見出し画像

善き隣り人

●新約聖書の話
●善きパレスチナ人

新約聖書の話

イスラエルと言えば聖書の舞台バイブルランドです。 イエスキリストのたとえ話に“善きサマリア人”と言うお話があります。 このお話は新約聖書「ルカによる福音書10章25節から37節」に出てきます。

エルサレムからエリコに行く途中、強盗に襲われた人が道に倒れていて、3人の人が通りかかります。
一人目はユダヤ教の祭司。しかし、倒れてる人を見ると向こう側を通り過ぎた。 二人目はレビ人。彼も知らんふりして通り過ぎてしまった。 三人目のサマリア人は、この人に駆け寄り、介抱し近くの宿屋まで届け、宿屋の主人にお金を渡し、引きつづき回復するまで面倒を見ることをお願いしました。

この話の後でイエスは律法学者に対し「三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣り人になったと思うか」と問います。
律法学者は「その人に慈悲深い行いをした人です」と答える。
イエスは「あなたも行って同じようにしなさい」と言われます。

このお話は色々な解釈があるようです。 一般的に考えるなら、話の通り「困っている人を助ける」博愛的たとえと取って良いと思います。

当時のサマリア人はユダヤ人と犬猿の仲だったようです。 ですから、そんな忌み嫌われているサマリア人でも善い人はいて、怪我しているユダヤ人を助ければ、それはユダヤの教えの一つを「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」(レビ記19章18節)を全うし、永遠の命を得るのであるとイエスは言わんとしてるのだと思います。

画像1

善きパレスチナ人

2016年7月ヘブロン近郊、60号線オトニエルのそばで銃撃テロが発生しました。 テロリストの銃撃を受けたユダヤ人宗教家家族の車は横転。 現場付近を車で走っていたパレスチナ人家族は車を止めて、奥さんと二人の子供を車から救助します。

ラビ・ミヒ・マルク氏は即死。パレスチナ人のAさんは一人目の子供を救助し、自分の車に乗せ、奥さんが手当。 ユダヤ人がこのようなケースで攻撃を受け、まだ生きている事が分かると人質としてテロリストに拉致される可能性があります。

 このようなことが起きないようにAさんは生存者を保護し、イスラエル側の救急隊に送り届けました。

画像2

写真:銃撃後横転した車

これはまさに新約聖書に出てくる「善きサマリア人」のお話とリンクします。 しかし新約聖書にはこの後の事は書かれていません。 今回このヒーローのAさんの近況をニュースで取り上げ、その事実に驚愕してしまいました。

イスラエル側からは、“模範市民の賞”を貰う事になり拍手喝采を受けますが、その後彼を待っていたのは地獄の様な日々でした。 Aさんはパレスチナ人でありながら、ユダヤ人を救助したことで、自分の町で村八分に合い、 更には命を脅かされるようになります。 自宅に同胞であるパレスチナ人が入ってきて銃で撃ってきたり火炎瓶を投げ込まれたりしたそうです。

画像3

写真:Aさんと遺族の絆は深まっている(右側がAさん)

イスラエル人からはヒーローのAさんですが、パレスチナ社会では仕事が出来なくなり、脅迫される毎日。とうとうイスラエルに保護を求め、特別に イスラエル領滞在を認められるも、 奥さんと子供とは別れ離れ。2年半、毎日が生存をかけた現実。寝るところも食べる物も無い日も続いたそうです。 月1回、イスラエルとパレスチナの検問所で奥さん子供に会えるAさん。

画像4

写真:検問所で月一回しか会えないAさん家族

奥さんは「あなたの愛が欲しい、側にいて欲しい」と懇願。 そして「この子にはお父さんの愛が必要なのよ」と。 別れ際には2歳の子供が泣きながらAさんから離れようとしない映像に、私も目頭が熱くなり、お なじ父親としてのAさんの苦悩や辛さが伝わってきました。

仕事をすることが出来ないAさんはテルアビブの公園にテントを張り、海で体を洗い、ゴミを漁っていると言います。 ニュースとしてAさんの事が知れ渡り、Aさん家族が一緒に安全にイスラエル領で過ごせるようにアクションを起こしているイスラエル人も出てきています。また、献金や服などを直接届ける人たちも現れました。

画像5

写真:Aさんが生活するテント

イスラエル・パレスチナと言う政治、領土、宗教が絡んだ複雑な人間模様。 ユダヤ人を助けたが為に住み家を追われ、迫害され、引き裂かれた家族。 良い人はパレスチナにもいます。悪い人はイスラエルにも日本にもいるでしょう。 もしも、私の目の前で同様の事件が起きた時に、Aさんのような行動をとれたのか。

今から70数年前、ユダヤ人はホロコーストと言うナチスドイツによる大虐殺に遭いました。 その時に命がけでユダヤ人を救おうとしたドイツ人やポーランド人、日本人もいました。 シンドラー氏や杉原千畝さんは有名ですが、善き隣り人が居たことを忘れてはいけないと思います。

Aさんに対する支援の輪は広がりつつあります。 今は、Aさん家族が一日も早く一緒に過ごせるようにと祈るばかりです。

ニュースソースはこちら

日本とイスラエルにおけるビジネスマッチングの架け橋に。ブログの内容やベンチャーマッチングのご相談はパンラエル株式会社まで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?