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好成績の一寸先  大規模賞レース決勝進出者の解散・引退調査

 以前にお笑いナタリーのお気に入りを利用して芸人の解散や引退の数値化を試みました。

 そうしたら、また有名なコンビが何組か立て続けに解散してしまいました。中には大規模賞レースで決勝進出した方々もいらっしゃいます。「一寸先は闇」は誰にとっても当てはまる諺ですけれども、お笑い芸人のような収入が不安定なお仕事はより一層そうでしょう。大規模賞レースの決勝に行ったからと言って、安泰とは限らない。厳しい世界です。

 そこでふと気になりました。M-1、R-1、キングオブコント(以下、KOC)、THE Wという大規模賞レースの決勝に出た組の中で、今のところ何組が解散しているのか。思い立ったが吉日とばかりに、早速調べてみました。

 今回はM-1、R-1、KOC、THE Wの決勝に出場した芸人の中で、ピンならば引退、コンビ以上ならば解散した芸人の数と割合を調査しました。コンビでの活動が休止状態になっている組(例:POISON GIRL BAND、ピース、TKO)は解散に含めません。また、一度解散しても再結成している組(例:合わせみそ)も解散には含めていません。

 M-1は2011年から2014年まで休止していますが、その間の記録はTHE MANZAIの記録で補完してあります。R-1は2003年の開催がされていませんので、そこは飛ばしてあります。記録は2022年5月7日現在のものとなっています。また、各芸人は敬称略となっております。

 まずは各大会ごとに解散・引退芸人をピックアップしてみました。各芸人の成績や、何組中何組が解散・引退したかも載せてみました。それでは、早速参ります。

M-1(2011-2014はTHE MANZAI)
2001(2/10) ハリガネロック(2位)、DonDokoDon(9位)
2002(1/9) ハリガネロック(5位)
2003(1/9) りあるキッズ(5位)
2004(0/9)
2005(1/9) アジアン(8位)
2006(0/9)
2007(1/9) ザブングル(6位)
2008(0/9)
2009(0/9)
2010(1/9) カナリア(9位)
2011(0/15)
2012(0/12)
2013(0/12)
2014(1/12) エレファントジョン(ブロック2位)
2015(0/9)
2016(0/9)
2017(0/10)
2018(0/10)
2019(0/10)
2020(0/10)
2021(0/10)

KOC
2008(0/8)
2009(0/8)
2010(1/8) キングオブコメディ(1位)
2011(1/8) トップリード(8位)
2012(2/8) うしろシティ(5位)、トップリード(8位)
2013(1/8) うしろシティ(8位)
2014(3/10) 犬の心(Final進出)、巨匠(1st敗退)、リンゴスター(1st敗退)
2015(2/10) 巨匠(7位)、うしろシティ(9位)
2016(0/10)
2017(0/10)
2018(0/10)
2019(0/10)
2020(0/10)
2021(0/10)

R-1
2002(0/12)
2004(0/8)
2005(0/8)
2006(0/8)
2007(1/8) 大輪教授(8位)
2008(0/8)
2009(2/10) 鬼頭真也(7位)、夙川アトム(10位)
2010(1/9) 我人祥太(8位)
2011(0/8)
2012(0/12)
2013(0/12)
2014(0/12)
2015(0/12)
2016(0/12)
2017(1/12) ブルゾンちえみ(1st敗退)
2018(0/12)
2019(0/12)
2020(0/12)
2021(0/10)
2022(0/8)

THE W
2017(3/10) アジアン(3位)、中村涼子(1stステージ敗退)、はなしょー(1stステージ敗退)
2018(1/10) 根菜キャバレー(1stステージ敗退)
2019(1/10) はなしょー(2位)
2020(1/10) はなしょー(1stステージ敗退)
2021(0/10)

 いかがでしょうか。最近の大会になればなるほど解散・引退している組が少ない傾向がぼんやり出てる気がします。また、上位に食い込んだ組ほど少ないようにも見受けられますが、優勝してたって解散している組はいるわけで、好成績を残したところで必ずしも安泰ではないことがうかがえます。

 ところで、各大会の決勝進出者における解散・引退率はどれくらいでしょうか。各大会の決勝進出者の全組を100%として割合を計算しました。結果は以下の通りです。

M-1:6.93%(101組中7組)
KOC:8.70%(69組中6組)
R-1:4.13%(121組中5組)
THW:11.43%(35組中4組)

 現状ではTHE Wが最も多く、続いてKOC、M-1と続き、R-1が最も少なくなっています。しかし、R-1だけは解散ではなく引退の割合となっているため、正確を期すならば同列には扱ってはいけません。

 では、解散した組のうち、メンバーの芸人引退が絡んだもののみの割合を調べたらどうでしょうか。まずは、それぞれの解散組のうち、メンバーの引退が絡んだ解散かどうかを調べました。本人または事務所が引退を発表した場合はもちろん、事実上の引退状態となっている方も引退に含めました。

M-1(THE MANZAI)
アジアン(2021年解散):ひとり引退
ザブングル(2021年解散):ひとり引退
カナリア(2018年解散):引退者なし
エレファントジョン(2017年解散):ひとり引退
ハリガネロック(2014年解散):ふたり引退
りあるキッズ(2014年解散):ひとり引退
DonDokoDon(2006年解散):引退者なし

KOC
うしろシティ(2022年解散):引退者なし
犬の心(2020年解散):引退者なし
トップリード(2018年解散):ひとり引退
リンゴスター(2017年解散):ひとり引退
巨匠(2016年解散):ひとり引退
キングオブコメディ(2015年解散):ひとり引退

THE W
はなしょー(2022年解散):引退者なし
根菜キャバレー(2021年解散):ひとり引退
アジアン(2021年解散):ひとり引退
中村涼子(2018年引退):引退

 念のため、R-1も載せておきます。

R-1
ブルゾンちえみ(2020年引退)
鬼頭真也(2018年引退)
大輪教授(2014年引退)
夙川アトム(2011年引退)
我人祥太(2011年引退)

 引退が絡んだ解散のみで計算した結果は、以下のようになりました。比較として全ての解散組の割合を併記しました。

M-1:4.95%(101組中5組) ←6.93%
KOC:5.80%(69組中4組) ←8.70%
R-1:4.13%(121組中5組)
THW:8.57%(35組中3組) ←11.43%

 R-1の割合が変わらないのは当然として、他の大会はそれぞれ2~3%程度減らし、R-1の記録に近づきました。ただし、順位に変化はありませんでした。

 ちなみに、解散または引退したのは最後に好成績を収めてからどれくらい経ってからでしょうか。そちらも気になりましたので、全芸人をざっと調べてみました。ついでに結成からどれくらいまで活動していたかも調べてあります。ネット上の情報ではデビューや引退の時期が定かでない方もいらっしゃいましたが、その場合は最も確からしい年にしてあります。

うしろシティ
結成(2009年)→KOC 5位(2012年)→KOC 8位(2013年)→KOC 9位(2015位)→解散(2022年)
・結成から約13年
・最後の決勝進出から約7年

はなしょー
結成(2012年)→THE W 1stステージ敗退(2017年)→THE W 2位(2019年)→THE W 1stステージ敗退(2020年)→解散(2022年)
・結成から約10年
・最後の記録から約2年

アジアン
結成(2002年)→M-1 8位(2005年)→THE W 3位(2017年)→解散(2021年)
・結成から約19年
・最後の記録から約4年

ザブングル
結成(1999年)→M-1 6位(2007年)→解散(2021年)
・結成から約8年
・最後の記録から約14年

根菜キャバレー
結成(2018年)→THE W 1stステージ敗退 (2018年)→解散(2021年)
・結成から約3年
・最後の記録から約3年

犬の心
結成(1998年)→KOC Final進出(2014年)→解散(2020年)
・結成から約16年
・最後の記録から約6年

ブルゾンちえみ
デビュー(2015年)→R-1 1st敗退(2017年)→引退(2020年)
・デビューから約5年
・最後の記録から約3年

トップリード
結成(2001年)→KOC 8位(2011年)→KOC 8位(2012年)→解散(2018年)
・結成から約17年
・最後の記録から約6年

鬼頭真也
デビュー(2000年)→R-1 7位(2009年)→引退(2018年)
・デビューから約18年
・記録から約9年

中村涼子
デビュー(2007年)→THE W 1stステージ敗退(2017年)→引退(2018年)
・デビューから約11年
・最後の記録から約1年

リンゴスター
結成(2010年)→KOC 1st敗退(2014年)→解散(2017年)
・結成から約7年
・最後の記録から約3年

エレファントジョン
結成(2004年)→THE MANZAI ブロック2位(2014年)→解散(2017年)
・結成から約13年
・最後の記録から約3年

巨匠
結成(2008年)→KOC 1st敗退(2014年)→KOC 7位(2015年)→解散(2016年)
・結成から約8年
・最後の記録から約1年

キングオブコメディ
結成(2000年)→KOC 1位(2010年)→解散(2015年)
・結成から約15年
・最後の記録から約5年

ハリガネロック
結成(1995年)→M-1 2位(2001年)→M-1 5位(2002年)→解散(2014年)
・結成から約19年
・最後の記録から約12年

りあるキッズ
結成(1996年)→M-1 5位(2003年)→解散(2014年)
・結成から約18年
・最後の記録から約11年

大輪教授
デビュー(1998年)→R-1 8位(2007年)→引退(2014年)
・デビューから約16年
・最後の記録から約7年

夙川アトム
デビュー(1999年)→R-1 10位(2009年)→引退(2011年)
・デビューから約12年
・最後の記録から約2年

我人祥太
デビュー(2005年)→R-1 8位(2010年)→引退(2011年)
・結成から約6年
・最後の記録から約1年

DonDokoDon
結成(1994年)→M-1 9位(2001年)→解散(2006年)
・結成から約12年
・最後の記録から約5年

 一応、平均値と中央値も出してみました。

[平均値] 結成から:約12.3年 最後の記録から:約5.15年
[中央値] 結成から:約12.5年 最後の記録から:約4年

 結成からのカウントは平均値と中央値がかなり似ていますが、それに比べて最後の記録からのカウントは微妙にずれており、気になります。というわけで、解散までの年数分布をそれぞれ棒グラフで表してみました。

 まずは結成からカウントしたバージョンです。

結成から解散・引退までの年数分布

 縦軸が組数、横軸が結成から解散・引退までの年数を表します。つまり、結成から約8年で解散・引退したのは2組いるというわけですね。

 結成からカウントしたバージョンですと、最小の3年から最大の19年までの間、各年数に0~2組が存在し、グラフを見ても分かる通りかなりばらけている印象です。

 では、最後に決勝へ進出してから解散・引退した場合はどうでしょう。

最後に決勝進出してから解散・引退までの年数分布

 縦軸が組数、横軸が最後の記録から解散・引退までの年数を表します。先ほどのグラフと比べ、分布が若干異なっているのがお分かりでしょうか。最小は1年、最大14年となっていますが、1年~3年の辺りの山が最も高く、年数を経るにしたがって低くなっていっているように見えます。つまり、決勝から3年くらいまでが最も解散・引退の確率が高いという結果になります。

 ただし、そもそも調査した組数が少ないため、今回のデータが偏っている可能性は充分に考えられます。より正確な統計を取るためには、より多くのデータが必要となるでしょう。

 今回の調査をザックリまとめると以下のようになります。

  • 大規模賞レースの決勝に行っても、好成績を叩きだしても解散する時はする。

  • ピン芸人の引退よりもコンビの解散の方が多い。

  • 大会ごとの比較ではTHE W、KOC、M-1、R-1の順に多く、4~12%くらい。

  • 結成・デビューから解散・引退までの期間は今のところバラバラ。

  • 最後の決勝進出から解散・引退までの期間は1~3年が比較的多い。

  • まだまだサンプル数が少なく、今後の結果によって傾向は大きく変わりそう。

 今回は以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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