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尾崎将也の<全部入り>脚本講座  [2]脚本を勉強するとはどういうことか。その難しさとは

(重複度4)

脚本教室と自動車教習所は何が違う?

 プロの脚本家になろうと意気込んで脚本の教室に来ても、実際に脚本家になれる人はごく一部です。なぜ脚本の勉強はそんなに成果が出にくいのでしょうか? 例えば自動車教習所に行けば、ほとんどの人が運転免許を取ることができるのに、この差は何でしょうか? その理由は大まかに言うと次の三つです。

①脚本を書くことがそれだけ難しい 
②何を、どうやって、どれくらい勉強すればいいかはっきりしない
③勉強の内容が多岐にわたり、習得に長期間かかる

 それに対して車の運転は、誰でも免許を取れる程度に易しく、どうすれば運転できるようになるか学ぶ方法が確立しており、比較的短期間で修得できる、つまり上記の三点において脚本と車の運転は真逆なのです。

 難しさをちゃんと分かった上で臨むことは大切です。ある山を、高尾山くらいの高さだと思って登り始め、「なかなか頂上に着かないな」と思ったら実は富士山だったと知ったら、気持ちが萎えるのではないでしょうか。富士山に登るなら、最初からその高さを知った上で装備を用意し登山ルートなどを確認することが必要です。

 脚本家になることがそう簡単なことでなないことは事実なので、そこで嘘をついても仕方ありません。山が高いのなら、その高さを知り、登山ルートを確認し、きとんと装備を持った上で登山を始めればよいのです。そうすればどんなに難しいことでもうまく行く確率が高まります。ほとんどの人がうまくいかないのは、そのへんがよくわからないままに見切り発車して、結果として途中で道に迷うからです。ここに書いてあることをしっかり認識してスタートすれば、トップ集団に入ることが可能です。

インプットとアウトプットの関係

 脚本の勉強を始める人のほとんどが、脚本を書くことにおける「インプット」「アウトプット」の関係をよく理解していません。理解していないというより、意識していないという方が近いかもしれません。まずはここを理解すると、山頂に向けて正しいスタートを切ることができます。

 この世のあらゆる物は、それが出来上がるための「元」になるものが必用です。例えば植物が育つには苗が水分や養分を吸収する必用があります。「結果」の前には、必ずその元になる「原因」が必用なのです。
 勉強や習い事なども同じです。ピアノを習おうとする人は、上手にピアノが弾けるようになるには、ピアノの前に座って練習するという行為を相当な時間やらなくてはならないことを知っているでしょう。この練習がインプットです。東大に入試に受かるには合格点が取れる程度の勉強をしなくてはならない。この勉強がインプットです。

 ところが脚本になると、なぜかそのへんが曖昧になります。もちろん「脚本が書けるようになるには勉強が必要」くらいのことは誰でも思っているでしょう。しかし上にも書いたように、「何を」「どんなふうに」「どれくらいの期間」勉強しなくてはいけないかということになると突然曖昧になります。その原因を明らかにして、正しい捉え方をしましょう。

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