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サーチャーへの質問①_なぜ起業ではなくサーチファンドなの?_コラム025

セミナーを開催します

〇事業承継をお考えの企業/アドバイザー向け: 8月19日(木) 19時~
https://peatix.com/event/2401976
〇【国内サーチファンド二社 共同セミナー】日本のサーチファンド支援者のリアル: 8月25日(水) 19時~
https://peatix.com/event/2606292

大変ご好評をいただいているセミナーですが、追加開催のご要望が多いこともあり、引き続きやっていきますのでご興味ある方はご参加ください。

セミナーで頂戴した質問にお答えします

セミナーの回数を重ねますと、比較的集中する質問と言いますか、何度も繰り返しきかれる質問が増えてきます。こうした質問は、当日セミナーにいらっしゃらなかった方にも関心を持っていただけるポイントではないかと思い、改めて文章にしておきたいと思います。

よく聞かれる質問 :なぜ起業しないの?

かなりの頻度できかれる質問です。

サーチファンド自体が、Entrepreneurship Through Acquisition(買収型起業)と呼ばれる起業の一手段と定義されることも多いのですが(この定義に異論もあると思いますが)、そんなややこしいことせずに、さっさとゼロから会社起こした方が早いんじゃないか、成功したらリターンもより大きいし、というご質問をよく受けます。スタートアップ隆盛の現在ならではの当然の疑問で、サーチャー候補の方だけでなくFAアドバイザリーさんからもよくきかれる質問です。

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回答:「既存の中小企業を元気にする仕組みをつくる方がインパクト大きいし自分に向いていると思うから」

これがセミナーでお答えしている質問への返答です。口頭では上手に喋れていないことも多いのですが(しゃべりの勉強中です)、およそこのようなお話をしています。

解説します。

まず「インパクトが大きい」という点から説明します。日本の企業数の99%以上が中小企業、従業員構成は約7割、製造業に絞ればその付加価値は5割以上と、日本経済の根幹をなしているのが中小企業です。この数字は時期によって多少前後しますが、この10年くらいは大きな変動がありません。

日本経済の過半を占めている中小企業群というのは、そこで起きる変化は良いものであれ悪いものであれ、日本全体に与える影響がものすごく大きい日本経済に元気がないということは日本の中小企業に元気がなくなっていると言い換えても間違いではありません。

逆に言えば、個々の中小企業が元気になれば日本にも明るい兆しがでてくるでしょう。

ただし、これは私一人の力なぞではどうにもならない壮大な問題です。だからこそ「仕組み」が必要だと思いました。ここでいう仕組みとは、誰かの成功事例をみて「あの人ができるんなら、自分にだってできるはずだ」と別のもう一人が考えて、それをまねて再現するというドミノが続くような流れです。ヒト、カネ、モノ、情報が自律的に集まり循環していくビジネスの流れです。ちなみにその反対は打ち上げ花火、1発ドーンと行くがその後を続けるのがシンドくてやがて終焉してしまう状態です。

ちなみに中小企業の定義はこちらにある通り、営んでる産業別に資本金と従業員数で定義されるのですが、最近ではその存在そのものに対して疑義を呈する言説もききます。私の前職、フロンティア・マネジメント㈱の松岡真宏社長が下記の論考でも述べている通り、「中小企業は生産性も低いし多すぎる(だからとっとと淘汰せよ)」という議論は乱暴だと思いますし、私は違う意見を持っています。この松岡さんの論考を読めば、日本の中小企業の数が世界的にみて極端に多いという主張には、米国やその他各国と比較してみた場合、疑問符がつくと思います。

閑話休題。次に「自分に向いている」というのは、少々長くなりますが私の来歴に関わります。

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「経営パワーの危機」との出会いで人生変わった

社会人になって5年目くらいのとき、「経営パワーの危機」(三枝匡)という一冊の本と出会いました。ベストセラーですのでお読みになった方も多いと思います。

この本は、大企業に勤める主人公が(新規事業開発チームの課長という設定)、不振の投資先企業に経営者として乗り込んで再建するという実話をもとにした経営読み物で、著者の三枝匡さんが大塚製薬グループの子会社(大阪に本社を置く大塚電子だったか?)の再建を託されたときの話がもとになっています。三枝さんは当時まだ30歳代で、再生請負人としての代表取締役就任は異例の抜擢だったと思います。

この本を読んで私が衝撃を受けたのは、以下の2つでした。

■日本の苦境の原因は「日本人の経営力が落ちたからだ」という仮説がものすごく腑に落ちた
■企業再生のプロという職業があることを知った

1990年代以降、日本が明確に長期停滞と衰退に進んでいく時期は、私が中学・高校・大学と大人になっていく時期と重なりました。没落していく日本という国で暮らしながら、何か自分にもできることはないだろうかと漠然と考えていました。

こう考えると「意識高い」んですが、一人の力など本当に無力で、新卒で就職した広告代理店での仕事がその解決策になるようには思えませんでした(就職時は「日本を元気にする仕事をするぞ!」と意気揚々だったのですが)。

「経営パワーの危機」を読んだとき、「単身で企業に降り立って元気にする仕事」が世の中に成立していることに本当に驚きましたし、強く惹かれたのを覚えています。そこで、まずは三枝匡さんが経営するミスミという商社に勤務して経営を学び、その後、企業再生を専門とするフロンティア・マネジメント㈱では、地方の中小企業の経営再建にあたりました。

中小企業の経営再建を通して、日本には素晴らしいオーナー企業がたくさんあること、そして親族承継のタイミングの前後で経営に苦しんでいる企業も実に多いことを知りました。

この仕事は自分に合っていましたし、当面は続けていこうと思っていたのですが、そんなとき、自分が事業承継するという思ってもみなかった道があることを知りました。それがサーチファンドです。日本で最初のサーチャー(探索・経営・イグジットのサイクルを回した人)である伊藤公健さんのnoteを読んたのがキッカケです。ちなみに私と同じようにこのnoteを通してサーチファンドを知った人も多く、いまやサーチャー候補者の必読文献になっていますので未読の方はどうぞ。

で、実際に2020年10月にサーチファンド・ジャパンが立ち上がり、そこでサーチャーに手を挙げて現在に至ります。

企業再生の仕事がサーチファンドにつながった

つまり、いきなりサーチファンドに飛びついたというより、企業再生の仕事(=ターンアラウンド・マネージャー)を続けていく中で行きついたというのが実際のところです。

ターンアラウンドという仕事は非常にやりがいのある、また社会的にも不可欠な仕事だと今でも思っています。また苦しい時期に企業に入り、何より社員の皆さんと汗を流しながら働く仕事は性に合っていました

一方でその課題も見えていたのも事実です。当時のやり方は、オーナー系の中小企業に取締役などで参画し、オーナー社長や従業員と一緒の立場で再建にあたる方法で、いわゆる通常のコンサルティングとはかなり異なっていました。ハンズオンの極致を標榜していたのですが、とはいえそこはピンチヒッターの宿命として、業績を回復させることはできても、企業カルチャーやDNAを根本的に変える状態までにはたどり着けないケースが出て来たのです。苦しい時期を過ぎると銀行もオーナー社長も安堵しますが、ターンアラウンド・マネージャー退任後に業績が悪化する可能性を残したままでの案件終了は、やや不完全燃焼でした。

そんなときに出会ったのがサーチファンドでした。オーナー企業から経営そのものを引き継ぐというのは思ってもみなかった発想であり、このやり方なら本腰を入れて長期間にわたって経営に当たれると思いました

でもちょっと説明が難しい

上記のような経緯からサーチファンドを選択しました。「既存の中小企業を元気にする仕組みをつくる方がインパクト大きいし自分に向いている」と思うのはこのような背景があります。

ただし、、、。この説明はちょっと回りくどいんですよね。話が今から15年も昔に遡ってそこから現在に至る過程をご説明しないとならないので、質問される方の表情をみていると、途中で「いったいいつまで話すんだ?」という反応をされることも多く(私が逆の立場でも同じでしょう)、もっと簡略化してしゃべりたいと思いながら、なかなかできずに苦戦しています。

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#サーチファンド #事業承継



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