【薬剤師は必読】スギ薬局の調剤事故について思うこと
皆さんこちらのニュースはご覧になられたでしょうか?
スギ薬局にて一包化のお薬に、本来入っているべきではない糖尿病の薬が入っていたという調剤事故があり、対象の患者さんが亡くなられたという事故。
医療者としては大変心が苦しい限りですし、何より被害にあわれた方のお気持ちを考えるとやるせない思いではあります。
心よりご冥福を心よりお祈り申し上げます。
今回の事故ですが、薬と死因との因果関係についてはそれぞれの主張があるが、この事故からオクスリに関わるものとして、何か学ばなければいけないと感じました。
今回はオクスリ屋の社長で薬剤師である僕の視点から、教訓にしたいことや改めて感じたことなどまとめましたので、是非薬剤師さんはご一読いただけると嬉しいです!
まず初めに
こんにちは!株式会社OX3(オークスリー)の代表をしております、オクスリ屋の社長「真田康平」です!よく「さなだまる」と言われます。
東京理科大学薬学部卒、ITベンチャーでインターンをしながら、105年薬剤師国家試験に1か月で70点上げて合格。
新卒でリクルートに入社後、教育系SaaSを通じた学校現場のDX化の推進や新規事業の検証等行い、2023年7月に現会社を創業。楽しいキャリアライフを歩んでおります!(詳しくはコチラ↓)
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調剤過誤は薬剤師の怠惰か?
今回の事故は、一つの分包紙の中に「本来は2.5錠入っているべきところを、4.5錠入っていた(過剰にくすりが入っていた)」というもの。
本来調剤されていない医薬品の混入は、前回の一包化時に残っていたものが混入したと考えられています。
気が付くタイミング
今回の場合、気が付くタイミングは全部で4回あったはず。
これだけ見ると、「スギ薬局は監査を怠っていたのでは?」と考えたくなる気持ちはわかります。4回も気付けるポイントがあったにも関わらずスルーしてしまっているわけなので。
ではこの事故は本当に薬剤師の怠惰がすべて原因なのでしょうか?
明日は我が身の可能性
僕は「必ずしもそうとは言えないのではないか?」と考えています。
誰しも1度はヒヤリ・ハット事案は経験したことがあるはずです。
そしてハインリッヒの法則(1:29:300の法則)に則ると、
「1件の重大事故のウラに、29 件の軽傷事故、300 件の無傷事故がある」
つまり今回の案件が大きく氷山の一角としてピックアップされているだけで、その予備軍はそこらじゅうで起きていることになります。
胸に手を当てて考えてみてほしい。
引っ切り無しに続く外来の患者さん
やらなきゃいけない仕事はまだたくさん残っている
手際が良くいつも間違えない先輩薬剤師
今日は予定があって残業できない
こんな状況でも一生100%ミスなくやれる自信のある薬剤師がどれだけいるでしょう。
振り返ってみてもわかるように、人間である限りこういった人的なミスを100%防ぐことは不可能なのだと思います。その上でどのように対策をしていけばいいのか考えていきましょう。
対策方法
前述のことを考えると、「チェックの回数を増やすこと」は良い対策ではなさそうなことがわかります。
「人の心」をハックしないといけません。
その上で対策は3つあると考えます。
まずは手軽なところから見ていきましょう。能力的なミスではなく、こうしたうっかりのミスは、仕事ができるできないに限らず誰でもやってしまうという心持で監査をするようにしましょう。
ヒヤリハットが起こりやすい感情シーンを羅列しましたが、その中でも一番まずいなと思ったのは「きっと○○さんなら間違えてないだろうという前提の監査」です。きっと皆さんもミスの多い方の監査のほうが丁寧にやっているのではないでしょうか?
2つ目は心の余裕を作るためのソリューションです。
それは「徹底的な業務改善」です。プレッシャーや焦りはミスを生みやすくなります。少しでも余裕をもって業務を行えるようにするには、業務オペレーション全体の最適化が不可欠です。
今は業務改善するための様々なシステムも出ていますし、ましてやシステムを使わなくてもオペレーションの工夫はいくらでもできます。
僕自身は業務改善が大好きで得意なので、この辺に関しては常に考えています。もしこのあたりでご不安なことやお困りのことがあれば、気軽にご相談ください!
最後は、人の心に期待しないソリューションです。
自動監査システムや自動調剤システムを用いることで、人だから起こるエラーを減らすことができます。もちろんロボットだから起こるエラーもあると思いますが、ロボット×人であればミスの数は相当へるのではないでしょうか?
上記の3つを再確認して、日々の業務に向かっていきたいですね!
薬剤師の価値の再認識
僕はこの事故を通じて、薬剤師の価値について改めて再認識しました。
薬剤師の役割は、
をサポートすることだという旨をこちらの記事に書きました。
そして、改めてこの視認性が低い「処方監査」という業務に、非常に価値があることを再認識しました。
先ほど調剤過誤について
「1件の重大事故のウラに、29 件の軽傷事故、300 件の無傷事故がある」
というハインリッヒの法則をご説明しましたが、
これは調剤過誤だけでなく、医療過誤全体に対しても言えることだと思います。
今回は「薬の個数が違う」という明らかな過誤でしたが、表に出てきていないだけで、
不要な薬の処方
飲み合わせの悪さや相互作用の確認漏れ
患者ステータスの見逃し
など、小さな過誤から実際に健康被害が生じるものまで、全国ではたくさん起こっています。そしてこれを水面下で防いでいるのが、薬剤師という仕事の大きな価値だということです。
「何を当たり前なことを言っているんだ」
と思うかもしれませんが、改めてその役割を担っていることに誇りとプライドと危機感を持って、業務を行っていきたいということです。
前項でも書きましたが、人は誰でもミスをするものです。
「本当にこの患者さんにこの治療が最適なのか?」を常に疑いながら、共に最適解を探っていくことが本当の意味でのいい医療なのではないでしょうか。
薬はリスク
皆さんこちらの記事はご覧になりましたでしょうか?
バチェラー4に出演していた、休井さんがオンラインで処方されたリベルサス(今回の事例と同じく糖尿病治療薬)をダイエット目的で使用していたところ、体調が悪くなったというもの。
僕自身、オンライン診療や自費診療に関しては、全面的に肯定派です。
医療へのアクセスハードルをもっと下げるべきだと思ってますし、医療こそサービス視点での利便性が大切だと考えているからです。
また糖尿病治療薬のダイエットに関しても海外では承認されていますし、薬を正しく使う分には問題ないと思っています。
しかしこういった事例が起こってしまうのは、使う側のリテラシーはもちろんなのですが、医療者の適切な介入がなされていないことに起因していると考えています。
今回の件もそうですが、薬によって意図していない効果(副作用)が出ることは少なくありません。オンライン医療に非常に期待しているからこそ、正しく医療者が介入し発展していってほしいものです。
きっと、そこには薬剤師の力が必要だと思いますし、僕はその場所をつくりたいと心から思っています。
最後に
いかがだったでしょうか?
僕個人としては、ミスは誰にでもあるものだが、2度と同じミスをしてはいけないと思っています。こういった事故を機に、頭ごなしにSNSで叩くことは簡単です。でも叩いたとて出るのは埃だけです。
僕たちはミスから学びを得なければいけません。
今回の教訓を胸に、誇りをもって薬剤師業務を行いましょう!
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