江古田リヴァー・サイド 38

#江古田 #小説

「なんか発表前に色々漏れちゃったみたいで、あんまり”サプライズ”って感じじゃないんですが…」

 ヌコ生の記者会見。
 
 プロデューサー(表向きの)のZIZZは、ゴツいサングラスをかけ、淡々とした口調で語る。
 池袋のヌコヌコ本社のイベントスペースに、オレたちはいた。
 ウィークエンドの昼下がり、世間様は仕事やら学校やらの時間だろうに、モニターには、画面を埋め尽くさんばかりのコメの濁流が流れていた。

<あれ?この娘達って、あの動画の娘達じゃね?>

<http://.youtube.com/kawayu/xxvvx/xxxxxxxxx ←コレか>

<つーかコレ、レイヤーの柚華じゃね?>

<柚華タソぶひぃぃぃぃぃぃ!!>

<右端の娘の絶対領域なめたい...(;´Д`)ハァハァ>

<ふぅ...>

<カブリモノwwwコノオワのパクリかよwww>

 上手側から玲さん、仁美、ヨージ、ケイタ、ヒロム、オレ、そしてZIZZさんと司会者、という配置。
 面の割れているヨージは、素顔を晒すのはマズいという事で、正体を隠す為に人気バンド、「コノヨノオワリ」のDJ、”DJ EVOL ” のような…というか、そのままの馬のカブリモノを被っている。
 カブリモノがカブるのは問題ないのか?

 …つか、メッチャ暑そう。
…つか、事案が発生しそう。

 「今回、ワタシが彼等をプロデュースすることになりました。”Arc-o’ Iris(アルコ・アイリス)”です
 じゃ、一人づつ自己紹介、よろしくおねがいします
 えっと…じゃあ、リーダーのコーイチくんから」

 ZIZZさんに促され、オレはおもむろに立ち上がる。
 いくつものフラッシュが焚かれ、オレの思考がホワイトアウトする。
 
ヤッベ...なんも思い浮かばね…

 「”アルコ・アイリス”のギター…で…リーダーのコーイチです…
…えと…今回こういうカタチでデビューする事になりました。
  よろしくおねがいします」

 …ッッつっまんねーーーーーーーー!!

 ペコリと頭を下げ、着席。
 ベシャリの効かない自分に落ち込む。
 続くヒロムとケイタの自己紹介は、更に散々だった。
 ヒロムは過緊張で泡を吹いて倒れ(インパクトだけは充分だったが)、ケイタの声はおもいっきり裏返り、ブラウザ上にwwwと大草原を発生させた。

 「”アルコ・アイリス”のキーボード兼マスコット兼種馬のDJ-YO様DEATH !! これから俺達が、ガツンとイカしたROCKでキュンキュンさせちゃうから、夜露死苦!」

 ...スベったぁぁぁぁぁぁぁぁ!
  ちょっと期待してたのに、フツーにスベりやがりましたよこのカリスマ起業家!!

 「あー、あとそこにいる一番右のメッチャクチャ可愛い子、あれ俺の大事なカノジョだから♡」

 さながら”ザ・ワールド”のように止まった時間が動き出し、ひときわ眩しいフラッシュが、ナゾの馬仮面の男を包んだ。

サポート頂けましたら、泣いて喜んで、あなたの住まう方角へ、1日3回の礼拝を行います!