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「てんや」のタブレット導入に思う、ファンであり続ける条件


イラつくおじいちゃんと、恐縮するおばあちゃん


長年利用させてもらっている
天丼チェーン「てんや」さん。

最近、定食のよさを知りまして。
揚げたての天ぷらを、
ひとくち目は塩で味わい、
ふたくち目は天つゆで味わえて、
二度おいしい。

初めて利用して30年。
恥ずかしながら、知らなかった。

その「てんや」さんも、
最近「タブレット」を導入しましたね。

お店からすると、
オーダーをとる手間が省ける。
オーダーミスがなくなる。
というか、客が間違っても
自己責任(イヤな言葉です)にできる。

特にピークタイムなどは
配膳と片付けに専念できるので
バタバタしなくなる。

また、多言語対応なので、
外国語が分からなくて困ることなく
より多くの客に利用してもらえる。

一方、利用する側にとっても
わざわざ店員を呼ぶのが面倒な人や
注文を取りに来るのが待てない人、
なるべく他者と会話したくたい人にとっては
ストレスなく食事ができる。

・・・とまぁ
便利な道具ではありますが、
利用する側には、
うまく対応できない人も出てきます。

先日お店に行ったら、案の定、
おじいちゃんとおばあちゃんが、
とまどっていました。

まず何をしたらいいか分からない。
お目当ての商品が見つからない。
一生懸命押しても反応しない。

あるおじいちゃん、
だんだんイライラし始め、店員を呼びます。
教えてもらって何とか注文できたようですが
「『天丼』のひとことで済むのに
 何でこんなもん入れたんだ!」
と毒づいていました。

あるおばあちゃんは、
困り果てて、これまた店員を呼びます。
やり方を教わっても、うまく反応しない。
結局店員に操作してもらって、注文完了。
「ごめんなさいねぇ」
と恐縮しきりでした。

タブレットを導入することで、
年配の客をイラつかせ、謝らせ、
店員も手間がかかっている。

揚げたて天ぷら定食はおいしかったけれど、
いまいちスッキリしない気分で
お店を後にしました。

結局、自分で注文を受け付ける店員さん

数日後、別のお店に行くと
そこもタブレットが設置されていました。

やっぱり
おばあちゃんが操作に困っています。
「すいません」と店員に呼びかけると、
呼ばれた店員さんは、
あたりまえのように
口頭で注文を受け付けました。

「天丼、ごはん少なめですね」
「はい・・・すみません」
おばあちゃん、やっぱり謝ってる。

店員さんを見ると、
これまで使っていた注文用の
ハンディ機器を腰にぶらさげ、
いつでも対応できるようにしていました。
操作に困る人が多いからそうしたのか、
最初から対応する前提だったのか。

困っている人を何とかしてあげたい
という現場の人の心意気でしょうか。
常連の年配客を逃さないようにして
売上や客数を維持しようとする
お店独自の努力でしょうか。

その心意気や努力は素晴らしい。
でも、結局これまでの仕事は残っている。

タブレットは
仕事を楽にするために
導入したんじゃなかったっけ・・・

本部は、
客もそのうち慣れてくるだろう
と見込んでいるのかな?

タブレットって、
触り方や指の状態で
反応しにくかったりするけれど、
それを考慮して機器を選定したのかな?

メニュー画面は、まず
高単価のおすすめ商品が目に入ってきて、
たぶん最も注文が多いであろう
お得な「天丼」にたどり着くのに
手間と時間がかかる構造になっている。
やっぱり高い商品を売りたいのかな?

さらに、ごはんの量など
オプション選択ボタンがやや見つけにくい。
作業効率が悪くなるから
できれば対応したくないのかな?

今日も天ぷら定食はおいしかったけれど、
先日よりも、さらに複雑な気持ちで
お店を後にしました。

何を大切にするのか? それは誰のためなのか?

「てんや」さん。

もちろん、これから改善していくのだろう
とは思いますが・・・

どうか、
現場の人の心意気に
いつまでも頼らないでね。
努力に報いるようにしてあげてね。

たまに天丼を味わう日を
ささやかな楽しみにしている
おじいちゃんおばあちゃんに
(勝手に決めつけていますが、たぶんそう)
面倒だし申し訳ないから、もういいや
なんて思わせて、
楽しみを奪わないようにしてね。

何を大切にするのか
それは誰のためなのか
そのために何かを捨てるのか
それとも誰かに負担を強いるのか

そんな「姿勢」を
見ていますよ。

おいしければ
お店に行くことは行くけれど、
ファンであり続けるかどうかは
それしだいかなぁ



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