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正午の祈り

奈良の東大寺では、毎日お昼12時にから、大仏殿で、新型コロナウイルスの早期終息と罹患された方々の早期快復、並びに感染により亡くなられた方々の追福菩提を祈る勤行が行われている。

この正午の祈りが宗派を超えて広がりつつあるそうで、昨日(2020年4月24日)、高野山真言宗金剛峯寺 添田隆昭執行長、金峯山寺 五條良知管領、カトリック芦屋教会主任司祭 川邨裕明神父、手向山八幡宮(東大寺の鎮守) 上司延禮宮司、圓照寺 萩原道秀門跡がご一緒に、東大寺大仏殿前参道で記者会見をしたそう。

ニコ生で中継された記者会見の様子はこちら

金峯山寺は奈良吉野の修験道の総本山。青い蔵王権現様で有名。
圓照寺は、生け花の山村御流のお寺。歴代の門跡は山村御流のお家元でもある。山村御流のお花は、圧倒的に簡素でそして初々しい。他の流派には、真似の出来ない作風で、奥ゆかしく、ひそやかで、そして清々しい。


聖武天皇の大仏造立の詔は、なかなかに感動的。

朕、薄徳を以て恭しく大位を承く。志兼済に存して勤めて人物を撫す。率土の浜、已に仁恕に霑(うるお)うと雖も、而も普天の下、未だ法恩に洽(あまね)からず。誠に三宝の威霊に頼り、乾坤相泰かに万代の福業を修めて動植咸(ことごと)く栄えんことを欲す。粤(ここ)に天平十五年歳は癸未に次(やど)る十月十五日を以て菩薩の大願を発して、盧舎那仏金銅像一躯を造り奉る。国銅を尽して象を鎔し、大山を削りて以て堂を構え、広く法界に及ぼして朕が知識となし、遂には同じく利益を蒙らしめ共に菩提を致さしめん。それ天下の富を有つ者は朕なり。天下の勢を有つ者も朕なり。此の富勢を以て此の尊像を造る。事や成り易く、心や至り難し。但恐らくは、徒に人を労すること有て能く聖を感ずることなく、或は誹訪を生じて罪辜に堕せんことを。是の故に知識に預る者は、懇ろに至誠を発して、各(おのおの)介(おおいなる)福を招き、宜く日毎に盧舎那仏を三拝すべし。自ら当に念を存し各(おのおの)盧舎那仏を造るべし。如し更に人の一枝の草、一把の土を以て像を助け造らんことを情に願う者有らば、恣にこれを聴せ。国郡等の司、此の事に因りて、百姓を侵擾して強に収斂せしむること莫れ。遐邇(かじ)に布告して、朕が意を知らしめよ。

実際のところ、この大仏造立によって、その後の国家の財政は逼迫して、民の暮らしは困難を究めた。
当時の国力からすれば、大仏造立は、身の丈をはるかに超えた挑戦だったのに違いない。しかしながら、聖武天皇は、国内だけでなく国際情勢も含めた複雑な時代背景からも、大仏造立を決断し、果敢に挑戦した。今風に言えば、政治決断だったわけで、その決断が今も私たちに祈りの力を知らしめてくれている。

祈りは時空を超えて届く。

聖武天皇の大仏造立に込めた願いは、現代までも引き継がれ、今回の「正午の祈り」へと繋がる。

私たちの祈りも未来に届き、誰かの希望になっていく。

今のための祈りは必ず未来の祈りにつながる。

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