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最高の星空を

好きなものは何?
と聞かれれば様々にありますが、ずっと探し求めているものは?と聞かれれば、
「最高の星空」なのかもしれない。

子どもの頃に見た星空に圧倒され、それ以来、なんとかしてあの時の星々に会いたいと願っているのですが、未だに再会できません。
もう一度だけでいいから、と今も願い続けているのです。

その星空との出会いは、中学校3年生の学校キャンプでのことでした。

わたしは当時、大雪山系の麓にある上川町に住んでいました。上川町といえば、スキージャンプが有名で、高梨沙羅選手や、長野オリンピック金メダリストの原田さんなどが、幼少から技を磨いた町でもあります。
学校の裏の山には、そのジャンプ台が二つあったことを覚えています。

その中学校では、3年生の夏休みに毎年学校でキャンプを行いました。炊事をしたり、肝試しをしたり。花火をしたり。

肝試しは、ジャンプ台のある山が学校のすぐ裏にあり、歩いて行ける距離でしたので、その山道を登っていきます。様々な怪談話のある峠道でしたが、幽霊とかお化けとかそういうものより、ひたすら熊に怯えていた記憶があります。
おそらく今はもう、山での肝試しはしていないでしょうね。本当に出ますからね。熊が!危なすぎる!!

さて、話を戻しましょう。星空のこと。
そのような田舎の学校は、とてもグラウンドが広くつくられています。たしか、サッカー部と野球部が同時に使える広さでした。そして裏は山、周りに民家も少なく、電灯もありません。

陽も落ちてすっかり暗くなり、肝試しの始まる前に友達と、グラウンドの真ん中まで行ってみよう。ということになったのです。

そこには本物の闇がありました。あれほどの暗さも未だ経験がありません。自分の鼻の先も見えないのですから。
隣を歩く友達の声だけを頼りに、この世に存在するのは、わたし達だけ。と思えるほどの、漆黒の闇に包まれました。
帰り道も分からなくなるくらいでしたので、歩を進めることに、勇気が要りました。

それでも、おそらくグラウンドの真ん中辺りだろうという場所にたどり着き、空を見上げたら!

そこは、宇宙でした。
空だけでなく、自分を包む全てが宇宙空間だったのです。

天の川が圧倒的な迫力で頭上にありました。全ての星がそれぞれに強く輝いているので、星座を探すことが難しいほどでした。
見えるものは星々だけでした。自分の姿も、隣に立つ友達も、気配でしかないほどの闇の中で感じるものは、自分が立っている大地、地球の存在と、宇宙に存在している、数多の星々。
その時にはっきりと、私たちの生きている世界に区切りはなく、想像も及ばないほど広いものなのだと知りました。

今思えば、価値観を変えるほどの、自分の人生にとっても大きな経験でした。
以来、もう一度だけでも、あの星空に会いたいと願っているのです。

一昨年、北海道でブラックアウトが起きた夜に真っ先に思ったことが、「あの星空に会えるかも!」ということでした。

もちろん、よい観測スポットを探しに出かけましたよ。近くに中学校があるので、グラウンドに入ってみたかったのですが、さすがにそれはやめ、電柱や高い建物のない、広い場所を求めて歩きました。

アリーナ横の川沿いがいいかも?とやって来てみたら、いい感じでした。
ただ、漆黒の闇はそうそう得られません。全ての電気が消えていても、車がライトをつけて走りますからね。
それでも、あの時の星空に匹敵する星々を見ることが出来ました。

今世の中は、光に満ちています。そのおかげで、何不自由なく過ごしていられる。
思いがけず文明の証である光を失い、夜の闇に包まれた時、五感を忘れ宇宙と1つになり、私たちはその大きな存在の、一個の細胞であることを知ります。
見えざるものの存在を感じます。それも自分達の在る世界です。

あの時のような星空をもう一度見たい!心から望むいくつかの願いのうちの、それが、大事な大事な一つなのです。

だから、この夏キャンプがしたいです!とても。
(唐突!!さらに故意的!)

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