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「君には、もう会えない」




  ――どうして僕はあのとき、
        君の傍にいなかったんだよ。




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 ニュースで流れる他人の死を
朝飯食べながら聞き流して、
“死ぬ”っていういつか来るものを、
他人事だって軽く見ていた。

そういえば友達にだって、ふざけて
「お前死ねよ」なんて言ったこともあったよな。


 ……“死”なんて自分に遠いもので、
自分の周りは大丈夫だって
根拠もないのに思っていてさ。

 ――君の強がりに、
    僕は、気付けなかった――。



 ――どうして僕はあのとき、
    君の傍にいなかったんだよ。

   どうして身代わりになってでも、
    君を守ってやれなかったんだよ。

  君のいない毎日は、ひどくむなしくて、
  君の声がないことに、耳塞いでるんだ。

      ……こんな僕を、叱ってくれよ。




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 君はいつだって真っすぐで、
人のことばっか気にかけて、
誰にだって優しくて、
握る手が柔くあったかくてさ。

そのくせ僕だけにはわがまま言ったり、
ふくれたり、甘えたりしてくるんだ。


 ……ふと見せる寂しい横顔、
時折何か言いかけては微笑む、
君の精一杯のサイン、たくさんあった。

 ――なのにどうして、
    気付けなかったんだよ――。



  ――どうして僕は君を、
     わかってやれずにいたんだよ。
 
    どうして君を抱き締めて、
     涙流す場所になれなかったんだよ。

  君が見えないことに、目をつぶって、
  体干からびるほど泣けてくるんだ。

      ……こんな僕を、叱ってくれよ。




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  この先、君とまた出会えないかって、
  いつだって奇跡祈ってんだ。

  ――だけど、また出会えたとしても、
   その君は、“君”じゃないんだろうな。

   こんな僕に、
   二度と、触れてくれないよな。


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  ……頼むから僕を責めてくれよ。
    「バカ」とか言って殴ってくれよ。

    頼むから君のとこ行かせてくれよ。
     君がいないの耐えられないんだよ。


  ……それなのに、
   君の方足向けると、
    風が僕の背、反対へ押すんだ。

    ――優しい、柔い、あったかい風が。


  ……君だって、思っていいかな。
   君の、最後のわがままだって。
   君はほんと優しすぎて、
   僕を怒ってもいないんだって。


  ――僕の最後のわがままを
    どうか、君もきいてくれないかな。
  

  ……――君が消えてしまうその日まで、
   どうか僕の背、支えてよ。

   どうか最後の最後まで、
   どうか、僕の傍にいてほしい。


    …………もう会えない、愛しい君よ。



お読み下さり、誠にありがとうございました。1人でも誰かの力になることができましたら幸いです。