「解脱したい」

【日日是考日　2020/10/15 #003 】

Googleで「解脱」と検索したら、
関連ワードに「解脱したい」と出てきた。
はじめは、なんともどうしようもない煩悩だと思って、なんとなく滑稽にみえたが、
ちょっと引いてみると、一生のうちで一度でも「解脱したい」と考えるような人も、そうどこにでもいるような存在じゃなかろうと、なかなか珍稀に思われてくる。

それは、「幸せになりたい」みたいなあり溢れた欲求ではなく、
「いっそ、消滅、霧消してしまいたい」という、
どこに当てつけることも出来まい不満である故に、僅かにでも救われる可能性をも縋りたくもなるような、どうにも仕様のない懊悩を抱えているのかもしれない。

まして、「解脱したい」とネットを調べ、つまりその実践方法を求めているくらいだから尚更である。
(「幸せになりたい」と思って「幸せになりたい」検索する人の心情を考えると一層その深刻さに気付く。)

この検索者は
和尚に猜疑を抱く真面目な修行僧かもしれないし、
貧困に喘いで生きることにいっぱいっぱいで絶望に苛まれた人かもしれないし、
あるいは、自殺志願者でもあるかもしれない。

こういう救いようもない人生、小説にでもなり得るかもしれない人生が、
一寸先のGoogleの検索結果から想像されるのだから、
ドラマティックな物語は(創作だろうとなかろうと)至るところに転がっているのだろう。