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"すべて"の人には、私も含まれる ー 同性婚訴訟が求めるものとは

先月2月14日、同性カップル13組が、同性婚が認められないことの違憲性を問うため、初めての訴訟を起こした。今回、この訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)の東京弁護団共同代表で、訴訟をサポートする「一般社団法人Marriage For All Japan - 結婚の自由をすべての人に」代表理事でもある寺原真希子弁護士(東京弁護士会所属)に、同性婚実現までの道のりと、この訴訟が持つ意義について、お話を伺って来た。

(インタビュアー:伊藤まり

同性婚は、絶対に実現する

伊藤:今回、勇気ある原告の方々と弁護団のみなさんで同性婚を求める訴訟を起こしました。すごくすごく応援したいと思いますが、実際のところ、今の日本社会で同性婚が実現する見通しはどれくらいあるのでしょうか…?

寺原:それは、絶対に実現します。

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伊藤:え!絶対!?弁護士さんに言われると心強いですが、どうしてそう言えるんですか?

寺原:それはもう理論的には絶対なんですよね。

伊藤:理論的に、絶対…。(どういうことなんだ…?)

寺原:一つの理由は、平等原則を定めた憲法14条です。同性が好きか、異性が好きか、それだけで結婚にまつわるたくさんのメリットを与えられるかどうかが区別される合理的な理由って、どんなに探しても見当たらないんですよ。異性カップルにしか結婚が認められない現状は明らかに不平等だから、14条違反となるわけです。海外でも最高裁はそのように判断しています。

もう一つの理由は、憲法24条が保障している婚姻の自由を侵害している、ということですね。同性カップルに結婚を認めなくても日本では人権侵害じゃない、などと理屈付けることはできないと思います。

伊藤:憲法24条ですが、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する」という条文の、"両性"という部分が同性婚の妨げになっているのでは、との意見がありますよね。

寺原:この条文では、「両性の合意のみ」の"のみ"が重要なポイントなんです。昔は、女性が男性より低い立場に置かれていて、"家"の一番偉い人が結婚を決めていました。でもそれはおかしいよね、ということで、結婚するかどうかは当事者2人の合意「のみ」で決められるということを憲法で定めたんです。あくまで趣旨は、個人の意思の尊重というところにあるのです。

伊藤:なるほど。だから理論的に、絶対に同性婚は認められるはずだ、と。

寺原:はい。だから、同性婚は絶対に実現されるべきもので、それが何年後なのか、というところだけが問題です。私は遅くても5年後だと思っています。

伊藤:5年というのはどうしてですか?

寺原:このような憲法に関わる訴訟は最高裁まで行くので、その判決が出るまでに4〜5年かかるんですよ。だから私たちは5年を区切りにしていて、そこで勝つ!

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伊藤:かっこいいです…!でも5年って長いですね。

寺原:でも、そのために逆算していくと、やらなくてはいけないことがたくさんあって、「長い」とも言ってられないんですよね。

伊藤:やらなくてはいけないことってなんでしょう?

寺原:それは、同性婚に関心のない人にも同性婚がいかに必要か、理解と賛同を広げていくということです。

実は、裁判所って、社会での理解や議論の程度、簡単に言えば世論の盛り上がりをすごく気にしているんです。裁判所が「確かに同性同士の結婚を認めないのは、違憲に近いな」と思っても、社会であまり議論が進んでいなければ、「まずは国会で議論してね」と、国会に委ねるという判断をすることもあるんです。だから、裁判所以外のところでも議論が深まっているということが必要で。

伊藤:なるほど。裁判所って、すごくクローズドで、一般の人ができることってあまりないのかと思っていました。同性婚訴訟のためのクラウドファンディングなどが立ち上がっていますが、裁判所に「世論が高まってるよ!」とアピールするには、他にどんな方法がありますか?

寺原:裁判の期日は誰でも見に行けるので、まずは傍聴をしていただいて毎回傍聴席を満員で埋められると、世間の関心がわかりやすく伝わります。
それと、もちろん来られない方もいるから、今私たちがやっているChange.orgの署名に協力していただくことも一つの方法です。署名はたくさん集まったら、裁判所に提出できるので。

伊藤:署名って裁判所に提出することもできるんですね!

寺原:そう。「多くの人が関心を持ってます」ということを形で見せられるし、何より、この訴訟が原告の方だけの問題じゃないこと、全国にいる同じ気持ちや境遇にあるけど声が挙げられない人達の代弁者なんだということを認識してもらえます。

伊藤:ただオンラインで署名をするだけでも、同性婚をサポートできるんですね。

寺原:あとは、最高裁が判決を出すときは国会の動向を必ずチェックするので、国会で法案を出してもらうことです。地元の議員に申し入れをしたり、同性婚をサポートする政党に投票する、ということもすごく大事になってきます。裁判で勝つということはわかりやすいゴールなんですけど、もっといいのは、判決よりも前に議論が盛り上がって法律ができちゃうこと。

伊藤:そしたら5年も待たずに同性婚ができるかもしれない、と。でも今の国会を見ていると、なかなか議論は進まなそうですよね…

寺原:民主主義は最後は多数決というところがありますからね。そこで裁判所の出番です。国会で少数者の権利が守られていないとなれば、人権の最後の砦である裁判所が「違憲だ!」と判断することになります。いずれにしても、裁判所以外のところで議論が高まっている必要があります。

同性婚で、結婚の概念を変えていく

伊藤:そうなると、いよいよ当事者ではない人たちとも一緒に盛り上げていくことが大切だと思いますが、他人事だと思ってしまう人も多そうです。

寺原:まずは、同性婚が人権の問題だという認識をもっともっと共有していくことだと思います。かわいそうな人に配慮する、だとかそういうレベルの話と誤解している人も少なくないんじゃないでしょうか。

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伊藤:確かに、結婚制度自体がどれくらい法律的、経済的、社会的に優遇されているか、ということを知らずになんとなく結婚する人も多いから、逆に結婚できないということがどれくらい問題なのか、ということもわからないのかもしれません。

寺原:そうですね、そもそも差別や偏見がある中でマイノリティの人たちが声を上げられない状況があるので、マジョリティの人たちはその問題に気づくことも、考えることもできません。今回の訴訟で、原告の方々が勇気を持って声を上げてくださったので、そういった問題が可視化できると思います。

伊藤:当事者の中でも「同性婚は必要ないよ」と思う方もいますよね。

寺原:誤解してほしくないのは、同性婚が実現したら同性カップルも結婚しなきゃいけなくなるのではなく、単に選択肢が増えるだけだ、ということです。同性婚が実現しても、結婚するかしないかはその人が選ぶこと。今はその選択すらできないですからね。今は過渡期なので不安になる方がいるかもしれませんが、ここを越えると、必ず住みやすい社会になります。

伊藤:結婚制度自体が、夫婦を特別に優遇するので嫌だ、という立場のフェミニストもいます。実は私も、戸籍制度に基づいた結婚制度には抵抗があります。

寺原:一番いいのは、結婚制度がなくても同じような保護が与えられて、シングルだろうがカップルだろうが、みんなが生きやすい社会だ、というのは間違いないと思います。でも、その実現にはそれこそ何十年と時間がかかりますよね。今の制度の中で、目の前に困っている人がいるんです。だから、将来的にそのような社会になって欲しいという思いが、今ある不平等から目を背ける理由にはならないと思うんですよ。

伊藤:確かに、その通りですね。

寺原:私もフェミニストなので、同性婚が成立したら、さらに結婚制度が強化されてしまうのではないか、という気持ちもすごくわかります。でも、私は逆に、そこに同性カップルが入ることによって結婚制度の概念そのものを変えていけると思っています。

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伊藤:結婚制度の概念…。

寺原:「結婚制度がいやだ」という感覚の元には、今でも結婚が昔の"家制度"と結びついているというところがあります。それに対して同性婚を認めるということは、結婚が"家"の問題ではなく"当事者"の問題だということに繋がると思うのです。

伊藤:なるほど。

寺原:私は夫婦別姓弁護団の一員でもありますが、選択的夫婦別姓を求めている人たちも同じ思いを共有していると思います。結婚すると9割以上の女性が名前を変えている。それは結婚したら女性が"相手の家に入る"という家制度の名残ですよね。それを嫌だと感じる人は、私も含め、たくさんいます。

伊藤:目の前の不平等を解消しつつ、結婚の概念をよりフラットなものに変えて行く手段だということですね。

寺原:そういうことです。この訴訟をやることで、そもそも結婚ってなんなんだろう、と問うことができるんです。それは別に、国のためにするものじゃなくて、当事者同士が幸せになるためのものですよね。別に子どもを産む必要もないし、異性間に限られたものでもない。当人同士が望んでするもの、ということが明確になると思うのです。

伊藤:そういう意味で、同性婚の当事者ではなくても、問題意識を共有できる人はぐっと広がるかもしれませんね。

寺原:私がいつも思っているのは、今回の訴訟は、原告の方だけの訴訟ではなく全国の声を上げられない当事者のための訴訟であるということ。それから、同性愛の方だけの訴訟でもないということ。家制度にとらわれていたり、社会にあるいろんな形の「こうあるべき」に苦しさを感じる人が多い中で、一人ひとりの個人を尊重しようという話ですから。

伊藤:同性婚を実現することが、みんなが自分らしく生きやすい社会につながるきっかけになるということですね。

寺原:はい。だから異性愛の人にも他人事だと思わないでほしいんです。そういう意味でも、異性愛の自分が弁護団の代表であることには意味があると思っています。

寺原弁護士は、1年ほど前、小学生のお子さんから、「男同士でも結婚できるの?」と聞かれ、こう答えたそうだ。
「今はできないけど、ママが絶対にできるようにするから!」

同性婚が実現すれば、同性どうしでも結婚できるんだ、同性を好きになることは何にもおかしいことじゃないんだ、というメッセージを社会で伝えることができる。そして同時に、私たち一人ひとりの選択が尊重される社会に近づいていくのだと思う。"Marriage For All"、その“すべて"は、文字通りこの社会に生きるすべての人のことなのだ。

(撮影:星野泰晴)

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