告白

女性の私が、メンズオーダースーツをつくってわかったこと

キュッと絞られたウエストに丈の短いジャケット、コツコツと音を鳴らすハイヒール。

女性として違和感なく生きてきたのに、私にとってレディーススーツはなんだか”自分のもの”ではなかった。これから”女性として”ではなく”ビジネスパーソンとして”面接官に会いに行くのに、面接会場に向かうときに”女性らしさ”を着て歩いているような気持ちになったことを覚えている。

普段から特定のジェンダーを感じさせないアイテムを身につけるのが好きだった私は、そんなわけで、スーツを長年着ていない。

そんなときに、DMが一通届く。

「メンズパターンで、オーダースーツを作ってみないか」という、お誘いだった。

(レポーター:合田文

メンズパターンで演出する”らしさ”

残念なことに多くのファッションアイテムはメンズとレディースのみ展開されていて、そこにはたとえば「男性として生まれ、男性の体型であれば男性らしいメンズの服を選択し、違和感なく着るであろう」という、誰かを”居ないこと”にしてしまうような残酷さがあったりする。

当然ジェンダーとは男と女の両極端ではないし、その狭間にさまざまな、そして素敵な、”らしさ”が存在している。

お声がけ頂いたFABRIC TOKYOは8/25〜8/31限定で、女性がメンズパターンを使ってスーツを作れるイベントを開催する。

今回は「自分のことを女性だ」と感じている方のための採寸イベントだが、今までほとんどすべてのオーダースーツ店が門前払いにしてしまっていた”女性客”が、メンズパターンで自分に合ったオーダースーツを作る機会を選択できるようになるのだ。

そんなふうに選択肢が広がっていき、メンズパターンを用いることで、はじめてしっくりくる”自分のスーツ”を持つことができる人が増えるかと思うととても素敵だと思ったので、早速表参道にお店をかまえるFABRIC TOKYOにお邪魔した。


自分にぴったりの生地を選ぶ

合田:こんにちは〜

スタッフのおふたり:お待ちしておりました〜

お出迎えしてくださったおふたり。

①採寸を男性スタッフが担当することで与えてしまう不快感への懸念
②体型の違いによりお直しのリスクが増えてしまう製作上の懸念

という2つの点から今まで”女性客”を受け入れることを断念していたFABRIC TOKYOだったが、1週間限定のイベント期間中は全て女性スタッフが採寸を対応、体型のことに関しても懸念事項などに理解して頂いた上で採寸時間を長く設けることで対応するという。


合田:割と場所を選ばない、ベーシックなスーツが欲しいんだよな…。

スタッフ:それでしたら、グレーとかネイビーが人気ですよ。

早速、要望に近い生地を出していただいた。

着た感じを味わうために、直感で選んだネイビーの生地を胸元に合わせてみる。

スタッフ:これだったら柄もさりげないので、派手すぎないですよ。あ、いい感じですね!

合田:お〜、いい感じ。でも、たくさんあるし、悩むなあ…。

さまざまな色や柄をあててみたが、結局最初に選んだネイビーのものにした。既に縫製が済んでいるジャケットを確認できる生地もあるので、出来上がりが想像できないときはいろいろと見せてもらうこともできる。


自分にぴったりな、サイズを知る

合田:採寸、行ってきま〜す。

首周りから肩、腕、胸囲や腹囲など、テキパキと採寸をすすめていただきながら「たしかに私の場合は、採寸は女性にやっていただいたほうが気持ちが楽な気がする」と思った。そういえば高校の制服を作るときの採寸を担当してくださったのが男性で、思春期の私は少し恥ずかしい思いをした覚えがある。彼はもちろん悪くないし、丁寧に仕事を完了させて帰っていったのだが、”身体に触れる仕事”というのはときにセンシティブな問題の引き金となってしまうのだろう。

サイズの近いジャケットやパンツをあわせ、袖の長さやパンツの太さなどを、相談しながら決めていく。スタッフの方がそのときに聞いてくださったのが「どう着たいか」ということだった。

スタッフ:私は、結構太めに作ってダボっと着るのも可愛いと思うんですよね。ああ、でもかなりタイトなシルエットも流行っていて。本当にこれは、好みなんですよ。どういうふうに着たいか、ですね。

合田:どういうふうに、着たいか。

正直スーツを着る機会は少なかったので、どちらかというとスーツに着られてきた私が、今度は「どういうふうに着たいか」を考える。

合田:大人の余裕がある感じに着たいなぁ。ピチッとしているよりも、少し余裕があって、パンツのポケットに手がはいるくらいが良いかもしれないです…。

スタッフ:なるほど、でしたら少し余裕を持ってもうワンサイズ上のをベースに作ってみましょう!


自分にぴったりな、データを持つ

最後にタブレットを使って、ボタンの数やポケットの形を選択していく。刺繍も可能だ。何度もスーツを作っているスタッフのおふたりの情熱あふれるアドバイスにより、だんだん自分だけの一着ができてくることを実感する。完成までもう少しだ。

採寸したデータは保存され、いつでもマイページから確認することができる。2着目以降を注文すると、そのデータをもとにつくってもらえるので、最初の採寸さえしてしまえば好きなときにオーダースーツを購入できるというのも便利だ。

さて、これで注文は完了。私は45分程で終了したが、30分〜90分くらいは時間を確保しておくと良いという。

受け取りは約1ヶ月後。楽しみだ。

合田:ありがとうございました!

採寸が終わる頃にはすっかり打ち解けてしまったスタッフのおふたりに別れを告げる。


完成した、自分のためのスーツ

羽織ったとき、はじめてスーツを着て「自分のものだ」と思った。

しっくりと馴染むような、それでいて包まれているような安心感のあるジャケット。きつくもゆるくもない、ちょうどいいパンツ。

選んだ生地は聞いていたとおり派手すぎず、夏でも羽織れるような軽さ。

ポケットに手も入るし、座ってみても過ごしやすい。

自分らしさなんて、生きている中であまり意識することはなかった。

でも、今まで選択しなかった「メンズパターンでつくるスーツ」を選ぶことによって、自分もよく知らなかった”らしさ”を見つけることができたかもしれない。

選んでみてはじめて浮かび上がってきた”らしさ”との出会いに、わくわくしたオーダースーツづくりだった。

↑採寸イベント詳細はこちらから

(撮影:mina




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コメント2件

すごく素敵です!私も着てみたいです
来年から社会人ですが、本当はこんなスーツで就活したかったなぁなんて思いました。メンズスーツ、何故か憧れなんですよね
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