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「藤井聡太氏が現役最強棋士である」ことがよくわかるデータの件

▼将棋の王位戦の番勝負が始まった。初戦は藤井聡太氏が勝った。おそらくこれから、あの「29連勝」を超える藤井聡太フィーバーが訪れるだろう。東京新聞の記事から。

〈藤井七段が王位戦初勝利 疲労はねのけ、ギリギリの攻め貫く〉(2020年7月2日 18時04分)(樋口薫記者)

〈◆最強の盾破る/将棋の木村一基王位(47)に藤井聡太七段(17)が挑戦している第61期王位戦七番勝負(東京新聞主催)の第1局は2日、愛知県豊橋市の「ホテルアークリッシュ豊橋」で指し継がれ、午後5時37分、先手番の藤井が95手で勝ち、初の王位獲得に向けて好スタートを切った。〉

▼〈最強の盾破る〉は、いい見出しだ。

この対局の見どころを、将棋の専門用語をあまり使わずに簡単に書いておくと、藤井七段が39手目で「仕掛けた」、つまり攻撃を始めた。

対局は95手で勝負がつくのだが、この間、藤井七段は一切、自陣に手を入れず、攻めっぱなしだった。

つまり、一手も守りの手を指していないのだ。

▼だから、一見、圧倒的な結果に見えるのだが、木村王位は「千駄ヶ谷の受け師」と言われている地力を見せて、受けに受ける。一手間違えると藤井七段が負ける、という勝負だった。

〈藤井は長考の末、5三銀(61手目)から後手玉を追い詰めたが、「受け師」の異名を取る木村は3一金(74手目)と絶妙の受けで対抗。最終盤、藤井が寄せきるか、木村が受けきるか、ギリギリの局面が続いたが、藤井が1五歩(79手目)から細い攻めをつなぎ、最後は後手玉を即詰みに討ち取った。

副立会人の山崎隆之八段は「攻めを貫いた藤井七段が最強の盾を破った印象だ。木村王位の力強い受けも素晴らしく、見事な棋譜が残った」と話した。〉

▼この山崎八段を、筆者は個人的に応援している。彼が担当していたNHKの将棋講座について、また稿を改めよう。

▼藤井氏は「2日目の午後から、普段の対局以上の疲労を感じるところがあった」そうだ。初めての2日制の大舞台を乗り切った。

「木村王位の玉が薄い局面が続いたが、きわどくしのぐ手を指された。攻め方を間違えてしまった」「失敗したかなと思っていた」「最後は押し切ることができた」

ということで、これはぜひとも、棋聖戦と同じく、フルセットまで戦ってほしいものだ。

▼ここからが今号の本題。藤井聡太氏がすでに現役最強の棋士であることは、レーティングを見れば一目瞭然であることを、何度かメモしてきた。

▼その強さを、もう少し具体的にみておこう。

▼いま、将棋のタイトルは8つある。8つのタイトルを、4人で分け合っている。

・豊島将之 竜王・名人
・渡辺明 三冠(棋王・王将・棋聖)
・永瀬拓矢 二冠(叡王・王座)
・木村一基 王位

この4人だ。ちなみに各人が持っているタイトルの順番は、賞金の多い順になっている。たとえば豊島氏の場合は、竜王のほうが名人よりも賞金が多い。

▼今号で書いておきたかったのは、たった一つの事実で、それは何かというと、

このタイトル保持者4人のうち、

藤井聡太氏に勝ったことがあるのは、

なんと、豊島竜王名人だけ、なのである。

藤井氏がレーティングで最強ということがわかっていても、驚くべき事実だ。

とはいっても、対局数がまだまだ少ないのだが。

▼いちおう、メモしておこう。

豊島氏は、藤井氏に 4勝0敗

渡辺氏は、藤井氏に 0勝3敗

永瀬氏は、藤井氏に 0勝2敗

木村氏は、藤井氏に 0勝1敗

▼これで、藤井氏は羽生善治氏の同年代の時よりも強い、といわれる理由がわかろうというものだ。

棋聖戦で渡辺氏がこれから3連勝すれば、3勝3敗になるし、王位戦でフルセットで木村氏が防衛したら、4勝3敗になるわけだ。

▼もしも、藤井氏が今年から来年2021年にかけて、順位戦でB1に昇級し、来年から再来年2022年にかけて、A級に昇級したとすると、2023年の名人戦は、藤井氏が挑戦者になる可能性がある。

その時、豊島氏が名人であれば、それが名実ともに将棋界の頂上決戦になる。朝日新聞と毎日新聞が大特集を組むだろう。

▼竜王戦の場合は、再来年といわず、挑戦者になる可能性がある。こちらは読売新聞が大特集を組むだろう。

▼どちらにしても、その時、藤井氏が何冠になっているか。

じつは2023年の名人戦で藤井氏が挑戦者になった場合、すでに藤井氏が七冠になっている可能性すらあるのだ。

▼ということで、これからの数年間、藤井氏のニュースが一般紙の1面に載る回数が増えると思う。

(2020年7月2日)

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