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土曜日の朝に鳴った一本の電話

高校2年生の夏、土曜日の朝に来た1本の電話

その日私は自宅から離れた場所にある祖父母の家に泊まっていた。
4畳くらいの畳の部屋で寝ていた私を起こしたのは1本の電話だった。

ドコモSH902isの液晶に表示されたのは、仲良しの友達の名前だった。

「おはよ~。どうしたのー?」
寝起きなこともあり間抜けな感じで出たと思う。
口を開いた彼女はとんでもないことを言った。

「昨日、、、飲みに行ったの、、、。それで、私いま、ラブホにいて、、、」

「え?」

「起きたらもう一人で、どこにもゴムがなくって、、、どうしよう。」

正直、もうその瞬間で私の記憶は止まっていて、
私は彼女になんて言葉をかけたのが覚えていない。
たぶん身にもならないような励ましの言葉とか、とりあえずお家に帰ろうとかそんなしょうもないこと言ったんだろうな。
でも17歳の私が彼女に的確で気の利いたこと言えるはずなかった。
私はその時まだバージンで、何より13歳から仲良くしている彼女が自分とは全く違う世界にいる人のようで私の頭の中もパニックだった。

なにも知らない私たち、なにもできない私たち

彼女の話によると、
金曜の夜友達と2人で飲みに行き、少し年上の男の子たちと出会った。
友達とばらばらになり、男の子の一人(かっこいいと思っていた方)とラブホに行った。酔っていて細かいところまでは記憶に自信がない。
朝目が覚めたら一人だった。たぶん致したんだと思うけど、ごみ箱にもどこにも使用済みゴムが見つからなかった。
(未成年の飲酒、性行為など本当にいけないことばかりですよね。それを肯定するつもりは皆無ですが、私たちにとってとても重要な出来事だったのでありのまま書きます。)

もしも、同じようなことが自分に起きたらどうしますか?

たぶん大人になった私なら病院に行ってアフターピルをもらいに行く。

でも、私たちは何も知らなかった。
もちろん親に相談なんてできなくて(悪いことしている自覚はあるし、親がどんな反応するかは想像できるし、たぶんそれが怖かった)、
そして私たちは、何もしなかった。

ただただ、彼女が次の月にいつも通り生理が来ることを一緒に祈るしかなかった。

涙、安堵感、そして押し寄せる怖いって気持ち

翌月、彼女に生理はきた。
こんなにも1か月を長く感じたことは、いまだかつてない。っていうほど、緊張感に包まれた1か月だった。

お互い、あの日からできるだけこのことを話さないようにしていたけど、
「来た」って涙をためながら放課後彼女がつぶやいたとき、なぜか私も涙が止まらなかった。

自分に起きたことのように、毎日とても怖かった。
自分の未来が予想もしていない、望まないものに変わっていくかもしれない恐怖

来年には大学に行って、楽しいキャンパスライフ。
自分の好きな仕事に就いてキラキラ働く社会人。
いつか素敵な人と出会って、結婚して、家族を作って、、、

そんな未来が一瞬でなくなることを1か月間毎日考えていた。
何も知らない私たちは自分のたちの未来を守る術がなかったんです。

パパが男の子だと知ったはじめての性教育

結婚をするずっとずっと前から、もしもお母さんになったら絶対にやると決めていたことがある。

それは、『性教育』

私自身が覚えている性教育を受けたタイミングは、3度。
①小学校入学前、母親に見せられたビデオ
②小学校5年生の女の子だけの生理の授業
③中高生時代の保健体育

私の性教育のはじまりは母親に見せられた1本のビデオ
母は当時小学校教諭をしていて、5歳年上の姉のためだったとは思うけど、
ついでに私にも見せていたんだと思う。
おそらく小学校の授業でも見せるような「男の子の体、女の子の体」「思春期」を解説する内容だった記憶がある。

我が家は2人姉妹だったので、年頃の男の子は不在。
そのビデオを見た私の感想は、
「パパって男の子だったんだ!だからあんな体してるんだ」だった(笑

大事なことって頭ではわかっているけど、なんとなくこっぱずかしいというかなんというか、、、恥ずかしいが故に斜めから受け止めることしかできなかった。

自分も誰かも大切にするために教育はある

私が受けてきた性教育は不必要じゃなかったけど、本当の意味で私たちを守ってくれるものじゃなかった。

私は1人の友達の「セーフだった失敗経験」からしか大切なことを学ばなかった。
1人の女の子がハラハラしながら、とても傷つきながらした経験。
いろんなことを学んだけど、代償は大きすぎる。

必要なのは、
バナナでコンドームの付け方を教えるビデオ(これ実際に高校生の時に見たもの)を見せることじゃなくて、自分や周りの誰かを大切にするための知識やマインドを教えることじゃないのかな。

自分でボーダーラインを決めた17歳の夏

友達のあの事件が解決した後、私は自分で自分にルールを設けた。

今の自分にとって一番大切なのはまず志望大学に進学すること。だから、それまでは必ずバージンを守る。

ボーイフレンドもいたし、好奇心がなくなったわけでもないけど、自分の思い描く未来を自分で壊したくない一心だった。
そして何より、自分で自分を守れることを初めて知った。

いつか、お母さんになることがあったら絶対自分の子どもに性教育をしたい。
そう決めた日でもあった。

加害者にも被害者にも、
何も知らないから祈ることしかできない人にも
なってほしくないから。




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