シオリーヌ

性教育YouTuberが考える、これからの時代の性のハナシ

望まない妊娠をして中絶をする10代の女の子たちは年間約1万4000人。
もし適切な避妊について学ぶことができたなら、アフターピルをもっと簡単に手に入れることができたなら。
性的同意についての認識も日本ではまだまだ進んでいない。そのために望んでもいないのに誰かを傷つけてしまったり、傷ついてしまう人がいる。

少しでもそんな状況をなくしたい、セックスについて安心して知ることができるようにしたい。そんな思いで、自身の助産師としての知識や経験を存分に発揮しながら情報を発信しているのが、性教育YouTuberシオリーヌさんだ。

そんな彼女と一緒に、これからの時代の性教育のあり方を平成の性教育を振り返りながら考えてみた。

(インタビュー:合田文伊藤まり

まり:小学校から中学校にかけて、少しずつ性のことについて興味がわく人が多いと思いますが、学校の性教育では知りたいことを全然教えてもらえませんでしたよね。

シオリーヌ:そうなんです。身体の仕組みについては教えても、セックスそれ自体については触れられなかったし、避妊方法や性的同意など若者にとっても大切なことが抜け落ちちゃってましたよね。

あや:学校では受精の仕組みは教えてもらったけど、その先は「大人になってのお楽しみ」って言われた(笑)。好奇心で辞書で「セックス」と調べても「性別のこと」って書いてあって、あれ〜あんまりエッチじゃないぞ!期待してたのと違う…って思った記憶があります(笑)。

まり:そう、私も精子と卵子が受精してってことを聞いた時に、そもそもどうやったら精子と卵子は出会うのか…?大人はパンツの交換をしてるのか…?ってめっちゃ疑問でした(笑)。結局は友達に聞いたか、エロ本で知ったと思いますが…。

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シオリーヌ:パンツの交換!それは斬新(笑)。でも確かに今って、興味を持ってもアクセスできるセックスの情報はAVだけ、みたいな状況なんですよね。AVは全然教科書にはならないのに。あるAV監督さんは「日常では実際にすることが難しいような状況や体勢でのセックスを見せるのがAVなんだ」とおっしゃっていました。AVが18禁なのも、フィクションだと分別のつく年齢だよね、ということだし。でも現状では、セックスについて興味がムクムク湧いていくる年代でアクセスできる情報がAVしかない。これってすごく問題だなって思います。

まり:それにAVでは"痴漢モノ"とかが一つのジャンルとして成り立っているじゃないですか。痴漢って完全に犯罪なんだけど、まるで嗜好の一つとして扱われている。性暴力がエンタメとして消費されすぎていて、知らず知らずのうちに被害を受けてる本人も「大したことない」って受け止めようとしてしまったり「痴漢ぐらいで」って性暴力の矮小化に繋がっているところがあると思います。

シオリーヌ:AV俳優さんとかと「そもそも"痴漢モノ"って名前がよくないよね」って話したことがあります。せめて"性犯罪モノ"とかにすればそれがフィクションだとわかりやすくなるから、真に受けないようになるんじゃないかなって。

あや:確かに!犯罪ドラマとかもあるけど、中で起きていることはフィクションだとちゃんと認識できていますよね。そういう名前の付け方は大事かも。

まり:そう考えると、シオリーヌさんみたいな方が性について情報を発信して若者に伝えていくのって、すごく大事ですよね。

シオリーヌ:YouTubeは今年の2月に始めたんですけど、それ以降中高生からの連絡がめちゃめちゃ増えて「こういうこと学校で聞いたことなかったけどちょう大事ですね」ってコメントをくれるんです。SNSなどを通じて個人の声を発信しやすくなったことで、最近はセクシュアリティや性についても発信する人が増えてるじゃないですか。今までは書籍だったりテレビだったり新聞だったり、誰かの規制がないと発信ができなかったけれど、各々が感じていることをストレートに言えるようになってきたので。

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シオリーヌ:その影響か、最近は親御さんの意識もすごく高くて、子育てサークルに呼んでいただいて性教育やセクシュアリティなどについてお話をする機会も増えました。言えなかった人が言えるようになったことで、今まで触れられてこなかったことの大切さに気づく人が増えてきたのかな、と。

あや:確かに、平成で一番変わったことの一つにインターネットの発信の仕方がありますよね。ブログや掲示板から始まって、今は普通の人でも突然バズる可能性がある。そういう意味でSNSの発達はポジティブな影響を与えてる部分があると思います。

シオリーヌ:ただ一方で、情報格差がかなりできてしまっているとは思います。私がYouTubeで発信を始めたのはそこも大きいです。だって、そもそも情報を集めようとする人はアンテナが立ってるから、私が動画で発信しなくても学んで行けるので。だからこそ、エンタメついでにちょっとためになる話が聞ける、みたいにハードルを下げて伝えていく必要があるんですよね。関心のない人にも見つけてもらえる場所に自分から出ていくことって大事だなって。

まり:そういう意味で、やっぱり義務教育などを通してきちんと学べるって大事ですよね。でもなかなか学校のシステムを変えるのは時間がかかります。私たちの時代からは10年以上たってますが、最近の現場の雰囲気ってどんな様子ですか?

シオリーヌ:教育現場も少しずつ変わってきましたよ!例えばHIVについて勉強する時には「コンドームが感染を防ぐうえで有効です」と教えることになってるんですけど、そのコンドームがどこで買えて、いくらぐらいで、どうやって使うかってことは「教えないでください」って言われていたんです。だけどここ1〜2年で、そこまで話して大丈夫と言ってくれる学校が増えてきたという印象があります。
あと私たちの時って、女子だけ集められて生理のことを教えられませんでしたか?だけどそれも、最近はお互いの身体のことをわかっていた方がいいよねという意識も高まってきて、男女一緒でやるってところも増えています。

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シオリーヌ男の人にはこの知識!女の人にはこの知識!ってわける必要はないんですよ。人間が成長していくと体がどう変化していくのかってことは一般常識として普通に学んでいいのだと思います。

まり:それは励まされますね。平成時代はジェンダーフリー教育の盛り上がりとそれに対するバックラッシュもありましたが、性教育はその影響をどう受けましたか?

シオリーヌ:七生養護学校(現在の七生特別支援学校)のことがきっかけですよね。七生養護学校では、知的障がいを持っている子どもたちが性暴力の被害者にも加害者にもならないように、先生たちは熱意を持って性教育に取り組んでいたんです。それぞれの子どもの理解度に合わせて人形や本を使ったり、歌を作ったり、とにかく創意工夫を凝らして。それが、とある区議会議員さんの指摘によってスキャンダラスに報道されてしまって「ここはアダルトショップか」とバッシングされたという事件が2003年にあったんです。

まり:本当に酷い話ですよね。性教育に真摯に取り組んでいた先生たちを槍玉にあげて、必要な性教育を奪ってしまったという。

シオリーヌ:当時の報道では「過激性教育!!」と煽る感じのものが多くて、世論としても学校側を批判する人が多かったんです。でもそれから15年たって、世間の受け止め方は大きく変わりました。昨年は足立区の中学校に対して、授業で中絶・性行為・避妊を扱うのは過激すぎるんじゃないかという指摘があったんですけど、その時の世論の反応は15年前と全然違った。「中学校で教えるの大事じゃん」とか「これが過激とかはないでしょ」という声が多くて、世間の風向きが変わってきたな、と実感しました。

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まり:それはすごく励まされますね。今まで頑張ってきた人がいて、今もシオリーヌさんのように頑張っている人がいるから変わってきたことだと思うし。

シオリーヌ:こうやってSNSやYouTubeで性について発信していると「よくそんなはしたないことを言えますね」と批判されたり、わざわざ自分の男性器の写真を送りつけられたりします。女の人が性について発言すること自体もまだまだタブーなんですよね。でも、自分と相手の身体を大切にすることに、女も男も関係ないですから。
だから私はそういう空気を変えていきたい。今の社会に問題があること、気づけば気づくほど、私の活動で何が変わるんだろうって落ち込む時もあります。だけど最近は性教育に関しても頼もしい仲間がたくさんいるから、お互いに力を合わせて一歩一歩新しい時代に向けて進んでいきたいと思っています。

確かに性について知りたいと思っても、恥ずかしい気持ちや後ろめたい気持ちを感じてしまう時はある。だけど性教育は、決していかがわしいものでもタブーでもないはずだ。
自分の身体を大切に、そして誰かの身体も大切にする。そのために必要な知識を明るく楽しく伝え続けるシオリーヌさん。
彼女の目線の先には、新しい時代の性教育のあり方があった。


シオリーヌさんのYouTubeチャンネルはこちらから。

(撮影:星野泰晴

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