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【1分小説】絡繰

 海底の昆布のように潮に流される群衆を、渋谷スクランブル交差点、TSUTAYAから、鴎の目で眺めていた。人は鳥瞰すると文字通り上から目線になる。それが心理的トポロジーの単純な絡繰とも知らずに、人は人を卑下する。ここは賤しい音素で満ちている。

 だから、この炎天下を歩く縒れたワイシャツおじさんに握られるハンディファンに私はなりたいと、思った。頭頂から覗く汗が滲む肌、汗で肌着のぴったりくっついた輪郭を顕にするビール腹、そのベタついた手の中でうねる似つかわしくない私。誰よりも彼を癒す装置でありたいと、思った。

【絡繰(読み) カラクリ】

①糸・ぜんまい・水などの動力を利用して、 人形や器物を動かす仕掛け。また、その仕掛けを使った見せ物。
② 機械などの動く原理。また、仕組み。仕掛け。「時計の一」
③ 計略。たくらみ。「一を見抜く」
④「からくり人形」の略。
⑤やりくり。やりくり算段。「一の上手は内 を能く見せる/誹風柳多留151」

(三省堂 スーパー大辞林3.0)

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