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Google社でのPA(ピープルアナリティクス)への取り組み事例 Into the Weeds #1

2020年より新シリーズ・Into the Weeds(イン・トゥ・ザ・ウィーズ)を始めることにしました!
In the weeds とはもともと「生い茂る雑草の中」の意。つまり、必要以上の詳細に入るということです。

本シリーズでは本編HRproに載せきれなかった裏ばなしや誰も知りたくない詳細を、まさに雑草をかき分けるように掘り下げお伝えしていきます笑。
雑草の中にも綺麗な花があるように、あなたの役に立つ話も(きっと)見つかるでしょう。


今回の記事は、12月2日にHRproにて公開された内容について、当社CEOの小川高子にインタビューしてまとめたものです。

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元記事(企業に眠る “人データ” を活かし組織の可能性を最大化する~パナリット・ジャパン(1))の趣旨は人事データを俯瞰的に捉える重要性と、難しい分析でなくてもインパクトは出せる、ということ内容でしたが、文字制限の都合上実際にどうやってリファラル数を圧倒的に増やしたのかは触れられていませんでした。
この記事では、そのプロジェクトの裏話をお伝えします。

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もともと小川がデータに基づく人事に興味をもったきっかけは、Google Japanの採用部に転職したことだと話しています。その前にいた企業では当時、まだ人事データは整備されていませんでした。

“人事の業務は採用広報やセミナー運営、面談など、多様なデータを収集できるにも関わらずそれを行うためのインフラがなく、振り返り分析なども部分的なデータを使うにとどまっていました。といってもこれは珍しいことではなく、人事をデータでアプローチするという考えは異端、人事は経験による直感と偏見がまだまだ根強かった時代だったのだと思います。”

それが2011年のGoogleはどうだったかというと、すでに従業員の採用経緯、過去の職歴、年齢、国籍、性別、給与、社内での移動履歴や各部署での評価、さらには過去に受けた研修内容などあらゆるものがデータ化されており、一箇所にまとまっていました。Googleでは2006年前後からピープルアナリティクス(PA)の整備が始められており、決して使いやすいツールではありませんでしたが、人事が必要に応じてデータにアクセスできる形にはなっていました。

データが実務担当者の身近にあることによって、例えば行ったことのない外国のオフィスの現状が知れたり、数年ぶりに面接に来てくれた候補者へ適切な対応が取れたりと、人事部にとっても、対象となる従業員や採用候補者にとっても、効果的に業務を行うことができました。


あるとき、当時アジア6ヶ国をあげて取り組んでいたリファラル採用に着目して、深掘りしてみることにしました。難しいものではなく、まずは各国の年間リファラル数を年間平均従業員数で割り、各国のリファラル採用に対する従業員のエンゲージメントを数字で捉えようとしたまでです。

“きっかけは単純で、「これだけのデータがあればなにか見つかりそう!今までの偏見にとらわれない人事施策の提案ができるだろう」という軽い気持ちで、データいじりを始めました。”

すると、面白いことがわかりました。単純なリファラル数だけを見ると、日本はオフィスの規模が大きい分健全に見えていましたが、1人当たりの数に換算すると、日本のリファラル数はインドやシンガポールの5分の1、その他諸国と比較しても3分の1にすぎなかったのです。

これは大きな差です。改善することができれば確実にインパクトを出せると思い、日本の採用チーム一体となりリファラル採用改善のプロジェクトを立ち上げました。

まずは従業員インタビューやアンケートから、原因の特定を試みました。日本オフィスの従業員のリファラルに対する積極性が低い原因は、
・紹介しても受からない可能性が高いので、その後の人間関係に響くのではないか不安
・募集要項が不明瞭で、どの職種に紹介すればいいのか分からない

という2つの懸念が特に重要そうでした。

そこで、「リファラル同窓会」という社内キャンペーンを打ち出しました。「リファラル同窓会」とは、任意で集められた従業員を出身企業ごとのチームに分け、1時間で最も多くの紹介をしたチームに「人事がスポンサーする飲み会(同窓会)」をプレゼントするという趣旨のキャンペーンです。また、キャンペーン前に現在募集しているポジションの職種が具体的にどのような仕事内容で、どのようなスキルを持った候補者を求めているかの説明を、採用担当よりプレゼンしました。

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ここでのポイントは、個人でなくチームでリファラルすることにより、誰かが「XXさんはどうだろう?」と提案した時、同じ企業出身の人がその場で「すごく向いてると思うよ!」だったり「いやいやその人だったらきっと、あっちの職種の方が向いているよ」とフィードバックをし合い、より自信を持ってリファラルを行えるようにしたことです。また各職種の求めるスキルを事前に明確にすることも、紹介のハードルを下げました。
さらに、紹介者とリファラルの関係に配慮し、コンタクトは必ずしも紹介者本人から取らなくてよく、人事部から連絡するか本人から連絡するかを選べるようにしました。

このキャンペーンの結果、Google Japan の採用チームは1 週間で前年約半年分のリファラルを獲得することに成功しました。最も紹介数の多いチームは、1時間で300人以上の紹介を行なったとか。それまで1年間の平均紹介人数が従業員あたり0.8人だった日本は、一躍他国に追いつきました。また参加者からは「元競合だった企業(の他のチーム)のリファラル数がキャンペーン中グラフで見れたので、つい競争意欲を引き立てられ真剣にリファラルに協力しました笑。」という声もあったということです。

さて、このような施策ができたのは、ひとえに仮説を立てる上で重要なデータが整備され、実務担当がアクセスできる状態になっていたからです。
PAに取り組んでいない会社では往々にして他の部署・支店の状態がわからなかったり、、採用や評価に主観やバイアスが混ざった客観性に乏しい判断をしていたり、大きなチャンスに気づかずに日々の作業を行なっています。しかしPAに取り組むことで、はっきりとした根拠に基づき戦略的にインパクトのある施策が打ち出せるようになります。


マーケティングが市場データや顧客データを扱うように。経理が財務諸表を読むように。人事も組織を知るためにデータを使いこなせるようになれば、人事という職種のあり方が変わると思う、そう小川はインタビューで答えていました。正しく現状把握ができれば、あとは工夫次第でどんな施策も組織改革も可能になります。


まずは人事データを使える形に。手近なところにあるデータにも、ダイヤモンドの原石が眠っているかもしれません。


今後もInto the Weedsシリーズでパナリットの色々なこぼれ話を紹介していきます!

元記事(企業に眠る “人データ” を活かし組織の可能性を最大化する~パナリット・ジャパン(1))

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