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『誘う女雛』ボツシナリオ『男雛達の憂鬱』

OZZY-ONKYO-Project作品、『誘う女雛』のボツシナリオです。
宿についてから爺さんから怪談を聞く前までに、実はこんなことが起こっていたんです♪

未見の方はまずコチラから、第壱章だけでもご覧頂ければと。
それでは、おつきあいくださいませー♪

男雛達の憂鬱

怖さレベル:☆☆☆☆☆(甘口)

爺:「長旅でお疲れでしょう。少し早いですが夕餉のご用意をいたしました故、早めにおあがりになって、ゆっくりお風呂にでも浸かられては如何ですかな?」

依子ナレーション:長旅と車酔いでぐったりと疲れていた私たちは、お言葉に甘えて早めのお夕飯とお風呂を頂くことにました。

高槻:「あー……疲れたお……依子氏とメグミタソがお風呂上がるまで一眠り……」

越川:「だな……ちと疲れた……」

爺:「だらっしゃーーーーー!!」

(スパコーン! と、便所スリッパによる激しいツッコミ)

高槻:「オゥフ! 何するんですかぁおじいさんッッ!!」

越川:「痛って!ジジイ! マジ痛って!! んだゴルァ!!」

爺:「情けない……」

高槻:「え? な……なんぞ?」

越川:「ンだジジイ! いきなりスリッパツッコミの次は説教か!?」

爺:「ご両人……ここは露天風呂、と言いましたな?(耳元ボソーリ)」

高槻:「おじいさん……ボケたの? さっきおじいさん本人から聞いたばっかじゃん♪ 男湯女湯に別れてないから、入替で入ってくれ……って」

すぱすぱこーん!

越川・高槻:「ぐへっ!」

爺:「ぶぁっかもん!! 覚えてるに決まっとるじゃろ!! いいか若人、『合宿』『露天風呂』『女子同行』ときたら……この段階で三暗刻聴牌じゃろうが!」

高槻:「うぇ?」

越川:「あん?…… あ! ま、まさかノゾ……キ………?」

爺:「ロン!! 然りよ!」

高槻:「えー、それはマズイよー……」

越川:「つーか……宿の主がンなことけしかけていいのかよ……」

爺:「喝ーーーーーーーーーーー!! 時に青年! お主がモテない理由を教えてやる!」

高槻:「へ? なに!? え? つか、モテない前提なん?」

爺:「モテるのか?」

高槻:「……モテません」

爺:「お主がモテないのは、太ってるからでもキモオタだからでもないッッ!! お主がモテない理由……それは、ここぞという時の行動力の無さだッッ!!」

高槻:「へぐぅ!!」

爺:「覚えはないか? 例えば……たった一言『ごめん』と言えなくて、帰りのホームルームでクラス中から吊し上げを喰らった末、四面楚歌になった小学校時代ッッ!!」

高槻:「ひぎぃ!」

爺:「例えば……スタートでその後の学校生活が9割方決まる高校入学時、教室内カーストがまだ固まっていない時期、早々にクラス内男女を束ねたリア充リーダーからの折角の『カラオケいかね?』の誘いにビビり、『用事があるから……』と一人で帰ってしまったあの日ッッ!!」

高槻:「らめぇ!!」

爺:「そんな……そんな痛恨の悔いが、お主にはあるんじゃないのか?」

高槻:「おじいさん……なんで……見てきたように……」

爺:「わからいでか! 時に、そちらの若人ッッ!! お主もままならぬものがありそうじゃな……(ニヤリ)

越川:「ぐ……」

爺:「あのオナゴのうちどちらか……そうなぁ、あの『よりこさん』……の方かの?」

越川:「なっ!! 依子がなんだってんだ!」

爺:「アレは良いオナゴじゃのぅ……こう、ホッソリしておるようで腰のあたりが実にこう……ムッチリと……」

越川:「……おい、エロジジイ」

爺:「それに器量も良い。お主のような劣等感の塊の小心者ではつりあわんオナゴじゃ」

越川:「 ……ジジイ、黙んねぇとシバくぞ」

爺:「ほ! 図星か。 カッカッカッ! いいのう、若いのう! そして、少なくとも自覚はあるのじゃな。自分の肝っ玉と度量の小ささの……」

越川:「ジジイ……コロスぞ!」

爺:「おぬしにはできんよ。そんな度胸はない。ワシも伊達に2回も戦争に行っとらんよ。しょっぱい人間は、纏う空気までしょっぱくなるものじゃ……ここはしょっぱいのぅ…...胡瓜でも漬け込みたくなるわい!」

高槻・越川:「ぐぬぬ……」

爺:「さて、クズ諸君。お主達のような青年を、ワシは何人も見てきたよ。過剰な自意識に溺れ、本質を見誤り、結局何者にもなれぬまま恐怖心や虚栄心を持て余し、自滅していくんじゃ……嗚呼……哀れ哀れ……」

越川:「じ……ジジイ……初対面の相手に言いたい放題じゃねぇか……」

爺:「老婆心じゃよ。ジジイなのに『老婆』心とはこれいかに? フォッフォッフォ!」

高槻・越川:「(( ゚д゚)ポカーン)」

爺:「……ノリが悪いのぅ。そんなだから童貞なんじゃぞ」

高槻:「いや、それとこれとは話別じゃね?」

越川:「どどどどどどどどど童貞ちゃうわ!!」

爺:「ほぅ、そっちのトッポイのも童貞だったか。それは意外じゃったわい♪」

越川:「クッ……」

爺:「なぁ、若人……人生というヤツは、お主等が思っているより、ずっとずっと短いものじゃぞ?」

高槻・越川:「……」

爺:「平和な世の中じゃ……戦など、もう70年も起こっておらん……ワシは、お主等が羨ましいよ。今日と同じ明日がまた来ると信じられる。飢えず、凍えず、好きなものや好きな事を『好きだ』と言える自由が当たり前にある世界で、若い時代を謳歌できるお主等が、心底羨ましい……」

越川:「爺さん……」

爺:「若人達……聞いてくれ。ワシのように老いさらばえてしまえば、気力も体力もカラカラの雑巾のように乾いてしまう……そうなれば、何をするのも一苦労じゃよ。楽しいことも快楽も、ただただ億劫なものでしかなくなってしまう……」

高槻・越川「……」

爺:「今はお主等の体内に溢れ、持て余している衝動や情欲も、使うべき時に使わねば錆びつくばかり。貯めておいて後で使えるような代物ではないのじゃよ。こんなにも自由な時代に、こんなにも安全な時代に、何故お主等は肥大した自尊心ばかりを後生大事に守ろうとするのじゃ? 選択を誤ったら死ぬかのような怯え様で。ワシに言わせりゃ、こんなに死ぬのが難しい時代はないわい! お主等のチンケな自尊心が粉々に砕けたところで、死ぬワケではなかろう!」

高槻・越川:「あ……ああっっ!!」

爺:「じゃからこそ思う存分お主等の自由を享受せい! 行けぃ若き獣たちよ! リビドーの趣くままにッッ!!」

高槻・越川「「応ッッ!!」」

―――場面転換 露天風呂―――

依子:じーーーーーーーー……

メグミ:「う……うにゅ……」

依子:じーーーーーーーー……

メグミ:「よ……よりちゃん、何……かな? ワタシの胸、何かついてる?」

依子:「……なめたい」

メグミ:「ふえっ!!」

依子:「あら!ヤダ!口に出てた!?」

メグミ:「あ……あはは……」

依子:「……おっぱい」

メグミ:「もー!よりちゃーん」

依子:「メグミはもっと自分の魅力に気づくべきだと思うわ((;゚∀゚)=3ハァハァ)」

―――場面転換 風呂外、高槻&越川―――

高槻:「はふぅ……百合の波動を感じるお……」

越川:「クッソ! 見えねぇ……」

高槻:「越川氏、越川氏! あんまり大きい声出すと見つかっちゃうお」

越川:「んだよ、ビビってんのか? おい、高槻、そっちはどうだ? 見えるか?」

高槻:「ていうか、湯気でメガネが……ねぇねぇ越川氏、依子氏ってもしかしてメグミタソの事アレでナニなのかなぁ?」

越川:「あ? ナニがアレだって?」

高槻:「いや、だから依子氏が、メグミタソを性的な意味で……」

越川:「アホか。女同士なんざ、結構あんなもんだぞ。これだから童貞は……」

高槻:「童貞はあんまり関係ないお。ていうかソレ言ったら越川氏だって……」

越川:「どどどどどどどどど童貞ちゃうわ!!」

高槻:「……それはもういいお」

爺:「どうじゃな若人ーーーーー!!」

高槻&越川:「「うわぁ!!」」

越川:「じっ……じっ……ジジイ!! テメ!心臓止まるかと思ったじゃねぇか!! マジコロスぞ!!」

高槻:「シーッ! シーーーーーーーッッ!!」

爺:「カッカッカッ! 己がリビドーを開放しておるようじゃな。結構結構。」

越川:「こンのエロジジイ……」

爺:「はん、その通りじゃ。ワシはエロいぞ!! だったらどうだというのじゃ! 鼻の下伸ばしてじっっっっとりと覗いとったお主に言われたくはないわ!」

越川:「ぐぬぬ……」

爺:「そちらの若いのは堪能しとるようじゃな」

高槻:「この角度だと、見えそであんま見えないけど、だがそれがいい!!」

爺:「左様。エコーのかかったおなごのはしゃぎ声と水音、そして見えそで見えないもどかしさこそ、覗きの醍醐味よ! わかっているではないか」

越川:「いやおまえら……ノゾキに来て肝心なものなんも見えないとか、ガッカリもいいとこだろ? 何言っちゃってんの?」

高槻:「まったく……これだからリア充気取りは……」

爺:「侘び寂びというもののわからんヤツじゃのぅ……」

依子:「なんだか楽しそうね……私達も混ぜてもらっていいかしら?」

メグミ:「……」

越川・高槻・爺:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

―――場面転換 風呂あがり 客間 四人―――

依子:「……」

メグミ:「……うっ」

越川:「……」

高槻:「……」

爺:「いやいや、なんじゃ、コイツらもほれ、反省しとるようじゃし、そろそろ許してやってはどうかのぅ?」

依子:「……」

メグミ:「……グスッ」

越川:「……」

高槻:「……」

爺:「いや、じゃからほれ、こう青春チックな感じで互いを許し合う光景をこの爺にだな…….」

越川:「いや……ジジイ、元凶アンタだから……」

依子:「ハァ!? 越川! それって男らしくなくない!? 確かにお爺さんが煽ったのかもしれないけど、ノゾキしてたのはアンタたちじゃん!」

越川:「いや……見えてはねぇし……ちょっとしか」

依子:「そういう問題じゃない!! アンタたちのそういう浅はかさが嫌だって言ってんの!!」

メグミ:「……うっ……ううぅぅぅぅぅ」

依子:「ほら! メグミ泣いちゃったじゃん!!」

高槻:「いや……それは依子氏の剣幕に驚いてるだけかも知れない可能性が微レ存……」

依子:「黙れ黒毛脂身!!」

高槻:「なんか高級っぽいけどよく考えたらやっぱりヒドい名前で呼ばれたーーーー!!」

爺:「まぁ! まぁ! まぁ! お嬢さんや、そんな大声で、頭ごなしに言うてしまっては、意固地になるか怯えるかしかなかろう? 何かを伝えようと思うなら、そんなに感情を波立ててはいかん。いや、この件はな、この爺が全て悪かった! そういう事にしてくれ! ワシが全て被る! なんなら、宿代をロハにしても構わんぞ? どうじゃ?」

依子:「う……魅力的な提案ね……メグミ、どう?」

メグミ:「グスッ……よりちゃんがいいなら……もう怒らない?」

越川:「やっぱ依子が怖かったんじゃねぇか……」

依子:「うっさい! チ◯コもぐぞ!! 性欲マシーン1号2号!! あと3号!!」

爺:「3号ってもしかしてワシーーーー!!」

メグミ:「ひぐっ!」

依子:「あー、大丈夫よーメグミ♡ 怖〜い男共は私がやっつけたげるからねー♪(耳元。とっても乾いたドスの利いた声で)……いいわ。ホントに宿代、タダでいいのね?」

爺:「お……おぅ……」

依子:「交渉成立ね」

爺:「あー……商売上がったりじゃのぅ……」

依子:「食事のグレード下げるとか、ケチ臭いこともナシよ」

爺:「わーかっとる! ……まぁ仕方あるまいて」

依子:「ふん」

爺:「さーて、罪滅ぼしと言ってはなんじゃが、ワシが一つ、怪談でも披露しようかのぅ」


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