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「西日本新聞」の「移民」論に学ぶ(2)

▼前号の続き。西日本新聞が手がけた「移民」問題の連載について、その経緯を報告したものである。福岡で、ネパール人が、夜中にコンビニの工場で冷やしうどんをつくり、昼にその冷やしうどんをコンビニで売っている、という話だった。

▼その後は、「現代の奴隷労働」といわれるベトナム人労働の現状が報じられている。適宜改行。

〈母国で実習制度に応募したときは、とび職と聞いていたが、実際はシートで養生された部屋で、壊した天井を袋に詰める仕事ばかり。

「日本人はマスク着ける。僕、着けない。何で?」。袋の文字をパソコンで調べると、有害なアスベストだった。

それでも帰国できないのは、来日までの準備金として150万円の借金をしたから、と彼は嘆いた。連載第4部のタイトルは「働けど実習生」。

 目を凝らさなければ見えない「移民時代」の実情が、取材で浮き彫りになっていった。〉

▼日本で暮らすベトナム人の生活を救うために戦う、岡部文吾氏について、以前紹介した。

彼らの多くは、日本に来るまでに、すでに借金漬けにされている。

同じ「構造」、同じ「問題」である。

▼坂本氏は、こうした苦しみを生み出している日本の国策を、正確に表現しようとする。

〈留学30万人計画も実習制度も、政府の建前は先進国日本による国際貢献だ。だが、人口減と少子高齢化で人手不足が深刻化する日本社会を支えるため、「発展途上国の安価な労働力で穴埋めしたい」という本音が透けて見える。

建前と本音のひずみが、留学生の不法就労や実習生の過酷労働の温床となっている。移民がいるのにいないふりをする「移民ネグレクト」こそが日本の国策ではないのか。

▼あまり知られていないのは、こうした日本の国策が、欧米の移民排斥のお手本になっている、という現実だ。

〈留学生や実習生の名の下に安価な労働力を受け入れ、社会保障や教育のコストを生まないよう数年で帰国させる。そんな日本の対応を「理想的」と評価しているのが、欧米の移民排斥主義者なのだという。〉

▼ここで紹介しようと思った理由は、以下の箇所に拠る。西日本新聞は、移民問題に対応するために、「やさしい西日本新聞」という新企画を始めた。

〈西日本新聞は日本語が苦手な人にも伝わりやすい「やさしい日本語」でのニュース発信「やさしい西日本新聞」をウェブサイトで始めた。新聞業界では初の取り組みだ。〉

▼西日本新聞の取り組みは、たくさんのメディアが取り組むに値する問題だと筆者は思った。

(2019年6月18日)

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