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恋は、愛より出でている。【前編】

手持ちの少ない「恋バナ」をしよう

 軽い自己紹介を挟んだものの、これが人生で実質初めての匿名投稿だ。
せっかくなら、本名ではなかなか語りづらく、日の目を見ることのないようなエピソードを語ってみようと思う。簡単に言うと「恋バナ」だ。モテとは疎遠の人生だったので、面白いエピソードは正直なところ少ない。ただ、これまでに純粋な恋愛を2回ほど経験した。逆に言うと、2回以外は皆無だった。

 断っておくが、いずれのエピソードも完全に終わった話だ。事実を思い出せる今のうちに、褪せないように、昇華させるつもりで書いている。「未練」と言われると、いまいち否定できない自分の語彙を恨むが、「いちエピソード」として残しておきたいだけだ。僕の人生で、とても素敵で、貴重な経験だったから。

恋は遠き日の花火 -~高校2年

 高校2年が終わりかけの3学期、僕は童貞どころではなかった。小学生のころはもちろん、中学、高校と、「彼女」ができた試しがなかった。それもそうだ。小中高の大半を、球児として3mmの坊主頭で過ごしただけではなく、髪の毛より長いゲジ眉を目の上に携えていたのだ。その上、運動神経がいいわけでも、頭がいいわけでもなかった。前回の記事で述べた通り、僕の高校は圧倒的に女子の多い「ハーレム校」だったが、一切見向きされることもなく、日々を過ごしていた。

 そしてまた、僕自身も恋愛に興味が薄かった。そういった現状を打破したいと思ったことはなく、自発的な告白もしたことがなかった。「カップル」の片割れに、自分がなることへのイメージが一切持てないまま、モテない日々を過ごしていた。しかし、某小田和正の曲にあるようにラブストーリーは突然に訪れた。

ラブストーリーは突然に -高校2年 冬

 小、中の同級生たちと集まった夜だった。男子3人に女子3人の「いつものメンツ」と呼ぶには、まだ少しはやいメンバーだった。高校生の夜は、今思うと浅い。18時くらいから集まって、男子は自転車で、女子は徒歩で、ジャスコだかファミレスだかでおしゃべりをした。21時、そろそろ解散だ。

「ニケツして帰ろうぜ。」

 誰かが言ったか、言わなかったか、そんな流れになった。言うまでもないと思うが、ニケツは自転車の二人乗りだ。某ゆずも夏になると高らかに歌っているが、交通違反である。その節はすみませんでした。一瞬で話が逸れたが、誰かの一言で、男女ペアで帰ることになった。方向は、丁度バラバラだ。うち1組は、当時カップルだった。必然的に1組が決まり、なあなあで僕の相手も決まった。事実として記載しておくと、彼女は、同級生の中で五本の指に入るくらいの美人だった。そんな子をニケツで家まで送り届ける。正直に言うと、僕の心臓のBPMは190にならなかった。

 緊張もクソもない、なぜなら恋愛を知らない僕にとって、この状況は「イベント」ではなく「帰り道」でしかなかった。特に気の利いた話題を口にするでもなく、僕は自転車を漕ぎ出す。しいて言うなら、ケガはさせないように意識していた。そんななか、彼女が口を開いた。

「ねえ、あのさ」
「どうしたの?」と僕。

「私、(僕)のこと好きかもしれん」

 人生で初めて恋愛で緊張した。厳密に言うと、中学生の頃に一度だけ、告白をお断りしたことがあったが、それとはまた格別に鼓動が高まった。

 中学生の移動距離は本当に短い。返事をする間もなく彼女の家に着いた。とはいえ「バイバイ!」とはならない。何か返事をしなくては。

(ていうか「好きかもしれない」ということは「嫌いかもしれいない」よな?告白ではなかったのか??僕の勘違いか!!)

 結論を出すことが苦手な僕は、照れ隠しであろう曖昧な告白に対して、曖昧な返答で逃げた。

「ありがとう!少しでも気持ち聞けて嬉しいよ」

 そんな台詞を言ったと思う。彼女もまた、緊張していた。そしてそのまま帰宅した。再会の余韻にしては、ちょっと心臓が揺れ過ぎた。
(続く)


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