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16.わたしから見た1166さん(その2) 長野ゲストハウスヘルパー体験記

 ひとつ前の体験記で、1166バックパッカーズのオーナー飯室織絵さんとの出会いを書いた。ヘルパー期間のメイン業務であるインタビューを織絵さんにはできなかったので、彼女とのことをわたしからの一方的な目線ではあるが書きたい。

 2013年お盆に1166バックパッカーズに3日間ほど滞在し、その後は8年間、対面で織絵さんと話す機会はなかった。だからヘルパー滞在が始まる時の織絵さんのイメージは、前回の滞在時のまま「仕事が好きで楽しんでいる、提供する情報が的確、その場にいる人が次に何をしたいのか察するアンテナを張り巡らせている、総合してなんかめっちゃすごい人」というものだ。

 そしてこの印象は、今回の1ヶ月滞在を経ても全く変わらなかった。ゲスト対応、さらにはスタッフ対応まで、かゆいところに手が届く!そこまで考えてもらえてありがたい!という感じだったし、宿でのパソコン作業でさえ、苦しみつつも最終的には楽しんでいるように見えた。
 “めっちゃすごい”と思ったのは、集中モードに切り替わる早さと何かを決める早さ、そして実行する早さ。「カッカッカ」と喉を鳴らしながら、高速で脳を働かさせ、アイデアを頭の中でつくりあげている(だろう)様子がとても印象に残っている。

 そんな“すごい”織絵さんの意外だなと思った部分がある。それは1ヶ月の間に度々「人見知りで人との距離感をはかるのが難しく思っていた時もあった」と言っていたり、書いていたりしたことだ。その言葉を聞いたり読んだりするたびに、そんな風に思っていたんだと驚いた。むしろ、人と関係をつくるのが上手なのだろうと思っていたからだ。

 “距離感”を念頭に、滞在中の織絵さんとのことを思い出してみる。
 たった1ヶ月のヘルパーにも関わらず、宿のホームページにスタッフとして紹介すると言ってくれた。次に、宿としてお願いする業務はインタビューだけど、個人的に滞在中やってみたいことはあるかと聞いてくれた。途中、実際には時間なくやらなかったが「これは詩乃さんに書いてみてほしいなー」という業務を検討してくれたこともあった。さらには、休日に上田へのおでかけに誘ってくれたこともある。
 1ヶ月を通して、ヘルパーという仕事上の役割だけではなく、“人として”接してもらえたなと感じている。その上で得意なことをアテにしてもらえたというか、頼ってもらえたのが、うれしかった。こんなに近づいてもらえるとは思っていなかったので、予想外のうれしさだ。

 繰り返しになるが、わたしから見て、織絵さんは相手をきちんとひとりの人間として見てくれる人だと思う。相手の性格や考え方を否定せず、ましてや自分に近づけようともせず、まるっと存在を認めてくれるという感じだ。その上で、相手の世界に安易に踏み込まないように、そんな気遣いが感じられた。
 これは、わたしとの関係だけではなく、他のスタッフ、ゲスト等への接し方にも共通しているように思える。だからこそ、人との距離感が難しいと思っていたことがさらに意外なのだが、苦手だったからこそとても気をつけているのかも、そしてなんらかの要因で相手の世界に入らなくてはならない時、つまり思いっきり近づかないとならない時に難しいと感じたのかな、と失礼ながらすごく勝手に想像してみる。

 距離感と言えば、わたしはこれまで、好きな人や尊敬している人とは一緒に働きたくないと思ってきた。それは、近づいたことで、お互い嫌な面が見えてその人を好きでいられなくなったり、その人からがっかりされたりすることが怖いからだ。
 だけど今回、すごいと思っていた織絵さんの印象そのままに、むしろもっと一緒に働きたかったなと思えてヘルパーを終えた。1ヶ月滞在させてもらえて本当にありがたかった。彼女からどう思われたかは気になるところだが、またヘルパーしに行きたいですと希望を出しておきたい。

 (余談だが、織絵さんの娘さん<4才>への接し方にはっとさせられることが多かった。娘さんをひとりの人間として尊重しているのをすごく感じたのだ。わたしはこれまで、ものすごく簡単に言うと“母親=子供に禁止を言い渡す人”というイメージで、だから母親になるのが嫌だった。でも織絵さんみたいな母親ならなってみたいかも、織絵さんみたいに子供に接すればいいんだーとふと思えて、これは自分にとって結構大きいことだった…!)


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