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2020コロナウイルス・イスラエル戒厳令、ロックダウンへ

イスラエルにもコロナウイルスが入って来てから約1ヶ月。

日を追うごとに感染者数が増え、保健省も感染阻止対策、検査への対応などに追われている。主にヨーロッパから戻ってきたイスラエル人感染者や、ちょうど3月9日プリム祭と重なったことが感染拡大に繋がってしまった。

日本に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号でイスラエル人が数名感染し、イスラエルに戻ってきた話しなど吹き去っていた。80年代の日本映画「ウイルス復活の日」の様相を呈してきたことに危惧を感じる。

写真1保健省

写真:保健省からの手洗い奨励

対応策

早くから対応策を取ってきた割にここにきて感染が拡大している事に対し、政府や保健省に対する批判が出ている。ただ世界中を見てもウイルスに対する情報不足、感染阻止の手段が異なり、医療崩壊したイタリアの死者数のニュースが人々を恐怖に追いやっている。

イスラエル保健省が現在参考にしている国は韓国の例だ。とにかく多くの検査を実施し、感染者を特定し、隔離してゆく。またイスラエル軍や諜報機関のシステムを使い感染者を特定、管理、また隔離違反者もテクノロジーで取り締まっている。この辺りはイスラエルらしい。

評価出来る点として、検査検体数を3/26日現在で1日当たり5240体まで可能にしている。海外からの検査キットや、もともとイスラエルのスタートアップで開発中だった物も投入してる。

弊社がコンタクトを取っているスタートアップでも現在15分検査を成功させている。

写真2コロナウイルス検査

写真:コロナウイルス検査

イスラエル最大の脅威

イスラエルの宗教的側面がこの国に最大の危機をもたらしている。他国でもそうだが、イスラエルではユダヤ教徒による保健省の指示の無視である。 オーソドックス系宗教家はまとまった居住区に住んでいる。エルサレムであればメア・シェアリーム、テルアビブ近郊のブネイ・ブラクだ。

彼らは通常通り日々の生活を送り、最低3回はユダヤ教の会堂であるベイト・クネセット(シナゴーグ)に行く。ユダヤ教は出身地やコミュニティーからいくつもの流派に分かれているが、行動原理の指針はそのトップに立つラビの発言となる。

ちなみ10人までの集まりは可能と言うのはユダヤ教に忖度したものだ。ユダヤ教には、【ミニヤン】と言う祈祷の最小集団単位があるが、この既定の最低人数が10人だからだ。

写真3ユダヤ教徒

写真:ユダヤ教徒の集まり

追加措置で「大人数での集会の禁止」が出たにも関わらず、会堂での祈祷や伝統的結婚式が行われ、イスラエル社会に衝撃を与えた。彼らは「ベイト・クネセットに行けないなら死んだ方がマシだ!」とうそぶく。3/25日からの措置に対しても彼らのモラルと各派の指導者に掛かっていると言っても過言ではない。

また南テルアビブの様な地区にいる不法外国人労働者やスーダン、エリトリアからの政治難民も問題の種となっている。保健省の措置をたびたび無視し、警察が出動する騒ぎになっている。

喫緊の脅威は、4月8日のペサハ(ユダヤ教・過越し祭)、24日のラマダン(イスラム教・断食月)だ。ユダヤ教アイデンティティの中心でもあるこのお祭りでさらにオーバーシュートを起こすことが懸念されている。

写真ベングリオン空港2

写真:ガラガラのベングリオン空港

経済破綻

3月1日から色々な制限措置がで始めた影響は、直ぐにイスラエル経済市場に影響した。特に観光業界に付随する航空、ガイド、バス、ホテル、レストランは大打撃だ。

3/1~18日の時点で失業者が24万人。3/24日で失業者が55万人。無償休暇になった人も3万人。幾度も戦争を通ってきたイスラエルでも、倒産と失業者がここまで出た事は無い。

26日現在で、失業者が72万人、失業率21.2%、90%が無償休暇。 25日だけで、3万8千人が追加された異常事態。コロナ危機の前に失業していた人が16万、合計すると88万人になる。

4月に国が支払う失業手当予想額が、900億円を超える。コロナが収まっても経済的に死を迎える人がさらに増えるだろう。

写真5完全封鎖

写真:完全封鎖に向けて準備が進む

ロックダウンへ

24日の緊急閣僚会議ではネタニヤフ首相は、「最悪のシナリオは100万人の感染、死者も10万人になる」と言い始めている。

元保健省TOPのDr.バルバシュ氏は、このままだと4月末までに8万人の感染者が出ると予測。いずれにしても数字的にイスラエルの医療崩壊をまねくと言われている。

現在イスラエルにあると言われている人工呼吸器は2300台。海外からの手配も世界的な状況でまず無理だろう。感染者数がこのまま増えれば人工呼吸器が足りなくなり、医療機関の機能が停止するだろう。

一縷の望みは、やはりイスラエルスタートアップで、緊急時用人工呼吸器を開発している彼らに掛かっている。すでに海外からの注文が1500くらいあると言うが、イスラエル軍からのオーダーを優先して1000近く用意出来ればと言っている。

25日夜の首相記者会見で「状況が好転しなければ、完全閉鎖に移る」と言っていた。個人的見解では3月29日にロックダウンに入ると考えている。28日はユダヤ教安息日シャバットなので早くてもシャバット明けの28日夜だろう。

すでにイスラエル軍は、完全閉鎖に向けた部隊整理に入っており、警察と連携していくとメディアでも報道済みだ。食料の入手が困難な老人らには軍やボランティア団体が支援体制を整えている。

この数日中に戻ってくるニューヨークのユダヤ人達は、エイラットの空港に降ろされ、エイラットと死海のホテルでの隔離が決定している。

写真6ネタニヤフ首相

写真: Stay home 市民に訴えるネタニヤフ首相

ネタニヤフ首相の言葉

「私達にとってこれは大きな試練の時だ。今日までに多くの手段を講じてきた。しかし、これに関して充分という事はない。感染者は日々増えています。どうぞ家に待機してください。命を守る為です。皆さんの厳重な自制をお願いします。経済的な支援プログラムも用意しています。皆さんが経済的に窮地にある事は十分知っています。私の心に突き刺さっています。しかし私たちの経済は強力です。必ず経済的な回復も出来ると確信しています。

すべてのこの戦いの前線にいる医師、看護師、医療機関、警察、軍、空港関係者に感謝と共に敬礼しています。あなた達が居なければどうなっていたことか。

市民の皆さん、ペスト、コレラ、スペイン風邪、そしてコロナは、歴史的感染症の仲間入りをしました。100年前がこれらの病気が猛威を振るった時に私たちの国は存在していませんでした。しかし今日、私達には国があります。私たちはこの状況をコントロール出来る状態にあります。運命は私たちの手の中にあります。新しい世代が私たちを見ています。試練の時にどう立ち向かったかを学ぶことでしょう。個人の義務、そして国民としての義務です。

新しいイスラエルの歴史の1ページを踏み出しましょう。それぞれ思う事があるでしょう、しかし私たちは一つの国一つの民です。ちょうどこの時期ニサンの月は、ペサハの故事を思わせます。このお話は私たちに力と希望を与えてくれます。先祖達はファラオも乗り越えました。厳しい戦いが予想されます、しかしコロナも乗り越えていきましょう。」


写真7ユバル_ハラリ

写真:ユヴァル・ノア・ハラリ教授   

『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリ氏は言う。今回の危機の現段階では、決定的な戦いは人類そのものの中で起こる。もしこの感染症の大流行が、人間の間の不和と不信を募らせるなら、それはこのウイルスにとって最大の勝利となるだろう。人間同士が争えば、ウイルスは倍増する。対照的に、もしこの大流行から、より緊密な国際協力が生じれば、それは新型コロナウイルスに対する勝利だけではなく、将来現れるあらゆる病原体に対しての勝利ともなることだろう。


第二次世界大戦中ホロコーストを味わったユダヤ人。その時彼らには国は無かった。助けてくれる国もなく、600万人が殺された。2000年前イスラエルの国が滅びた時、スィヌアット・ヒナム(不当な憎悪)と言って、ユダヤ人同士が憎しみあった事が国の崩壊を招いたと言われている。

国が再興され70年、建国以来最大の危機に対して、憎しみが横行するイスラエルでもう一度人々が団結し信頼を回復できるかが、ココを乗り越えるカギとなるだろう。

― 3/26 ツチダエリヤ

写真8パロディ画像

写真:トイレットペーパーを買い求めるパロディ画像


◆時系列
2/16 プリンセス・ダイアログ号のイスラエル人3人の感染判明
2/19 イスラエルでPCR検査15分デバイス開発
2/20 隔離措置違反者に対する厳罰決定。最大で禁固7年
2/22 韓国人旅行者グループの感染が韓国帰国後に分かり、イスラエルで の隔離措置開始
2/23 日本、韓国からの一時的に入国を禁止。
2/24 対象国帰国者14日自宅隔離措置
2/27 イタリアから帰国イスラエル人陽性反応No.3、No.4
2/28 日本PD号から戻ったイスラエル人陽性反応No.5
3/04 ヨーロッパ諸国も入国拒否対象国に、保健省アプリCoronAppをリリース
3/09 イスラエルへ入国する全ての渡航者14日間自宅隔離措置発表。
3/12 全ての国境(空港を含む)において、全ての外国人のイスラエルへの入国拒否
3/15 全ての教育施設の閉鎖、飲食店の営業中止、娯楽施設の営業中止。感染者213人
3/17 追加措置 行動制限公共施設への訪問は禁止、公共交通機関の運行制限。感染者337人
3/19 モサドが10万のコロナウイルス検査キットを入手
3/21 イスラエル最初の死者 感染者883人 / 死者1人       
3/22 感染者1071人 / 死者1人3/23 感染者1442人 / 死者1人
3/24 1日で488人の陽性を確認
3/25 追加措置 自宅から100m範囲外出 感染者2369人、死者5人
3/26 感染者2,666人 死者8人
3/27 サマータイムへ(26日夜中2時に時計を3時)     

◆その他情報
イスラエルへのフライトは3/26のアエロフロート、3/27のトルキッシュ、3/28のブリティッシュエアウェイズが最後の様です。

◆3/25追加措置を違反した場合の厳罰(1シェケル=約30円)
●追加指示無視の場合 500シェケル(15,000円)
●商店の義務の不履行 5000シェケル(150,000円)※来店客も500シェケル(15,000円)
●隔離措置違反の場合 5000シェケル(150,000円)
●集会の禁止の違反 3000シェケル(90,000円)

◆コロナマップhttps://imoh.maps.arcgis.com/apps/webappviewer/index.html?id=20ded58639ff4d47a2e2e36af464c36e&locale=he&/

◆保健省アプリCoronApp  https://apps.apple.com/il/app/coronapp/id1500189423

◆イスラエル保健省のコロナ感染者ナンバー追跡情報https://www.health.gov.il/Subjects/disease/corona/Pages/press-release.aspx


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