赤ちゃんの好奇心MAPへの道③気づきを遊ぶ、全肯定キュレーション会!
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1010枚の気づきカードで好奇心リストを作る
今日参加するのは赤ちゃん研究所の皆さんとゲストキュレーターのお三方、+赤ちゃん研究所のデザインを手がけるSHIPYARDのくろかわさん、まいまいさんです。
ゲストその1は、赤ちゃん研究所のイラストやロゴデザインを担当しているデザイナーのゆいさん。まもなく2歳になるお子さんのお母さんでもいらっしゃいます。
ゲストその2はピープルで商品開発を担当している上金さん(うえかねさん)。普段はおもちゃを量産するための工夫を考えたり、おもちゃの安全性をどう保つかなどを考えているお仕事です。
最後のゲストは、ピープルで商品企画を担当している三井さん(みっちー)。新商品のネタをいつも探しています。
ピープルの社員さんの中でも、このプロジェクトの意義をすっと理解してくれそうな2人に声をかけてみたのだとか。
テーブルの上には、1010枚の「気づきカード」が積まれています。そしてその周辺をぐるりと取り囲むように「好奇心リスト」とペンが。
1010枚のカードはかなりのボリューム。リアルな「モノ」としてカードが置かれていると、つい手に取って読みたくなってしまう不思議さがありますね…。もしかすると、カード状のものって、人の好奇心を自然に呼び覚ましたりするんでしょうか?
こいたさんから、キュレーションの方法について説明がありました。
何枚かの好きな「気づきカード」を選び、カードについて感じたことを言語化して「好奇心リスト」に書いていきます。与えられた時間は15分。
無作為に選んだカードから共通点を見つけ出してみてもいいし、手に取った1枚のカードからイマジネーションを広げて、似たようなテーマのカードを探していく…というのもありです。
こいた:「全肯定キュレーション会は、赤ちゃんの行動の一つ一つに価値を見出す、テーマをつけるというのがポイントで、そこを楽しんでいただければと思います。
自分がこれをなんで面白いと思ったのか、これを見るための視点にはどういうものがあるのか、ということを言語化してみてください。
すべてを分類する必要はありませんし、選んだカードから自分なりに感じたこと、テーマなどを記入してみてください。15分間しっかり考えて好奇心リストを1つだけつくっていただいてもいいですし、20枚書いていただいても化会いません。終了後は、それぞれの記入した好奇心リストを読んで感想を話し合います」
(ゆるいルールですね~。でもこれなら肩ひじ張らずに参加できそう)
でははじめ~~、という声に合わせて、一斉にスタートです。
カード選びから表出する個性
一気に何枚かを確保して読みだす人(ほかの人にとられたくないのかな…?)。
1枚1枚、山からとっては戻し、とっては戻しを繰り返す人(出会いを求めているのね…?)。
さっさと書く人。
熟考する人…。
ここにかなりその人なりの好奇心が現れます。
そして、みなさんものすごく集中しています。確かにこれは面白そうです。
かのさんも書いてみてください、と誘われて、好奇心には逆らえず、私も1枚だけ書いてみました。これは大喜利っぽいし、気の利いたことを書きたくなる…。
どんどんみんなカードを手に取り、好奇心リストに書いていきます。
15分後、書きあがった好奇心リストは41枚もありました。
書き終えたあとは、お互いが書いたものを読んで回ります。
みんなどんなことを考えたのかしら…?
あー、こういう切り口!
この人の考え方、斬新…。
ワードがいいなぁ…。
好奇心を共有することでどんどんつながっていく気づき
感想の共有タイムで、口火を切ったのはこいたさん。
こいた:私は、『演奏者としての芽生え』がすごく面白いと思いました。
こいた:「『音を出す』というテーマの気づきはたくさんあるんですが、おもちゃってその芽生える瞬間のきっかけづくりになっているんだな…って思ったら、おもちゃメーカーの一人としてすごくうれしく思ったんですよね。出会いの瞬間。それに気づけるのはすごく貴重な経験です。それを言語化してもらえたら、お母さんお父さんたちもすごくうれしいだろうし。これは、たぶんおもちゃメーカーの人が書いたんだなぁと思いました」
正解!書いたのはピープルのうえかねさんでした。
うえかね:「ちょうど今社内で音に関する商品を担当していることもあり、こういう気づきになりました。
赤ちゃんは『何かを演奏する』というところまでは、なかなかたどり着かないものですが、『音を楽しむ』状況はたくさんあるなぁと日々実感しているところなので、『おお、ここにもいる!』と思ったんです」
きむら:「赤ちゃんは、自分の鳴らした音に『はっ!』と驚いたりしますよね。最初は気づいていないし、意図していない。でも『あっ、自分だった!』と気づくところが面白いです」
誰かに面白いと紹介された人が、次の好奇心リストを選ぶことになり、うえかねさんが選んだのは、「内側と外側を知る」という好奇心リストでした…おお、私が書いたものです。
うえかね:「赤ちゃんは、穴をほじったり、指を入れたり、『内側』に興味を持っているということを日々感じているんですが、でも内側だけでなくて、『外側』への興味もあるな…と思いました。取り上げられているカードが、口とか車とかいろいろあって、「外が気になる」のはどこの外だろう?って」
くろかわ:「これはすごくかのさんっぽいですね~。
対比で考えたり、構造化するのは、ライターさんならではという気がしました」
こいた:「内側と外側っていうのは、概念も含むんですね!」
自分が書いた好奇心カードに対して、それぞれの方が勝手に解釈をして、若干誤解もあるけれど、そこから世界が広がっていくのは、とてもおもしろくてこそばゆい感じがします。
きむら:「一番最初は「手」すら自分じゃないんですよね」
こいた:「自分という概念もそもそもない。境界線を知らない。世界がすべてつながっている」
「内側と外側」をきっかけに、哲学的な話にまで広がっていきます。すごい。
いじりたおされて、照れながら、私が気になったカードを紹介することにしました。
かの:「私が面白いとおもったのは「はじめての検討」です。「何かと何かを比べようと思った赤ちゃんのはじめて」に対する視点がいいな~と」
これは、SHIPYARDのまいまいさんの好奇心リストでした。
まいまい:「私にとっては、毎朝服を選ぶというところから『選択』なんですけれど、赤ちゃんは何かを選択するのだろうか…?と思ってそれを切り口にしたカードを集めました。リモコンとブラシで迷っているというのを見たときに、これはもしかすると『はじめて迷っている』なのかもしれない…!と感じて、”検討”としてみました」
きむら:「赤ちゃんなりの選択基準があるのってすごいな~って」
こいた:「”検討”というワードがいいですよね。
”比較”だと、こちらがいいとか、あちらは悪いというのがあるんですが、”検討”はそうじゃないんだなって思いました。検討しているだけ。こっちはざらざら。こっちはつるつる。赤ちゃんはどっちが好きとかじゃない」
はなむれ:「リモコンとブラシっていうあり得ない選択。検討しがいがあるのかも…!」
まいまい:「わたしが気になったのは『とりあえず味見』です。
『かみかみ』とか、なめたりしているのは、たしかに『味見』なのかも…と。
この好奇心リストを書いたのはゲストキュレーターのゆいさんでした。
ゆいさん:「わからない物体を、安全か安全でないかをみているのかなというのを”味見”と表現しました。
私は別の好奇心リストには”本能”と書いたんですが、生まれ持ってきた赤ちゃんの本能がおもしろいとおもっていて、味見もその本能の一つじゃないかと思ったんです。
あるものを触れていいのかどうか認識するために、とりあえず口に入れて、味わって判断するのかな?と思ってこう書いてみました」
はなむれ:「以前ワークショップで訪れたインドネシアは、衛生環境のこともあるのか、赤ちゃんがなにかをなめようとすると親御さんがストップするんです。なんでも舐められるのは、日本ならでは、なのかもしれませんね」
ゆいさん:「もしかすると、なめられるって贅沢なことなのかもしれませんね…」
こいた:「みっちーは?」
みっちー:「僕がおもしろかったのはひらいさんの、『まわし方のいろいろ』でした。
仕事柄『回す』という遊び方をよくみてきました。ピープルには「指先の知育」という商品もありますし。それで、回すというのは面白いことだと思っていたんですが、この好奇心カードを読んで、どんな風に回しているのか、実際に見てみたいと感じたんです。
赤ちゃんが、どういう風に指を使って回すのかな?とか。そういう細かいところを追求している感じが、自分の研究に沿っていて、どストライク。すごく刺さりました」
『回すのは楽しいよね。だからおもちゃに何か回すものをつけておきましたよ!』で完結してしまったらもったいないと。どう回すのが楽しいんだろうというところを、もっと突き詰めたいと思いました」
言葉選び・発想…さまざまな発見にあふれた時間
はなむれ:「私は『落ち着く居場所を選ぶ』がいいなと思いました。
気づきカードには、”好奇心がはじけている瞬間”のことを書きがちですが、そうではないことも書き溜めていきたいねとチームで話していて、その一つが”落ち着く”だと思うんです。
ワークショップの部屋は広いのに、気づいたら一人だけじゃなくて、みんなが一か所に集まっている。一人だけの好奇心だけじゃなくて、赤ちゃん全体を見ての気づきみたいなのもあるかもしれませんね。『ここが落ち着く場所なんだ!』とか」
きむら:「好奇心としては『積極的な動き』が目につきやすいけれど、いる場所とか、静的なこととか、どういう様子かというところにも好奇心のヒントはあるかなと思って書いてみました」
延々とわいわいがやがやが続きます。
まさに、赤ちゃんから得られた「気づき」をみんなでこねくりまわしながら、味わう時間。
参加したゲストキュレーターさんに感想を伺ってみました。
うえかね:「面白かった。皆さんの視点、視座が全然ちがう。こういう角度の考え方もあるのか!という発見がたくさんありました。非常に有意義な時間でした」
みっちー:「企画という仕事柄、自分がこの先調査したいと考えているテーマについて選んでみましたが、ほかの方のいろいろな発想に触れて刺激を受けました。自分では考えつかないようなアイデアやテーマの出し方でした。
もう一つ、面白かったのが『言葉の使い方』です。これも企画担当の視点なんですが、シリーズ名とか商品名をこんな風にみんなで考えてみたいと思いました」
ゆいさん:「うちの子はもうすぐ2歳になるのですが、0歳のときの記憶を引っ張り出しながら楽しむことができました。記憶を引っ張り出してきて、組み合わせるような、面白い頭の使い方をする時間でしたね。
先ほどの『インドネシアだと赤ちゃんはモノを舐めない』みたいな話も面白く感じました。お国柄や地域柄、職業柄みたいなのもあると思うんですが、そういう分類を日本全国や世界中でやってみると、その面白さも出てくるのではないでしょうか?可能性がたくさんある遊びだなと思いました」
この「全肯定キュレーション会」は、赤ちゃんから得た気づきで、自分の、そしてほかの人の発想を遊ぶゲームのように感じました。
一緒にプレイする相手によっても全く違う結果になるし、お互いにお互いを引き出しあうようにも感じました。ちょっと入り込む誤解も楽しいエッセンスになっています。
さらに赤ちゃんのことが好きになり、改めて自分の仮説を持って赤ちゃんを観察してみたい!という気持ちになりました。
みんながこんな視点をもって、赤ちゃんをやさしいまなざしで見つめることができるようになれば、もっともっと赤ちゃんとそこに関わる人にとってハッピーな社会ができるのでは…なんて感じた次第です。
赤研さん、すごいものを発明しちゃったんじゃない!?
ここから生まれる新しい発想に期待大!です。