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「人生の最高の出来事は、人と出会い深く知り合うことだ」

自分が自分じゃなくても、無条件に受け入れてくれる居場所というのは、なんとも尊いものだ。仕事ができたとかできてないとか、優秀だとか優秀でないとか(そもそも"優秀"ってなんだ)、そんなことを一切抜きにして自分が自分でいられる場所。

休日に、渋谷を歩いていた私は、たまたま見つけたカフェに入った。その店は人気店だったのか少し混んでいて、数人並んでいたので「帰ろう」、とおもった。(わたしは、よっぽどのことがない限り並ばない。)

「ごめんね、ちょっとだけ、待てる?」と、数秒前に初めて出会ったのにも関わらず、まるで仲の良い親戚のおじさんのような軽いノリで、店長のような雰囲気を醸し出した店員さんがそうわたしに言った。すると不思議と「はい、大丈夫です」と、すでにわたしは返事をしていて、本を読んで席があくのを待った。お店に入った最初の数秒で、なぜかわたしは、このお店に受け入れられたような気がした。「あなたはここにいていいんだよ」と。

案内された隅っこのあたたかい席で飲んだカフェラテには、可愛いハートが浮かんでいて、エスプレッソが強くて、とても美味しかった。「焼いたものもおすすめです、ハーフにもできますよ」という気さくな店員さんの提案にしたがって頼んだシフォンケーキも、ふわふわで、優しい味がした。そして帰るお客さんに向かって言う、店員さんの「いってらっしゃい」が、とても心地よく心に響いた。

この一連の流れに、なぜだかわたしは心底感動してしまった。この空間にいま自分がいて、たしかに歓迎されていて、自分自身の心が満たされていることに、涙が出そうになった。そしてこの気持を忘れまい、と、鞄に入っていた3年日記帳(今年の9月から始めて毎日書いている)を開いて、気持ちを綴った。たまたま出会ったカフェで心が満たされたこと、自分もこんな場所を作りたいと想い描いていること、こんな場所との出会いは、日常でなかなかないこと。

浅草のゲストハウスで働いていたとき。夜の9時近くに、突然予約が入ったとおもったら、数分後に真っ赤なセーターを着た女の人がチェックインをしに重い扉を開けた。「駅を出て、来る途中に予約しました」と。

部屋に荷物をおいたその女性、ジュンさんは、またラウンジにおりてきて、コーヒーを淹れて飲んだ。気になったので話しかけてみると、「東京に住んでいるのだけれど、今日は突然、家に帰る気分じゃなくなったの」と、にっこり話した。金髪に赤いほっぺたがチャーミングでミッキーのような話し方をするジュンさんは、後にもともとディズニーランドで働いていたことを知る。(だからか)

ジュンさんは120%で人生を楽しんでいるような明るい性格で、出会ってすぐに大好きになった。すぐに人を巻き込んで「楽しい」を伝染させる天才で、よく知らない人さえも巻き込んだ。

初めてであった夜もそうで、「駅から来る途中に、外国人の女の子がいたから、話しかけてみたの。そしたらその子はフランスからCDを日本に売りに来ている子だったのよ。」と、バックからその子からもらったのであろうCDを取り出し、ゲストハウスのラウンジにその子の歌声を流した。

「エリカ、お願いがあるの。Facebookをその子と交換したんだけど、わたし、英語ができないのよ。『歌を聴いたよ、とても素敵だね。わたしはあなたを応援する!』って彼女に書いてくれる?」と、わたしに携帯を差し出した。

その夜からジュンさんは、東京住みにも関わらず、よくゲストハウスに泊まりに来てくれた。(なんと、いまはそこで働いている!)

「エリカがいたからわたしはこの場所に出会えたよ」と、今でもわたしが遊びに行くたびに、そんな嬉しい話をしてくれる。


3年前に、わたしがベトナムへ旅立つ前。ジュンさんがサプライズビデオを作ってくれた。それはわたしが知っている人たちから、のメッセージだけではなく、知らない人たち(ジュンさんのお友達)、と、ジュンさんが電車の隣りに座ったおじさんや道端で出会ったと思われる少年など、ジュンさんさえも初対面の人たちからのメッセージもたくさん入っていた、ツッコミどころ満載のもの。でも不思議と、動画に登場する人たちはみんな、楽しそうだ。

ジュンさんは、たまたま出会う人さえも幸せにしてしまう。


その中の知らないおじさんからの言葉に、お気に入りのものがある。

「振り向くな、振り向くな、後ろには夢がない」

寺山修司の言葉だ。わたしはいまも、その知らないおじさんから受け継いだ、寺山修司の言葉に助けられたりする。

ジュンさんは、ミッキーマウスのようだ。



日常で涙が出るような瞬間に出会うこと、ふとした出会いにそれからの人生が救われること、は、たくさんたくさんあって。そんな出会いを通して、「自分が受け入れられた」と、おもう瞬間、誰かとの接点ができた瞬間、わたしはそんな瞬間が大好きで、それを求めて生きているのだと、ふとおもう。

「人生の最高の出来事は、人と出会い深く知り合うことだ」

とある映画のセリフを、なんだか今日はおもいだした。

いつも見てくださっている方、どうもありがとうございます!こうして繋がれる今の時代ってすごい