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「小泉敦子の奏でる熟成肉の世界」the final を堪能して来た話

2020年12月20日18時09分、最終日を迎えた「小泉敦子の奏でる熟成肉の世界」の会場に到着した。

18時開場との案内だったが、到着時にはまだ他のゲストは来ておらず、且つ入口付近のカウンターにあつこシェフのお姿を認め、ついTwitterのノリで「あつこシェフー♡」と甘々声で手を振ってしまった…
Twitterでフォローしている憧れの小泉敦子シェフのイベントに参加する幸運に恵まれたのだ。

このイベントに参加するにあたって、実は自らある賭けをしていた。詳しくは書かないが勝ったら申込み、負けたら申込まず我慢、そう決めていた。

そして、見事に賭けに負けたのだ。

え、いやいや負けたのに参加してるやん、と今頃総ツッコミが入っているだろうことは想定内。その通り、本来なら全く幸運では無い。割と重大な賭けに負けたからだ。

賭けに負けて、諦めかけたその時…
なんと憧れのあつこシェフからコメントが…!!!

そんなこんなで、賭けとかサラッとナシにしてちゃっかり申込んだのだった。
賭けに負けたこともあって相当落ち込んでいたので、無理矢理テンション上げていくにはコレしかない!と半ば強制的に理由を付けて、念のため夫に「日曜日、夕飯食べて来ていい?」と確認してからあつこシェフに直接申し込んだのだった。

はー、やってやったぜ!

自分を追い詰めていくスタイル。
これで日々の労働にも意欲が湧くというもの。

と言う訳で、当日は朝から娘に宿題をやらせて、午後は出かける直前まで仕事をし、スチャッと着替えて出かけたのである。

着物で。

着付けを習っておいて本当に良かった。
今回、お料理はセミフォーマルくらいのドレスコードがありそうなお値段だが、会場は割とカジュアルとの事で、スマートカジュアルなクリスマスを意識したコーディネートにした。

どうしても(個人的に)日中の外出には気分的に着て行きにくい黒地に、赤い梅模様の小紋。着物の柄は季節の先取りをするのでギリ梅もセーフ。
お気に入りの鳥獣戯画の袋帯と透けないレースの半襟で雪の白、深緑色の帯揚げでツリーの緑、とクリスマスカラーのコーディネートで出動!
帯締めをベルトにしてカジュアルダウンも忘れない。

支度も間に合い余裕を持って家を出たが、MAPアプリの言うがままに神谷町から歩いて向かったところ、人通りの全くない寂しい夜道の階段と坂道を延々と登らされ、エスカレーターを3回乗り継いで下ると言うルートだった。
ようやく会場に到着するかと言う距離に来て初めて気付いたが、目の前が南北線六本木一丁目駅だった。

oh.no...

帰りは六本木一丁目から帰ることを固く誓ったのは言うまでもない。
普段は着物で赤坂から銀座まで歩けるくらいの私だが、さすがに夜はちょっと寒かった…

しかし、1つ良いこともあった。
途中の泉ガーデンでイルミネーションが綺麗だったのだ。しかも貸切(誰もいない…)

11月から全9回に渡って開催されたこのイベント。会場にはまだ他のゲストが来ておらず、案内された席についてメニューリストを見ながら他のゲストを待っていた。

早めに着いたため、開始前なのにあつこシェフと少しお話も出来た。もうドキドキしてお顔を真っ直ぐ見られない。でもなんとか約束していたお土産も渡すことが出来た。(うっかり属性が強いので渡し忘れて持ち帰る羽目になることも多い)

実はこの日、もう1人憧れのパティシエールさんが参加することを知ってしまい、ちょっとドキドキしていた。
たまたまなのか、あつこシェフの計らいか、憧れのパティシエールさんの斜向かいの席となり、内心ニヤニヤしていた。

そうこうするうち、あっという間にイベントの開始時間となった。

今回のイベントは、熟成肉を扱う格之進の千葉社長から敦子シェフへのラブコールで実現したそうで、千葉社長のご出身地でもある岩手の食材が多く登場した。

さらにペアリングの飲み物が用意されていたので、あまりお酒は飲めないが量を減らしてもらいお願いすることにした。
これは減らしてもらってでもペアリングをお願いして大正解!

ソムリエ南澤氏の素晴らしいセレクトでお料理とのマリアージュはもちろん、好みのワインに出会えた。なんなら、やっぱりボルドーが苦手だということもわかった。

まずは食前酒としてシャンパーニュPiper Heidsieck Cinema Editionが。
黄金色に輝くグラスの底からサラサラと立ち昇る控えめで美しい気泡がこれから始まるめくるめく世界へと誘ってくれる。しばしの現実逃避の始まりである。

今回のコースは、いわゆる冷前菜、温前菜、魚料理、肉料理、と進むのではなく、あつこシェフの奏でるメロディに沿って進んでいく。

定石とはちょっと違った構成にもあつこシェフの挑戦が見え隠れして刺激的だった。

ヤリイカとブレザオーラ 牛醤のエッセンス 玉葱のピュレ

軽く炙った旬のヤリイカにブレザオーラ(牛の生ハム)と会場となっている格之進の名物「牛醤」、玉葱のピュレを合わせている。ヤリイカのプリッとした食感、ブレザオーラのしっとり濃厚な旨味、それをまとめる牛醤と玉葱のピュレ。この組合せはバスク地方では定番とのこと。

鳥肉で作った肉醤は知っていたが、牛醤は初めての体験。肉醤よりもクセがなくヤリイカとの相性も良い。さすがの一言だ。そして一見くせ者揃いに見える素材を玉葱のピュレが上手くまとめてくれている。それぞれを単体で食べても美味しいのはもちろん、2つ3つ4つと組合せを変えて食べても楽しめる、一皿で何度も美味しい!

この「一皿で何度も美味しい」「組合せの妙を楽しむ」というのは、今回のイベントの裏テーマでもあるようで、多くの皿がメニューの解説にもあった「サーフ&ターフ」(アメリカのスーキレストランでポピュラーな魚介と肉が同じ皿に盛られた料理のこと、格之進のおススメメニューでもある)となっていた。

八幡平サーモンのコンフィ “コンソメ・トリプル”

ダブル・コンソメにさらに一手間(バランスの良いところまでゆっくりと煮詰めた)かけたトリプル・コンソメと40℃のオイルコンフィした高橋愛さんの八幡平サーモン(ニジマス)とカリフラワー。サーモンとカリフラワーはクラッシックな組合せとのことだが、特筆すべきはやはりトリプル・コンソメ。塩分を足していないとは思えない濃厚でしっかりハッキリとした輪郭のあるパンチの効いた驚愕のお味。

11月の開催時には温製にて供されたが強過ぎたとのことで、今回はジュレに。
確かにジュレだからこそこのバランス、と納得すると同時に、このコンソメを温かくして飲みたいと言う欲求にも駆られる。それほどのインパクトがあった。贅を尽くすとはこのためにある言葉。

八幡平サーモンのコンフィも言われなければコンフィと気付かないほど繊細な火入れで、タンパク質の変性限界ギリギリを狙った仕上がりは見事と言う他ない。

合わせたのは18' Chablis Vieilles Vignes

平均樹齢50年以上のぶどうを使用した贅沢な逸品。柑橘系のフレッシュなアロマと豊かなミネラルが特徴。

シャブリは初めてだったが、鼻に抜ける爽やかな香りとシャープでスッキリとした飲み口が好みだった。

オマールエビのラビオリ 熟成肉のロースト

ここでロースト出しちゃうの?と思われる向きも多いだろう。正直私もそう思ってしまった。
しかし今回のあつこシェフの挑戦においては必然。堂々の逸品であった。

濃厚なビスクのかかった伊勢海老のラビオリは伊勢海老のプリッとした食感と旨味が素晴らしく、写真では見えないが添えられたほうれん草とマッシュルームも、この黄色いベアルネーズソースと良く合う。心地よいほのかな酸味がビスクとラビオリ、熟成肉を繋いでいる。

ペアリングは18' Marsannay。
ピノノワール100%のAOCマルサネ

ビックリするくらい良い香り、こんな香りの赤ワインがあるとは!
口当たりが滑らかで嫌なえぐみがなく軽やか。ピノノワール…好き…

スネ肉とバラ肉のシードル煮 花巻の葉野菜とりんごのサラダ

とろとろほろほろになるまでシードルで煮込まれたスネ肉とバラ肉が驚きの軽さで待っていた。じっくりと煮込まれた煮込みなんて、ずっしり重いイメージなのに、ずっしり感を微塵も感じさせない軽さに驚きを隠せない。

サラダの下に添えられているのは大好きなアップルシュトルーデルのパリパリ生地。シードルに続きサラダに使われたりんごの使い方も絶妙。りんご縛りの逸品だそう。
サラダの下に隠れていたのは大好きなエゴマスタード!食感が楽しく煮込みの良いアクセントに。

ペアリングは17' Meursault
AOCムルソー、シャルドネ100%

豊潤なボディに心地よい酸味が感じられてこちらも好み。シャルドネ、美味しい!

三陸帆立と熟成肉のステーキ

これぞサーフ&ターフ!とも言うべき一皿。
旬の帆立のポワレとカリッと香ばしく焼いた熟成肉のステーキは有無を言わさず全力で殴りかかられたような暴力的な美味しさ。

ステーキには黒いトリュフソース、帆立の白いソースをステーキに添えても美味しい!
あつこシェフからは白7:黒3でブレンドするのがオススメとのこと。
お肉の下に添えられた菊芋のバターソテーがまたシャキシャキと心地よい食感と大地の風味が、より熟成肉を引き立てる。

ペアリングはきまぐれボルドー
南澤氏の独断と偏見チョイス。銘柄確認しそびれた…
マルサネと全く違う香りに驚いた。赤ワインらしい赤ワインで正直少々苦手だった。

いちごのムラングシャンティ ヨーグルトのソルベ

あっという間にもうデザート。
大好きないちご、大好きなムラングシャンティ、大好きな湯田ヨーグルト、大好きなローズマリー!
大好きだけが詰まった最高のデザート…
もしや私のためでは…?と勘違いしそうになる程大好きな組合せ。
ヨーグルトソルベに移されたローズマリーの香りといちごの甘味と酸味、サクサクと軽く儚いムラングが渾然一体となり素晴らしき夢の世界…あぁ…

美しい盛付けも素晴らしかった!
そして最後の最後に「〆シャン(〆のシャンパーニュ)」が!!
このデザートにこの合わせたシャンパーニュがまた格別!!(これも銘柄確認せず、無念)

そして、その後の紅茶と共に…

お茶菓子と一緒にミニチーズケーキを添えたバースデープレートが!!!

予約時に「今月が誕生月なので」と一言言っただけなのに…あつこシェフ…好き…

憧れのパティシエールさんからも「おめでとう!」と言って頂けて最高に嬉しく美味しい夜になりました。

迷いに迷って、予約して、このイベントに参加出来て、本当に良かったです!
憧れのあつこシェフにお目にかかれて、お話出来て、そしてお料理を頂くことが出来て素晴らしい体験でした。
ありがとうございます!

また次回もあれば是非参加したいと思います。

試作のための食材費や、子供達が使いやすい調理器具の購入に使わせて頂きます!