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CI刷新に込めた、戦略と開発の裏側。

グループロゴが斜め45°ってアリ!? マテリアルグループCI・VI刷新プロジェクトの裏側

2024年に上場を果たした、PRコンサルティング事業を主軸としたあらゆるビジネスのマーケティングコミュニケーションを総合的に支援する専門事業集団 「マテリアルグループ」。そのCI・VI刷新プロジェクトをOVERAで担当いたしました。

新たなCIを土台とした、マテリアルグループの新たな象徴「斜めロゴ」の開発、「Webサイト」、さらにはステークホルダーをはじめマテリアルグループに触れる人々への徹底周知を狙い、ホリスティックな視点を持ってアイテム展開をし、一貫したクリエイティブディレクションを実施。

「自分たちのはたらき方の根本に戻れる」「目にした人との会話が生まれる」完成後にこのような声が聞こえるようになった、コミュニケーションツールの1つとなった制作の裏側を、振り返っていきます。




プロジェクト概要

【対談メンバー|プロジェクトメンバー】左からクリエイティブプロデューサー 今川雅幸(OVERA)  ストラテジスト 辻原 咲紀(OVERA) マテリアル取締役  関 航さん アートディレク
ター / デザイナー 岡本健太(OVERA)

【対談メンバー|プロフィール】

話し手:関 航さん
マテリアル取締役

2014年新卒1年目で当時20名程のマテリアルへ転職入社。入社と同社にプランニングセクションを立ち上げ、マテリアルグループの中核になる「ストーリーテリング」の概念を確立。国内外120以上のアワードを受賞。2018年にはカンヌライオンズの「グローバルPRエージェンシー」ランキングにおいてアジア勢首位獲得を牽引。現在はマテリアルの経営と、CMO代行事業・CVC事業に従事。

話し手:今川 雅幸
OVERA株式会社  クリエイティブプロデューサー

長年、欧米の著名ファッション・コスメブランドの広告宣伝を中心に活動。
2019年OVERAに参画。グラフィック、スペース、WEBデザインなどトータル領域でのCRに強みを持つ。自身が担当したWEBサイト作品がRed dot design awardでbest of the best、webby awardでwinnerを受賞するなど多数のアワード獲得を牽引。近年はCI、VI領域でも多くの実績を持つ。

話し手:岡本 健太
OVERA株式会社  アートディレクター

印刷会社のDTPオペレーターからキャリアスタート。
事務所の立ち上げからのJOIN、フリーランス経験、様々な環境で媒体問わず幅広いプロジェクトを経験。独自性を表現に落とし込んだ、世界に一つのデザインにこだわり、アートディレクター兼コミュニケーションデザイナーとして幅広く活動中。

聞き手:​​辻原 咲紀
OVERA株式会社 チーフデザインストラテジスト

企業価値向上に向けたコーポレートデザインシステムマネジメントを専門に、経営、事業開発、ブランドコミュニケーションの各分野で、横断的に多岐にわたるデザインプロジェクトに取り組む。


ーーはじめに、今回制作したCI・VIの中でも特に際立っているグループロゴについてお聞きしていきます。企業ロゴとしてもグループロゴとしても既視感のない、まるごと45°傾いたロゴが完成しました。反響はいかがですか?

関さん:社内外ともに、一目みた瞬間に「え?」って絶対に言われるロゴになりましたね。ロゴ刷新についての持論からお話しすると、『自分から語りにいってはいけない』ものだと考えているんです。ロゴを見たお相手から「これはどういう意味ですか?」と聞きたくなるものにする、ということをそもそも目標としていました。
そういう意味で言うと、この斜めロゴは良い意味で違和感を持ってくださる方が多く、「これはどういう意図で生まれたんですか?」と聞かれることが多いので、目指した通りになりましたね。

今川:既視感のある普通のロゴでは、そこまでのコミュニケーションは生まれないですよね。

関さん:今回の斜めロゴは、ともに刷新したグループのCIと密接に関係しています。ロゴについての質問に答えることは、すなわちマテリアルグループのCIをご説明することになります。『お相手から聞かれて答える』というコミュニケーションを生み出し、企業姿勢の浸透に繋げる。ロゴを起点としたコミュニケーションが生まれる設計になったところが、今回のプロジェクトの良さだと感じています。



【STEP1|CI制作】グループ社員の意見を引き出し、まとめあげる

ーーCIとVIが密接に関わっている。このプロジェクトの進め方についてお聞きしても良いですか?

辻原:今回のプロジェクトでまず着手したのは、グループのCI刷新でした。私はそこを担当しまして、最初に社員30人強へのインタビューと、100人以上へのアンケートを行いました。これにより、まずは「マテリアルグループとしての働き方」を言語化しようと考えたんですね。
ですから、CIに関しては「新しく作った」というよりは、マテリアルグループに関わる人たちがすでに持っていたものを抽出して言語化する工程でしたね。

今川:CI・VIを一気通貫で行った今回のプロジェクトではここが一番大切で、CI制作の時点でしっかりとマテリアルグループの指針が決められたことが、その後のクリエイティブワークの土台になりました。

関さん:文化の違う7社が集ったマテリアルグループにおいて、働く社員たちにとっての「マテリアルグループ」を丁寧に紡ぎ出せたこと、このプロセス自体が印象深かったですね。正直、真面目に面倒くさいことに取り組んだと思うんです。しかし、良いプロジェクトには、結局面倒くさいことが多いんですよね。



【STEP2|VI制作】これまでの価値観や常識をいかに超えていくか?

ーーCIが決まり、どのようにVIと連携していったのでしょうか?

岡本:デザインを担当する私の元に、最初に来た条件は下記のようなものでした。

<デザインに取り掛かる前の前提条件>
・キーワードは、VISIONであるSwith to Red.=世界を赤く染めていく
・キーカラーは、マテリアルグループがもつ熱量を可視化し、先進性を印象付ける高彩度の赤

今川:「世界を熱く染めていく」という言葉をどうデザインに落とし込んでいくか、と考えた時に、「一番効率よく、一番遠くまで染める角度は、理論上45°である」という仮説から「45°+」というスタンスを持つロゴを提案しました。
もう一つ、タグラインの「すべての個性に情熱を灯せ」から着想したロゴも検討したのですが、「45°+」のスタンスを潔く表現している方がマテリアルグループとしての姿勢が伝わりやすいと判断したんですね。さらには、既視感もないし、どこの企業とも被らないなと。

岡本:当初は正体(せいたい)のロゴに45°の角度が刻まれているディテールで、45°に立ち上がる、45°のスタンスを常に持っているロゴとして表現していました。それを見た関さんから「そもそもロゴ自体を傾けたら?」という提案があって、ハッとして。

当初はこれは45°に立ち上がる角度を持ったデザインとして進んでいた。

岡本:「僕らも45°+のスタンスになりきれていなかった!」と(笑)。

今川:それ以降、クリエイティブチームにも「45°+」の姿勢が浸透して、「これ、45°+じゃなくない?」みたいな感じで、アウトプットの軸にもなっていましたね(笑)。

岡本:この時に、自分自身、「グループロゴといえば、正体が当たり前」という固定概念を持っていたことに気づかされました。もちろん、様々な場面で展開されるので汎用性や可読性は考慮せねばなりませんが、思い切り「マテリアルグループを表現していいんだ」と、スイッチが切り替わった感覚はありましたね。

今川:ただ、既視感がないということは斬新で話題にはなりやすい一方で「万人が受け入れ難い」という状況を生み出してしまう可能性もありますから、僕らとしても、斜めロゴはチャレンジングな提案でした。
検証の結果、「ロゴそのものを45°の角度にしたものが良い!」となってからは、展開が早かった気がします。

岡本:そう思うと、やっぱりCIで「45°+」というマテリアルグループのスタンスが言語化できたことが、クリエイティブにエンジンをかける大きな着火点になりましたよね。
グループが掲げる壮大なビジョンに対して、「じゃあ個人はどのような姿勢で何をすればいいんだっけ?」という問いはどうしても生まれてしまうもの。そこに「どんな時も、上向きのスタンスでいこう。」というマテリアルグループのスピリットが可視化されたロゴがあることで、個人の日々の営業活動にも影響していくといいですよね。

今川:「ここまでやっちゃっていいんだっけ?」の空気もある中、何度も何度もクリエイティブジャンプさせてくれたのは、マテリアルグループだからだと思います。これまで数多くの案件をご一緒してきた中で見てきたマテリアルグループの仕事ぶりを、まさに僕らも体験したプロジェクトでした。



【STEP3|カラー開発】一色には絞れない、マテリアルグループの「赤」の表現

ーーロゴだけでなくカラーパレットも印象的ですが、これはどういった意味合いを込めているんですか?

岡本:カラー開発も、キーカラーは高彩度の赤と決まっていた中で、プロトタイピングをたくさんしましたね。

関さん:色々な赤を提案してもらった中で、どれか一色に絞るというよりは、この微妙な色の違いが、社員一人ひとりの個性の表現になっているのではと感じて。

岡本:「そうか、一人ひとりそれぞれの情熱の色があるんだ」と捉えて、それこそがマテリアルグループが持っているアセットだと、表現をそのままVIにつめこみました。

あらゆる赤を表現したマテリアルグループの赤色パターンアセット


今川:このレッドピクセルズにも、45°のスタンスが隠れていて。多様な赤がありつつ、一人ひとり、自分の情熱の色からスタートしても、最終的にはマテリアルレッドに辿り着くようになっているんです。

岡本:ロゴを含め、ビジュアル作りにおいてもCIとブレないように、常に立ち返って睨めっこしながら進めました。この進行方向は新鮮で、コンセプトさえ決まれば表現はいくらでもアップデートできるので、「信じられるもの」をどう表現するか?をとことん検証できたのは面白かったですね。

関さん:総括すると、まず「これだと思えるコンセプト」を発見して、そこからブレないように全てのクリエイティブを合わせてきました。立ち返るものがないと、こだわってもよくわからなくなりますからね。CI・VIを一気通貫で行ったことで、この流れがすごく大事だなと再認識したプロジェクトでした。



CI・VIを世間に浸透させる、ホリスティックなアウトプット

ーー今回のCI.VI刷新において、名刺やブランドガイドブック、PPTフォーマット、IRムービーやZOOM背景、ステッカー、ステーショナリーに至るまで多様なアウトプットが出ていますよね。この狙いは、どのようなものだったんですか?

今川:プロジェクトの最初の段階から、完成したクリエイティブをホリステックに展開していくことは想定されていました。なので僕らも、「ビジネスシーンにおいて、いつどういった場面でクリエイティブを活用できるか?」は常に考えていましたね。

関さん:VIは会社の顔、表情、服装、立ち振る舞いそのものと認識しているんです。ブランドガイドは、その羅針盤です。
ビジネスシーンであらゆる人と接するときに、最初の挨拶である名刺から、商談の場であるオンライン会議の背景、封筒、ステッカー...全てのツールにアイデンティティを詰めないと、マテリアルグループのスタンスを伝えるという面では意味がないと考えていました。

今川:最初に関さんからお話いただいたのが、「新橋のサラリーマンが見ても、巣鴨のおばあちゃんが見ても、世界中の誰が見ても、一番情熱的な会社だねって言われたい」というオーダーでしたもんね。
さらには、「なんでロゴ斜めなんですか?」という疑問からマテリアルグループのアイデンティティを理解してもらい、「上向きのスタンスっていい言葉ですよね!」といった会話が生まれていると聞きました。
初対面の方、長い付き合いの方問わず、様々なステークホルダーとの間で前向きな発話が生まれるクリエイティブになったことが、今回のプロジェクトの何よりの成果だと感じています。



まとめ

課題
✔️上場を見据えて、文化の異なる7社が集うマテリアルグループにおける「マテリアルグループとは何か?」を一眼で理解できるCI・VIに刷新したい。

期待
✔️ 面倒なことに真面目に取り組み、現場の声を掬い上げたクリエイティブを行うこと。

結果
✔️ 「マテリアルグループらしさ」について社員の納得感を得たクリエイティブが完成、さらにはあらゆるステークホルダーとの会話のきっかけになった。



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