見出し画像

「平成31年」雑感14 「死刑執行」の決裁には二つの道がある件

▼2018年7月7日付の各紙報道のなかに、「どうやって死刑は執行されるのか」についての少し詳しい記事があった。毎日新聞から。適宜改行。

〈死刑を決める手続きはどう進んだのか。

 毎日新聞が過去に情報公開請求で入手した文書や同省関係者らの話を総合すると、死刑執行は刑事局総務課が起案する。

▼へー、総務課なんだ、と思った。

〈その後の決裁は二つの道筋がある。

1)「死刑事件審査結果(執行相当)」と呼ばれる文書に法相と副法相が署名し、事務次官や刑事局長など法務官僚5人が押印する「刑事局ルート

2)死刑囚を収容する拘置所を管轄する矯正局と、恩赦を扱う保護局の幹部計6人が実質的な起案書である「死刑執行について」と題された文書に押印する「矯正・保護局ルート」だ。

2ルートの決裁を経て法相名の執行命令書が作成されると、その日のうちに死刑執行を指揮する検察庁の長(高検検事長など)に届けられる。選ばれた担当検事が拘置所長宛てに「執行指揮書」を作成し、拘置所で執行が行われる。執行は法相の命令から5日以内と定められている。〉

▼上川法相は7月3日に署名し、7月6日に執行された。当事者の上川法相には、マスメディアから「なぜ今の時期なのか?」「対象はどうやって選んだのか?」「執行されなかった6人の精神的な不安をどう考えるのか?」などの質問がとんだ。いずれも単純だがいい質問だ。上川法相は〈前例のない執行を決断した経過や今後の執行については固く口を閉ざした。〉

「改元があるから集団処刑に至った」経緯は、すでに紹介したとおり、こうした表舞台ではなく、匿名の証言にもとづく各紙の報道で明らかになった。

▼毎日新聞記事のとなりには、「死刑執行までの手続きの流れ」というわかりやすい表が載っていた。

1)確定判決を出した裁判所に対応する検察庁の長(検事正や検事長)が法相に執行を求める上申書を提出

2)法務省刑事局総務課が「死刑執行について」と題する文書を起案し、同省矯正局と保護局の幹部6人が押印

3)「死刑事件審査結果(執行相当)」に法相、副法相が署名し、事務次官、官房長、秘書課長、刑事局長、刑事局総務課長が押印

4)法相が検察庁の長に執行命令書を出し、検察庁の長は受領書を送付

5)検察庁の担当検事が口所長に執行を指揮

6)執行(法相の執行命令から5日以内)

7)検察庁の長が法相に「死刑執行報告書」を提出

▼これらの記事を読むと、法務省の刑事局長や、刑事局総務課長経験者のインタビューが読みたくなる。

▼そもそも、情報公開請求や、関係者らの話を「総合」しないと、上記の記事は書けなかったわけだ。

国家は、国民の命を絶つ手続きを、国民にオープンにしていないことを、あらためて知った。(つづく)

(2019年4月24日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?