冬の朝

冬はつとめて。
雪の降りたるはいふべきにもあらず。
霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。

『枕草子』/清少納言

冬が好きだ。もっと言えば冬の朝が好きだ。
街がまだ起きていない早朝。
しんとした静寂のなか、ツンと張り詰める空気に頬がピリッとする。
息を吸い込むとその冷たさに身体中が目覚めて、そのまま吐いた息は白く出てきたと思えばすぐに消えていく。
ああ、寒い寒いと手をさすり肩がすくむ。

はるか昔、清少納言も同じように感じていたのかと少し不思議な感覚になる。けれど、ふと思う。いや違うな、清少納言の枕草子が、新美南吉の手袋を買いにが、いわむらかずおのさむいふゆが、レオレオニのフレデリックが、冬の景色を文字にして、色をつけて、絵にして、私の感性を育ててきたのだと。そこに自分の実体験や感情が相まって、私は大きな自然に感動することができるのではないだろうかと。

感動を表すというのは、こうも心を豊かにしてくれるものかの改めて思う。私にはその才能はないけれど、先人たちの感性をお裾分けしてもらい自分の中にとりこんでいくことはできる。

だから、作品も、今目の前にある景色も、言葉も、大切にしていきたいと思うのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?