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「旅行」の歴史をしらべたら面白かった

こんにちは!recotoriという旅行SNSを運営しているowano(@owano49)です。これまで「旅行」や「旅行産業」について深ぼって調べたことがなかったので、その成り立ちや歴史について調査してみました。

なんの役に立つのかわかりませんが、「へぇ〜そうなんだ」というユルイ気持ちで読んでみてください!
(なお、このnoteでは「日本」における旅行の歴史をまとめています。)

日本には”3つの旅”があった

「旅行」と聞くと、現在は「娯楽・レジャーとしての旅行」を想起しますが、日本の歴史においては、大きく3つの旅が存在しました。

1.「生きるための旅」

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最初の旅は狩猟採取時代(旧石器〜縄文あたり)までさかのぼります。当時は食料を採取したり、気候変動や天災から身を守るための「生きるための旅」がメインでした。

2.「強制される旅」

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その後、国の防衛や納税のために必要な移動が生まれました。「強制される旅」です。たとえば、飛鳥〜奈良時代では、九州の防人のような国を守る業務であったり、租庸調などの税を納めに行くための移動がありました。当時の納税は重い荷物を背負って都まで移動するのですが、旅の途中で食料が切れて死んでしまう人もいたり、まさに「旅=命がけ」だったそうです。

ちなみに、日本最古の税は、邪馬台国の女王・卑弥呼によるものだそうです(『魏志倭人伝』)。もしかすると、弥生時代(3世紀ごろ)には「強制される移動」はあったのかもしれませんね。

3.「自ら好んでいく旅」 〜修行や巡礼〜

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そして、平安時代になってようやく現代の観光のような「自ら好んでいく旅」が始まるのですが、こちらもレジャーや観光ではなく、僧侶による修行や巡礼といった宗教上の「信仰」が目的とされていました。

交通環境も整っておらず、とても険しい山道を移動するため、旅はまだまだ危険なものでした。

ちなみに、当時盛んだったのは「熊野詣(くまのもうで)」と呼ばれる、熊野三社への参拝です。熊野を往来する人が、まるでアリのように行列をつくっていたことから「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど流行しました。
この時代で有名な人が、時宗を開いた一遍です。この人は10歳で出家して以来、51歳で亡くなるまで行脚(あんぎゃ)を続けたという、まさに「人生は旅なり」の人です。ほかにも、栄西、法然、親鸞、道元、日蓮など、よく教科書にでてきた人も、鎌倉、京都、博多などを行き来した旅人だったそうです。

その後、室町時代になると、信仰の中心は三重県の伊勢神宮へと移っていきます。これは、同じ御利益があるのなら、熊野詣のようにわざわざ険しい山道を行くよりも、平坦な道にある伊勢神宮に行きたいと思うようになったからです。

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レジャー・観光としての「自ら好んでいく旅」のはじまり

江戸時代に入り、いよいよレジャーとしての旅行(観光)がはじまります。当時の庶民が一生に一度は達成したい夢として「お伊勢参り」とよばれる伊勢神宮へのお参りが大流行しました。

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(出展:国立国会図書館デジタルコレクションより)

当時は、庶民が他の藩に移動することは禁止・制限されていたのですが、「宗教上の信仰のため」という大義名分を掲げることで、移動する許しを得ることができたんですね。

この時代に庶民にも旅行が広まっていった主な背景は以下です。

■交通インフラが整備された
徳川家康によって、五街道や宿場町などの交通インフラが整備され、移動がしやすくなりました。宿場町には、宿泊施設の旅籠や木賃宿、飲食や休息をとるための茶屋、移動手段の馬や駕籠(ただし値段が高く大名や役人がほとんど。庶民は徒歩での旅行がメイン)、商店などが並んでいました。

■貨幣が発展した
また貨幣も数十分の一〜数百分の一の重さになって、割符(さいふ)と呼ばれる為替機能を持つ有価証券も生まれ、身軽に旅ができるようになったことも後押ししています。

■「旅」を題材とする本や浮世絵の大ヒット
つづいて、気晴らしの観光旅行を題材にした本『東海道中膝栗毛』が世間で流行しました。これは、2人の江戸町人が伊勢参りに行くという名目で、実際には各地を観光したり遊び呆けるという話です。

平安時代の熊野詣のような旅は信仰心からでしたが、江戸時代になると、だんだんと信仰心が名目化して、建前になってきたんですね。

さらに、浮世絵の世界でも、歌川広重の『東海道五十三次』で東海道の宿場町が描かれたり、庶民の旅行意欲がマシマシになっていきます。
余談ですが「観光」という言葉の由来は、中国の「観国之光(国の光を観る)」という言葉です。観光とは「他の国へ行って、良い点を見て学んでくる」という意味なんですね。なるほど。

旅行代理店、旅行ガイドの起源は江戸時代

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この頃、庶民でも旅行をしやすくなったとはいえ、とてもお金がかかるので誰しもかんたんに旅ができたわけではありません。前に述べたように、庶民にとって長期の旅行は「一生に1度いきたい夢」でした。

そこで、少しでも旅行に行きやすいように、「何人かでお金を積み立ててお参りに行こうぜ!」というグループ(講=こう)が組まれ、みんなで旅費を積み立てて、代表がお参りに出掛けたり、何年かに一度みんなで旅行にでかけました。

また、それぞれの寺社には、道案内や宿の世話をするガイド役(御師=おし・おんし)がいて、参拝、ならびに宿泊、食事等の手配をしたそうです。

団体での旅行を斡旋して、ガイドもする。現在の旅行代理店やツアーガイドの超原型がこの時代に生まれたんですね!

明治時代から、さらに大衆化していく旅行

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明治時代になると、一般庶民による観光需要がさらに増加し、どんどん大衆向けの娯楽となっていきました。背景としてはたとえば下記があげられます。

■自由に移動ができるようになった
江戸時代では制限されていた庶民の移動が、明治時代になって解禁されました
。たとえば、明治2年には全国にある関所が廃止され、携帯が義務化されていた通行手形も廃止されました。

■鉄道や橋など交通インフラが整備された
また、明治時代の初期には鉄道がはじめて開通し、その後も全国津々浦々へと路線を伸ばし、鉄道を使えば全国どこでも、なんとか移動ができるようになりました

また、鉄道の駅を中心にして、旅館やホテルも多く建てられたそうです。江戸時代の宿場町もそうでしたが、交通インフラの発展にあわせて、宿泊施設もたくさん建設されていくのが興味深いです!

■修学旅行、新婚旅行、社員旅行、といった団体旅行ブーム
そして、明治以降〜第2次世界対戦あたりまで、日本人の国内旅行をもっとも推進したのは、修学旅行、新婚旅行、企業・地縁による団体旅行です。これらによって、本当の意味で庶民にも旅行が広がって一般化していきました。

修学旅行
1888年に文教政策の一環として正式に発足した、全国民を対象とした学校旅行制度です。現代にもつづいている修学旅行は、明治時代にはじまったんですね〜。

新婚旅行
欧米のハネムーンから由来したもので、坂本竜馬が新婚旅行をした初めての日本人といわれています。新婚旅行は修学旅行と同じく日本人にとって通過儀礼の旅ともいえ、経済的ゆとりのない大衆でもなんとか経験する貴重な旅だったそうです。

企業・地縁による団体旅行
外せないのが、社員旅行です。これは日本独特の旅行形態で、社員や団体員の慰労を目的として、温泉地への旅行がメインでした。

1960年代から国内&海外旅行がさらに伸びる

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まだまだ旅行産業は拡大しつづます。第二次世界大戦以降、個人単位での旅行も増えていきました。ここでも、交通インフラの発展などが大きく貢献しています。

■東京オリンピック
これまでは鉄道がメインでしたが、1964年の東京オリンピック開催に伴って、道路網等のインフラが整備されました。これによって、バスや自動車での移動も増加しました。

■新幹線&飛行機&マイカーの普及
さらに、1964年に生まれた新幹線や、1970年代中盤ごろからのマイカーの普及によって、個人がさらに移動しやすくなりました。

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それまでの新婚旅行は熱海や湯河原がメインでしたが、京都、さらに宮崎と遠い場所に目的地が変わりました。飛行機が発達してからは、沖縄、北海道など、さらに遠隔地が選ばれるようになりました。

■海外旅行の自由化&ジャンボジェット機の導入
海外旅行も、この時期から右肩上がりに上昇しました。1964年に海外旅行が自由化となり、1970年にはジャンボジェット機の導入がされて海外旅行市場が急進しました。途中、オイルショックで鈍化したもののなだらかな成長をし続けました。

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この頃から新婚旅行ではハワイ、グアム、サイパンなどの海外が人気になっていったそうです!

■プラザ合意以降の急速な円高&バブル経済
さらに1985年秋のプラザ合意以降の急激な円高と、バブル経済の影響もあって、海外旅行者数は1990年に1000万人の大台を突破しました。

東京オリンピックに向けた道路整備だったり、新幹線やマイカー、飛行機などの交通インフラの発展とともに旅行市場が拡大していったことは、非常に興味深いです!

その後も海外旅行の市場は着実に成長を続け2000年には1782万人と当時の史上最高を記録しましたが、相次ぐテロ、SARSなどで一時は減少に転じました。その後、官民一体の政策による後押しもあって、2019年には日本人海外旅行者数が過去最高を記録し、史上初の「日本人海外旅行者数2000万人」を達成しました。

さいごに

2020年は新型ウイルスの感染拡大による旅行の延期や中止の影響等により、総取扱額は海外旅行、外国人旅行、国内旅行のすべてで大幅に減少しました。

いつになったら2019年ごろのように旅行が活性化するかは先行き不透明ですが、早く安心して旅行に行ける世の中が戻ってきたら嬉しいです。

そして今回、旅行の歴史を調べてnoteにしたのは初めてですが、学んだ内容を要約できて頭が整理できました。また、昔は旅行がそもそも禁止されていたり、一生に一度しかいけない時代でしたが、現代の日本では、お金さえ払えば気軽に何度でも旅行にいける時代なので、「かなり良い時代に生まれたな〜」と思いました。

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【参考文献】
マスツーリズムの歴史的変遷と今後の行方
日本と旅の歴史観光はいつ生まれたか
旅行(wikipedia)
史上初めて日本人海外旅行者数2000万人を達成しました!
主要旅行業者の旅行取扱状況速報(令和2年12月分)

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