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【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】ある兄の追憶

 あれは、まだ俺たちがほんのガキの頃だった。

「あにうえ、どこに行かれるのですか」
「山の方。面白そうだろう」
「じいさまに叱られますよ」

 コンラートはませたガキでな。元貴族だった母親の真似をしてか、物心ついた時からやけに丁寧な喋り方だった。

「きょうかつされるかも」
「それ、厳しく叱るって意味の言葉じゃねーぞ」
「……! し、知っています! これは、その、たとえばの話です!」
「ほぉー? なんの『例えば』だ? そもそも、正しい意味が分かってるのかね、君ぃー?」
「わ、分かってますから! ちゃんと! あにうえこそ、本当に分かっているかあやしいです!」

 とはいえ、中身は年相応だ。まだ意味もわかってねぇような言葉をわざわざ使ったり、背伸びしたがる癖してガキっぽいところはとことんガキだった。

「良い子ぶるなら勝手にしとけ。じーさんのとこで、アリッサ達と遊んでろ」

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