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“よそ者”が信頼を獲得するためのプロセスとは

再生可能エネルギーが秘めた可能性や魅力について、パシフィコ・エナジーで働く「中の人」や関係者に、それぞれの想いを語ってもらう記事コンテンツ「エネルギーの未来について語ろう」。

第3回目となる今回は、パシフィコ・エナジー代表取締役兼CEOを務める松尾大樹が太陽光発電所を建設するにあたり、どのようなことを大切にして、どのようなマインドで臨んでいるのか語ります。

太陽光発電所を建設する際には、さまざまなクリアすべき“壁”が存在します。特に、いかに建設現場の地方自治体や地元住民から合意を得られるかが重要です。

信頼を獲得するために大切な「客観性」

作東発電所(岡山県)の建設風景

太陽光発電所の建設を行うにあたり、立地の選定、地方自治体との交渉、実際の建設などさまざまなフェーズがありますが、そうした建設過程のなかで私たちが毎回苦心し、何よりも骨を折っているのが「いかに信頼を得るか?」ということです。

太陽光発電所の周辺には、前提としてその土地で暮らす地域住民の人々の暮らしがある。そうした地元の人たちにとって、私たち事業者は外部から来た“よそ者”です。まずそれをわきまえた上で、住民の方々はもちろん、地元の自治体や企業、融資をしてくれる金融機関など、建設に関わるさまざまな関係者の“信頼”を獲得しないことにはプロジェクトは始まりません。これは太陽光発電所建設における永遠のテーマだと思います。

そうした信頼を獲得する上で、私たちがまず重視しているのが「客観性」です。客観性といっても、何も難しいことではなく、たとえばみんなで話し合って決めたことや合意を得たことは、きちんと書面にまとめて記録を残しておく。また通常は、外部機関や公的機関の審査を通す必要のない事柄であっても、少しでも不安を感じる人がいるなら、敢えて県や市町村による審査や許可をできるだけ受けて信頼できる行政機関に評価してもらうようにする。とにかく、そのような基本的で当たり前のことの積み重ねです。

“当たり前”の積み重ねがなぜ大事なのか? 

それはやはり、私たち再エネ事業者が言っていること、やっていることの確かさを信じてもらうため、ということに尽きます。たとえ手間がかかろうとも、自分たちのリスクになろうとも、よそ者である私たちが信頼を得るためには、そうした当たり前の積み重ねをコツコツ地道にやっていくしかない。結局はそれが、プロジェクト成功への一番の近道になるのです。

マニュアルに頼らない“オーダーメード”な開発を

作東発電所(岡山県)の建設風景

太陽光発電所を建設する上で、私たちがもうひとつ大切にしているのが「オーダーメードな開発」を行うこと。マニュアルをなぞるだけのような、一辺倒で融通の利かない開発は行わないことを心がけています。

発電所を建設する際には当然、地域ごとに立地や環境、地域住民の方々からの要望といったクリアすべき要件は異なります。だからこそ、過去の成功例に固執したり「とりあえずこの手順でこなせば大丈夫」というような硬直した姿勢に陥ったりすることは禁物なのです。発電所建設に唯一無二の正解はなく、そういう意味で、パシフィコ・エナジーにマニュアルはありません。

私たちが、地元に分け入って建設を成功させるためには“リスペクト”を持つことが大切です。そういった意味で、マニュアルに頼らないこと自体が、私たち流の地域へのリスペクト……とも言えるかもしれません。ときには「この場所に柵を作って欲しい」とか「ここの道を直してくれ」とか、発電所建設に直接的には関係がない要望でも、私たちにできることであれば、可能な限りの対応を行なうこともあります。

もちろん、過去の案件から得たナレッジや教訓はしっかり活かします。その上で、地域住民の方々の心配ごとや困りごとに徹底して耳を傾けながら、毎回ゼロベースのまっさらな気持ちで建設に取り組む。“マニュアルがない”とはつまり、そういった姿勢のことを指すわけです。

夢前発電所(兵庫県)で開催された地域交流イベントの様子

パシフィコ・エナジーが除草剤を使わない理由

作東発電所内(岡山県)、芝刈りをする様子

単にマニュアルに沿っただけの建設は行なわない。そういった意味では「除草剤を使わない」というパシフィコ・エナジーの方針も、従来の発電所建設・運営のセオリーからは、外れるやり方かもしれません。

除草剤不使用の方針は私が社長に就任後、全社的方針として定めましたが、社長就任前から「これはぜひやるべきだ」とずっと考えていたアイデアでした。除草剤を使わなければ当然、発電所内の草刈りや雑草の処理を手作業で行わなければならず、そのための業者などを雇う必要もあるため、コストは上がってしまいます。そのため当初は、社内でも反対する声があったことは事実です。

しかし、パシフィコ・エナジーとして“環境配慮型の太陽光発電所”をうたっている以上、除草剤不使用はマストだと考えています。私たちが発電所を建てる場所の多くは、ゴルフ場の跡地。であれば、ゴルフ場時代よりも豊かな自然環境を取り戻したい。「太陽光発電所ができてから、自然が戻ってきたね」と多くの人に言われるようにしたい。そうした想いが背景にはあります。

実際に除草剤を使わないだけで、かなり本来の自然に近い環境が戻ってくることがわかりました。農薬が混ざっていない、きれいな水が流れ込む調整池などの水辺も発電所内に存在してつくれていますし、そこを中心にかつての生態系が戻ってきて、毎年訪れる渡り鳥の数も年々増えています。こうした事実は引き続き、環境への影響調査などを通じて、データ的にもしっかりと証明していきたいと考えています。

困難な挑戦こそ、楽しむようなマインドを

細江メガソーラー発電所(宮崎県)の竣工式の様子

これまで挙げたような信頼を獲得する一つひとつの過程をすべてひっくるめて、私は「開発」と呼んでいます。

私が考える理想的な発電所建設を行うためには、たとえ我が社にとって不都合な情報であっても外部に開示して、関係者から寄せられる疑問に対しては、とことん誠実に説明する、そんな姿勢が必要不可欠なのです。

そうしたことを通じて、信頼を獲得できたと感じる瞬間。これまで首を縦に振ってくれなかった自治体や、合意形成まで至らなかった地域住民の方々が「パシフィコさんなら」と首を縦に振ってくれたときは、目頭が熱くなってしまいます。

そして何より、さまざまな困難を乗り越えて、太陽光発電所が完成したときは言葉にはできないような感動を覚えます。私は現場大好き人間なので、建設中の現場に足を運んで、だんだんとできあがっていく発電所の風景を見るのが、本当に好きなんです(笑)。現場の風景は目まぐるしく変わっていくので、1日たりとも同じような風景はありません。まるで、我が子の成長を見守るかのような、そんな気持ちになってしまいますね。

大型の太陽光発電所が完成するまでには、さまざまな困難があります。でも私としては「困難こそが俺たちの仕事だ!」くらいに思っていて、難題に直面したときには逆に「きたな!」とワクワクするような気持ちが湧いてきます。新しいチャレンジであれば、それ自体を前向きに楽しむようなマインドが、我々の仕事では本当に大切だ、とこれまでの経験を通じて実感しているところです。

未来に向けて、困難な壁を解決する。それこそが、我々再エネ事業者の仕事であり、使命でもあるのですから。


「エネルギーの未来について語ろう」松尾大樹 連載第1回と第2回はこちらからご覧いただけます。

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