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【1分小説】翅脈

 カフェラテに蝿が落ちた。必死に蠢いていた肢足も次第に黙り込んでいく。時にしておよそ300秒、ミルクが翅脈に浸透しながらしながら、命が除々に尽きていくのをぼうっと眺めていた。こいつはそういう運命にあったのか、あるいは、こいつの自由な意志がトラップになったのか知らない。とかく、私は哀悼する他できない。蝿を追悼する。牛乳を追悼する。エスプレッソを追悼する。黙祷を捧げる私の声を聴く死脈が、苦しいって今日も私を求めて呻く。

【翅脈(読み) シミャク】

昆虫類の翅(はね)に見られる分岐した条脈。

中空のキチン膜からなり、翅の補強に役立つ ほか、体液が流れ、気管や神経が分布して代謝をつかさどる。

また、分類学上の重要な目安となる。

(三省堂 スーパー大辞林3.0)

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