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『愛していると言ってくれ』で夜に蝉が鳴くことを知る。

『愛していると言ってくれ 2020年特別版』が終わってしまった…
毎週日曜を楽しみにしていた広報の蒔苗です。

手話で紡ぐラブストーリー、手話サークルへの入会者が爆発的に増えたという伝説的な作品。

個人的な注目ポイントは、今回の特別版が「字幕つきで放送」されることでした。もともと「手話」の「字幕」が演出的についていましたが、テレビの字幕ボタンをオンにすればセリフ部分もすべて「字幕つきで放送」されるのが、はじめて!

※6/26追記
字幕はついていましたが、外付けのアダプタ(デコーダー)を経由していたためリアルタイムでないと字幕つきで観られなかった、という事情もあったそうです。今ではデジタル放送に字幕がついているので、録画でも字幕付きで観られます。


これって聴こえないひとは当時、セリフの内容が全くわからないで観てたってこと…?

友人たちに聞いてみました!

「録画を見終えまして、、、あー、やっぱり、字幕なしで見ていたんだなーと実感しました。
私は、、、第一話しか見てなかったのです〜!
おそらく、字幕なかったから続けてみる気になれなかったか、当時は残業していたから見なかったのかもしれません。」
「当時は字幕がなかったから聴覚障害者はほとんど見ていなかったんじゃないかな…
家族が通訳してくれたりとか、内容がわかる環境だったら、観てたかも」

そうだよね…

字幕ない ➡ 内容分からない ➡ 見る気にならない ➡ 見ない

当たり前のことです。私だって字幕なしの洋画を観たら、どんなに面白くても退屈を感じちゃいます。


じゃあ、はじめて字幕付きで観てみてどうだった?

「ろう者だと思ってたし晃次(こうじ)の音声ナレーションが入ると思ってなかったから、黄色の字幕、誰が喋ってるのかしばらく分からなかった」
「晃次の心のセリフがあるなら、イメージは全く変わりますよね」

テレビの字幕は色分けがあるのですが、ドラマは主人公が黄色の場合が多いです。メインで話す紘子(ひろこ)ではなく、聴こえない話せない設定の晃次が黄色だったのはびっくり!心のセリフやナレーションはセリフと違って口も動かないので、字幕がないとわからない。字幕があるからこそ晃次の本当の気持ちに気がつきました。

「主題歌に字幕が欲しい。ドリカムの挿入歌、どこで挿入されてるのか未だにわかりません…」
「オープニングに歌詞があるなら字幕がほしい!」

♫マークがでて、劇中音楽がかかっていることはお知らせされますが、どんな音楽がかかっているのかはわからない。「LOVE LOVE LOVE」がかかったときのクライマックス感は共有できていないのは寂しいです。

ところが、それ以上にびっくりするような話が出てきました。

「LOVE LOVE LOVEがこのドラマの主題歌だったと25年の歳月を経て初めて知った」
「友達がよくカラオケで歌ってたから知っていたけど、名曲!とテレビで放送があるたびに、知らないところで爆発的な人気になった不思議な曲…みたいな…」
「ドラマどころかテレビをほとんど見ていないし、聴覚障害が関係していることなんて知らないから、スルーですよね」

今になって、もしかしたら、友達は(このドラマの主題歌だから)聞こえない私と気持ちを共有できるだろうと歌ってくれていたのかもしれないのに、と思ったそうです。
なにそれ、切ないやん。。。

「聴覚障害者でも、字幕があればこのドラマを観る、っていうのは今回の放送で証明されたわけです」
「あの時、字幕がなかったから見てなかった、と言えるのは、今、字幕があるからなんですよね」

そのほかにも、「晃次みたいな聴覚障害者はいない(笑)」とか「手話監修の方の貴重な映像が流れた!」とか「あのシーンのあの演出って今じゃありえないよね」とか、たわいもないことを色々話しました。

字幕があるからこそ、こんなふうに一緒に語ることができるんだって、嬉しかったです。

「手話は字幕だけ?音声ガイドがないと視覚障害者にはわからないよね」

たしかに手話だけのシーンは無音。クライマックスのあの場面も波の音だけということか…。


そんなディープな情報保障トークのなか、みんなが一番食いついた話題が、

「セミの声の字幕が入ったよね!」

ってことでした。


ん?
どういうこと?

「夜、セミが鳴くってイメージない」
「セミ、、、夜も鳴くんですか!昼間のイメージですね!」

夜の公園の場面で「セミの鳴き声」という字幕が出たので驚いたということでした。


「セミは昼間鳴くものというイメージがついてる聴覚障害者、多いと思います」
「よく漫画で、暑い夏の日にセミの声、という組み合わせが出ますよね。あと、夏休みの絵も、蝉取りが昼間。なので、そのイメージ強かったかもしれませんね。」

セリフだけではなく演出の理解に必要な環境音は字幕になります。

このように、聞こえるひとに当たり前のことでも、字幕があることで、「音」の存在を知る、字幕が知識の入口になることもあります。

ろう難聴児の学校の先生が、「子供たちに字幕付き映画を見せたい、音の世界を知識として知っておいてほしいから」とおっしゃっていました。

また、聞こえるひとにとっても、字幕を通して、自分とは違う視点を知ることができます。それってとても面白い。

世界にはたくさんの「音」があって、
季節の移り変わりを「音」で感じることもある。
映画の重要な演出である「音」をどう表現するか。

私たちはいつもそれに挑戦しています。


最後に宣伝。パラブラが明日、6月25日から配信するドキュメンタリー映画5作品は、すべて字幕付きです。セリフだけではなく、自然の環境音をどう表現しているのか、作品によって多種多様です。ぜひチェックしてみてください!


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