしよりはやいのじゃ。わしは必死にT君のあとをついていったのだけれど、T君はかなり先へ行ってしまった。子供の感覚なので正確ではないかもしれないが、森へ入ってからもう数百メートルは歩いたぁと思ったとき、T君が、
「なんじゃこりゃー!」と大きな声をあげた。
わしは急いでT君のところまで走っていった。
すると、鬱蒼とした森の中に突如として木々のまったくない空間が広がっていた。
T君とわしは、月夜で明るくなっているその中へ入っていった。
50メートルほど歩いて立ち止まった。その空間はそこから右方向にも広がっていて、その先はまた森になっていた。
「あれは何だ?」T君が言った。
200メートルくらい先の森の中に白い物がいくつも見えた。
「なんだろうね?」とわし。
「行ってみよう」とT君。
二人で走って行った。
そこで二人が見た物は、まったく予想もしなかった白い物体だった。月夜に照らされた木々の枝に数えきれないほどの、ブラジャーや下着がぶる下がっていたのじゃ!
しばらく唖然としてその光景を見ていたが、突然背筋が寒くなった。これは絶対変質者の仕業に違いない、そして森の中からわしらを見ているかもしれんぞよ!
「ねぇ帰ろうよ」わしが言った。
さすがのT君もこの異様な光景に恐怖を感じたようで「帰ろう」と言った。T君とわしは早歩きで森の入り口へ向かった。
5分くらい経ったところで後ろから大きな叫び声がした。T君とわしはびっくりして一目散で走りだし、森の入り口を出て、○小の校門の前で立ち止まり、後ろの様子を確認した。
「誰も来ないな」T君が少し安心したように言った。
二人はそこから何も言わずにそれぞれの家へ帰っていった。

後ろから聞こえた声は、前に聞いた「グワッー!」という声と同じだった。

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